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逆行物語 第二部~アナスタージウス~

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会談(1)



 現在、全領地でとんでもない噂が待っている。曰く、貴族院の伝説を作ったフェルディナンドは、異母兄、アウブ・エーレンフェストに懸想している、と。まさか、と言う想いともしや、と言う想いが交差している。
 それだけ物語“ユーゲライゼが袖を振る”は良く出来ていた。あくまで物語、としながらも現実と交差していて、随分と説得力があるとされていた。
「どうしたものか…。」
 ラオブルートの忠誠心に押される形で、その主張が馬鹿馬鹿しいと分かっていながらも、アーレンスバッハの申請にフェルディナンドを当て填めた。
 領主候補生を外に出したくない領地は“領主候補生を神殿に飼い殺し出来るエーレンフェスト”から、婿を出す事に賛成で、また、フェルディナンドの不遇に怒りを抱えるダンケルフェルガーが強く意見を出した事もある。
 だがこれが真実だ、と見せ付けるかの様な物語は、賛成意見を出した上位領地に、大きな貸しだ、と意見されたように思う。
 何せ物語にもある様に、神殿に居ながら内政から魔獣征伐まで行っていたのなら、アウブ・エーレンフェストはかなりフェルディナンドを必要としていた筈だ。
 実際、物語では“幸せになってくれるのは賛成だが、領地を出られるのは厳しい”と、シルヴェスターが口にした、と言う場面がある。それでも“幸せになれ”、と言ったシルヴェスターに、フェルナンドが想いを告げる訳だ。
 エーレンフェストから大きな戦力を奪い、フェルディナンドの心を踏みにじった。エーレンフェストにもフェルディナンドにも、何1つ利がない。
 これではエーレンフェストに社交が出来ていない等、言えぬ状態である。何より、ダンケルフェルガーが五月蝿い。
「フェルディナンド様申し訳ございませぬ~!!!!」
 真実であると決まった訳ではなかろうに!! …だが同じ神殿に居て、フェルディナンドを理解しているローゼマインが書いたと言う事が偽りと言い難くしている事は確かだ。
 そもそも幾ら婚約が気に入らないとしても、エーレンフェストに戻せと言う主張だったとしても、この様な話を書かれたら、偽りであれ、真実であれ、私の立場がアウブ・エーレンフェストであれ、フェルディナンドであれ……、怒るぞ、絶対に。
 それもあって偽りとは言い切れぬのだ。
 しかも当の婚約者であるディートリンデは“フェルディナンドをエーレンフェストに戻し隊”とやらを作って、活動しているのだ。頭が痛い事、この上ない。
 真実かどうか等、アウブ・エーレンフェストやフェルディナンドに聞いた処で、否と言うに決まっている。そう答えるしか無いだろう。
 となればローゼマインを呼ぶしかない。そう思ったのだが…。
「ヴィルフリート、何故、其方までいるのだ?」 
「エーヴィリーベがゲドゥルリーヒ一筋である事は存じておりますが、それでも我が水の女神を1人、黙って見送る事は出来ません。」