逆行物語 第二部～父親達～
ジルヴェスター視点～ヴィルフリートの所業～
ヴィルフリートとローゼマインは仲が良く見える。貴族院に行く前からそうだったが、ヒルシュールからの報告書もその様な印象を受けた。
頭が痛く様なローゼマインに関する報告書では、ほぼ必ずヴィルフリートが助け、叱り、導いて行く様子も一緒だった。
…頑張れ、ヴィルフリート。ローゼマインの手綱をしっかり捕るのだ。
「ふむ、派閥を考えても、ヴィルフリートがローゼマインを娶る事が望ましい。この状態は非常に良いな。」
フェルディナンドがこう言ったのは、下町の家族に逢えないでいるローゼマインの不安定さをヴィルフリートが助けていたからだろう。
……口には出して来ないが、ローゼマインが平民である事、分かっているやも知れぬな。
まあ、そんな訳で2人の婚約を整えるには、とても良い傾向だった。
「ヴィルフリート兄様と婚約ですか? そうですね、私にとっても望ましい政略婚ですね。とっても頼りになります。」
「そうか、では其方の為に図書館を贈れる男になろう。そこで司書を遣りながら、出来る範囲で交渉事をすると良い。」
「兄様大好きです!!」
「だからブリュンヒルデも欲しい。一般的な社交の為に。勿論、彼女が良いと言えばだが。」
「無理強いしないのなら、構いませんよ。」
「「「ちょっと待て!!」」」
「待ちませんよ。私にこそ、父上にとっての叔父上が必要です。」
「それだと私がジルヴェスターの第二夫人ではないか。」
…そんなこんな言いながら決まった2人の婚約だった。さらりと流して決まった婚約だった。
…何故だ!!? 何故私はここでヴィルフリートと話していなかったのだっ!!? 誰だ!!? 話していたとしても無駄だと言ったのは!! ヴィルフリートの方が有能なのは否定しないが、どうあっても変えられないと言うのか!?
…ふんだっ、ヴィルフリートのバカ、アホ……、大人気ない? 知るものか…。
「存外、アウブは御器用な様で…。」
「フロレンツィア様お一筋と聞いておりましたが、いやはや…、」
何か物言いたげな言葉に、何とも表現出来ない視線。フェルディナンドが私の何の相談も無し(不甲斐なくて悪かったな!)に、暗殺の危険がある敵領地アーレンスバッハに婿に行くと決めてしまい、そのまま婚約期間であるに関わらず、奪われてしまった。…納得行く訳もない。私も、フロレンツィアも、カルステッドも、エルヴィーラも、何より、誰よりローゼマインが納得行かなかった。――そう思っていた。
それが間違いだったと気付かされた時には、既にその話は出回り切っていた……。
「は? フェルディナンドが、私に、懸想している?? 何だソレ。」
「エルヴィーラがとうとう白状しました。」
「スマン、ジルヴェスター。どうやらかなり秘密裏に回されたらしく…。」
“ユーゲライゼが袖を振る”
見た事の無い本。監修はエルヴィーラらしい。が、それよりも…。
「作家、ローゼマイン!?」
「それは名前だけだそうです。…書いたのはヴィルフリートだとか。」
は?
「とにかく読んでみろ。多分、婚約の王命に意義を唱えるモノだ。」
!! まずいではないかっ!!!! そこまで怒っていたのか、ヴィルフリート…。しかし、それは………………………………………………。
「何だこれは!!!!????」
全部、吹っ飛んだ。
「それ、全領地に広まってると思うぞ。」
「現在、フェルディナンド様をエーレンフェストに戻し隊とやらが出来て活動しているとか。会長がディートリンデ様だそうです。」
「婚約者本人では無いか!!!!!!」
知った時には遅かった。更にその直後、アーレンスバッハ、中央騎士団の一部、ランツェナーヴェが手を組んで、王に弓を引いている事が判明し、その解決にエーレンフェストはがっつり捲き込まれた。
フェルディナンドの王命はアーレンスバッハを内から探る為の見せ掛けの王命であるとされ、子供達はそれを知らなかった、と言う筋書きになった。
何も知らず、利用されたディートリンデ様のお蔭で、フェルディナンドとの連絡も取り合えた。
……大変だったが、良かった。アーレンスバッハを潰し、吸収するのは。ディートリンデ様やレティーツィア様を救えたのは……。
「フェルディナンドの心は、事情を知らないローゼマインによって知らされた。褒美に望む者と星を結ぶと良い。」
待て!!!! 何故、弟を嫁に、いや、実質嫁は私か、とにかく何でこうなった!!?
作品名：逆行物語 第二部～父親達～ 作家名：rakq72747