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逆行物語 第二部~アナスタージウス~

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会談(2)



 少々、繊細な話故、私はローゼマインと2人だけで話す積もりだったのだが…、致し方無い。ヴィルフリートの気持ちも分かる。ローゼマインを溺愛している、と噂だしな。
「この本の事だ、ローゼマイン、何処までが真実だ?」
「それは、」
 答えようとしたローゼマインを手で制したのはヴィルフリートだった。
「アナスタージウス王子、何故、ローゼマインにお聞きになるのです?」
「何故? ローゼマインが書いたのだろう?」
 思わぬ質問に、私は眉を寄せた。
「いいえ? ローゼマインの提言により、元より作家名は本名を使わぬ様にしております。」
 !
「では誰が書いたのだ。」
「私です。私が、“ローゼマイン”と言う作家名で、物語を書きました。」
「なっ、其方が、だと!!?」
 ヴィルフリートの思わぬ告白に、ローゼマインを見詰めると、彼女は頷いた。

 ……一瞬でアウブ・エーレンフェストに同情した。

 「其方はまともだと思っていたのに…。父親に悪いと思わぬのか?」
「まともと言う概念は実は人によって違ったりしますよね。私の中では父上の為にしているのです。
 ……それよりローゼマインを帰して宜しいですか? 妹は忙しいのです。」
 まあ、ヴィルフリートが主犯と言うならば、今回は構わぬか。私は了承の意を返した。
「…それで、其方は何を考えて、この様な物語を書いたのだ。アウブ・エーレンフェストやフェルディナンドは知っているのか?」
「そんな訳無いでしょう。知っていたらこんな風にばら蒔ける訳がありません。…まあ、時間の問題でしょうが。」
 その時の2人の反応を考える。やはり怒るだろうな。
「それで…、物語を書いた理由ですか? エーレンフェストの為ですよ。」
「どう言う意味だ?」
 ヴィルフリートの声に引き戻され、私は尋ねる。
「エーレンフェストは利も無いが、損もない。叔父上個人なら利がある。自分達は損はしない。
 こんな風に考えられるのは困ります。エーレンフェストと言うゲドゥルリーヒから、ライデンシャフト兼エーヴィリーベを奪ったのです。それを理解して頂きたい。
 勝手な思い込みで決め付けられて、大事なモノを奪われたのに、黙っていては、アウブ・エーレンフェストへの悪評によって、フリュートレーネ兼シュツェーリアまで手を出されてしまうかもしれませんからね。これ以上、自分達の常識で動くなと言う牽制ですよ。」
 …私はヴィルフリートの言葉に目を見開いた。
「フェルディナンドをエーレンフェストを返せ、と言う事では無いのか?」
「王命を覆して頂くなんて思ってませんよ。
 正直、ディートリンデ様の事は予想外です。てっきり、あんな変態と星を結べないとアーレンスバッハで騒ぎ立てるだけだと思ってましたし。」
 何気にキツイな。