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逆行物語 第二部~ランプレヒト~

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粛正



 ゲルラッハの監視により、計画に気付いた。ローゼマインの誘拐を企んでいると。しかし現段階では捉えるのは難しい。何故ならゲルラッハは表立っては動いていないからだ。
「今の処、捕らえるならゲルラッハとは違う人間になるな。ゲルラッハは罪に問えぬ。」
「ゲルラッハの私兵を受け取っているが、何に使うかは分からぬまま、渡したと言われたらそれまでだからな。」
「やはり罠を仕掛ける事が必要か。」
 アウブ、父上、フェルディナンド様が話し合っている。同席を許されているが、口を挟む余地が無い。
「罠か。つまり事件を起こさせてしまう、と言う事か?」
「そうだ。ゲルラッハには元々ヴェローニカ脱獄を企んだ疑いがある。事件を起こさせてしまえば、私兵の件で話を聞く事は出来る。上手く前回の事件を重ねられれば…。」
「何か良い手があるか?」
 アウブと父上が、フェルディナンド様を見つめる。
「宜しいですか?」
 突然、ヴィルフリート様が手を挙げられた。
「此方、ローゼマインが養女になった原因と重ねられませんか?」
 示されたのは私兵の情報。アーレンスバッハの者も多い、となっている。
「ゲルラッハの土地自身が証拠になるかと。」
「ヴィルフリート、其方、賢いではないか。その手で行こう。」
「ヴィルフリートがフェルディナンドみたいになってきている……。」
 ぞっとする笑みを浮かべるフェルディナンド様と、そうさせたヴィルフリート様。アウブは戦いていた。

 策は上々。ゲルラッハ自身が私兵は自分が与えた、元はビンデバルトの私兵だったと証言したのだ。
 ゲルラッハはローゼマイン誘拐未遂には関わっていないと言う為だったのだろうが、裏目に出た。
 ビンデバルトの私兵を一味とおいたのだ。直接ローゼマインを襲っていなくとも、一味である以上は犯罪者であり、ビンデバルトの起こした事件を知っていながら、一味を匿っていたゲルラッハは共犯だと見なした。
 それにより、今回の事件も無関係では無い処か、主犯扱いになり、そこでヴェローニカ脱獄計画も明らかになったと言う事で、ゲルラッハを捕らえたのだ。

 ヴェローニカ派閥の粛清が始まったが、対象になったのは大人だけだった。何の罪も犯していない子供まで、粛清するのは反対だ、魔力的にも困るのは分かっている、王族の真似をする事は無いと、ローゼマインが主張した為だ。
 アウブ達はそれに対して、難しい顔をした時、ヴィルフリート様が案を出した。
「契約魔術で行動を制限しては如何でしょう? 一旦は投獄し、契約魔術後に神殿で引き取って貰い、叔父上が後見になるのです。洗礼式前の子供も含めてです。本人の希望があり、魔力が充分であれば、父上の後見で洗礼式を行い、そうでなければ叔父上の後見のまま、青色を目指して貰います。
 それから念の為、ローゼマイン考案の魔力圧縮は基本教えない事にして、アウブに名を捧げる場合のみ、教えても構わない事にしましょう。」
「金銭的な問題はどうするのだ?」
「各家から没収した財産を遣いましょう。足りない分があれば、彼等を救う事を願ったローゼマインに丸投げします。」
「え、」
「あくまでアウブの意向は処刑、慈悲はローゼマインの意思、と言う事にしましょう。ただし、ローゼマインが金銭収集にどの様な手を使おうと、文句は言わない。時と場合によっては手を貸す者がいても良い、くらいに考えて置きましょう。」
 どの様な手を、と言う部分でローゼマインの目がキラリと光る。
「それから正式に処分を言い渡し、実行するには時間が掛かると思いますから、その間に、ライゼガングからヴェローニカ派閥の子供達を助ける嘆願書を出して貰いましょう。」
「ローゼマインに説得させろ、と言う事か。」
「このまま此方での話を発表しても、全ての不平不満はアウブである父上に向かいます。派閥がボロボロでは受け止めるには無理があります。
 それに例え倒れた体を無理矢理に推してでも、説得に廻る意思が無ければ、子供達にとっても、処刑した方が良いでしょう。犯罪者の子供達に対する差別問題が起こる事を考えれば。」
 ローゼマインが小さな拳を作るのが分かった。
「分かりました。私が矢面に立ちます。」
 こうして忙しい日々が始まった。

続く