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逆行物語 第二部~父親達~

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カルステッド視点~ローゼマインの教育~



 マインがローゼマインとなり、私の娘となってから、我が家は明るくなった。エルヴィーラはローゼマインを可愛がり、その期待にローゼマインはしっかりと答えた。
 洗礼式でヴィルフリート様と仲良く会話していた最中に、突然、意識を失い、その虚弱さを披露した。…どうやら本の話をして、興奮した事が原因だった様だ。
「ヴィルフリートが手加減無しに振り回す事が原因になるかと思ったが。」
 フェルディナンド、其方と言う男は…。倒れる事を計算していたと言う事実に、私は溜め息を吐いた。

 ヴィルフリート様は幼い頃のジルヴェスターにそっくりだと思っていたが、関わりが増えるとその様な思いは一切消えた。…寧ろフェルディナンドに似てないか? 

 ローゼマインを救う為に、ジルヴェスターは派閥を削り、足元はグラグラだ。それを狙う様に悪意が巡る。それはヴィルフリート様やローゼマインに向かう。
 それを乗り越える事で、少しずつ緩んだ地盤も固まる気配を見せる。だが、そうなると今度は別の問題も出てくる。
 ヴェローニカ派閥の粛清が終了した後、虚弱なローゼマインは酷く寝込んだ。…と、見せ掛けてユレーヴェに浸からせたのだが、まさか1年以上眠るとは思わなかった。
 その間が大変だった。父上はローゼマインに会わせろと毎日フェルディナンドの元へオルドナンツを飛ばしていたし、ライゼガングの古老はジルヴェスターに詰め寄った。
 下手をすれば、エーレンフェストにヒビが入ったと思われたが、ローゼマインが駆けずり回り、自分達に出させた嘆願書のお蔭で救われたヴェローニカ派閥の子供達全員が、親の悪行調査に協力していく姿にライゼガングも思い止まった。止まらざる得なかった。
 何せエーレンフェストの礎を見付けた、と言うゲオルギーネの手紙を見付けたのだ。力尽くで来る可能性も考えられ、防衛を取る事が必要だった。力を合わせた結果、派閥の溝がなくなった。
 また、ローゼマインが眠っている間、エルヴィーラが印刷産業をアーレンスバッハから遠い地域には広めると、シャルロッテ様が神殿業務を代わると良い、そのどちらにもヴィルフリート様が関わられ、随分頑張っていた。
 ローゼマインが目覚めてからも、その活動は続けられた。3人の結束も固まり、側近同士で情報のやり取りも当たり前の様に行われる様になり、やがてメルヒオール様達も巻き込んで行ったのだ。

 ローゼマインが貴族院に行くと、初っぱなから問題が起こった。ヴィルフリート様からの急な報告で、ローゼマインが王族に喧嘩を売った事が分かった。ヴィルフリート様がグーテンベルクの人間関係に例えた説教をしたらしい。

 “叔父上の教育方針は、研究に偏って組まれている気がします。社交については教えられないとして、別の教育者を至急立てて下さい。正直な処、講義終了直後に、領地に帰したいくらいです。”

 こんな結びで終わった木札だったが、フェルディナンドが出来ないと認めたくなかったのと(本人は勉学を優先したらしいが、どう考えても可笑しかった事を後で知った)、図書室に行けぬ事を納得する筈が無いとして、結局、見送られた。……様々な問題が起こった後で後悔したが。
 少しでも問題行動を減らす為、学生全員を巻き込ませて貰ったがそれでも無理だったとヴィルフリート様より責められ、保護者3人連名で学生達に詫び状を書く羽目にもなった。
 ローゼマインの社交教育の時間を取る為、神殿業務はシャルロッテ様、印刷関係はエルヴィーラにも任せる事にした。下町の家族と逢いたければ、頑張れと言うしかなかった。