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逆行物語 第二部~父親達~

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ギュンター視点~娘の魔石~



 マインが下町にこっそり帰って来る。時折はヴィルフリート様も連れて。星を結んでも相変わらず、兄様呼びはホッとするが、気にもなる。
「フェルディナンド様が、マインの体調を気遣って、ちゃんと大人の体になる20才くらいまでは、待ちなさいって言ってるそうよ。」
「な、何の事だっ、エーファ!?」
 動揺して叫ぶと、気にしてるのはバレバレよ、と言う。
「何にしても、フェルディナンド様が相変わらず、マインを気遣ってくれてるみたいで安心したわ。」
 悔しいが頷く。
「フェルディナンド様か…。そういやあの人、結婚しねえのか? また神官になってねえよな。」
 ルッツとトゥーリが家から出て、近くで暮らしているから、今はカミルとエーファの3人暮らしだ。
「父さん、知らねえの? あの人、前の領主様と結婚したじゃん。」
「は?」
「前って言うとジルヴェスター様でしょ? 男の人同士で出来る訳無いじゃない。」
 カミルのあり得ない話に、エーファと首を傾げる。
「何だよ、遅れてるなあ。これに全部書いてるんだよ。」

 “ユーゲライゼが袖を振る”

 出された本はローゼマインが作家になっている。
「マインが本を書いたのかっ!!?」
 父さん、聞いてないぞっ!!
「これ、前・後編になっててさ。前編が架空の領地、レーレンフェストの領主候補生?、の兄弟の恋物語なんだけどさ。フェルディナンド様のジルヴェスター様への恋心を書いてたんだ。」
「…あの人、そんな趣味があったのか。」
 お貴族様は理解出来ん。
「でさ、前編はしたくもない婚約の為に領地を出るってとこで終わったんだけど、それの後編が出たのがちょっと前でさ。」
 前編の話が、フェルディナンド様の話だと公言されたと言う。それに依ると、前編を読んだ様々な貴族様が味方となり、とうとう王様まで出て来て、特別に2人の婚姻を許したとか。……パラパラと捲る。“カーオサイファに魅入られた日々に、ユーゲライゼが袖を振る。”……ダメだ、意味分からん。
「あ、これはヴィルフリート様に聞いたんだけど、立場は前領主様の第二夫人になるんだけど、実質、妻は前領主様の方だって。」
 ふと、思った。これ、拷問じゃ無いかと。マイン、お前、とんでもない事してないか? だって領主様がまだお若いのに、成人したばかりのヴィルフリート様に領主を譲られたのって…。
「周りが凄そうね……。」
 そうだな。

 ………………………………。

 マインが死んだ。突然に。平民関係者として、又聞きの又聞き。ローゼマイン様の死は、俺達には遠く、実感が沸かなかった。涙も出なかった。その時は。
 なし崩し的に捲き込まれたルッツ一家(親戚含む)と共に、俺達はベンノに集められた。そこには御忍びで来た、ジルヴェスター様、カルステッド様、フェルディナンド様、ヴィルフリート様がいた。
「父上。」
 前に出たヴィルフリート様が拳大程の石を差し出してきた。
「…魔力が高い者は、高みに、亡くなると体に魔石を残します。…これは、マインの魔石です。」
 …これが、マイン? この石が、遺体? 
「本来なら領主一族として、安置されるべきだが、ローゼマインが尤も望む場所に、と押し切った。
 ギュンター、其方の家族から奪った娘を今、返す。」
「今宵、あの娘を偲ぶ友にこれを。」
 ジルヴェスター様に続いて、カルステッド様から渡された酒は平民なら口にすることも珍しい高級なモノだって言うには、俺にも分かった。
「ギュンター、マインはエーレンフェストにとって、水の女神だった。…誇りだった…。私にとっても。
 …こんなに早くに、高みに昇らせてすまない。」
 フェルディナンド様の沈痛な声に、漸く実感が湧いてきた。視界が歪む。体が震えて、止まらない。マイン、マイン、マイン……!!!!
「では、私達はこれで。」
 遠い声がする。
「待てっ、お前は俺の息子だろうが。…残れ。」
 不遜だろうと構うモノか。一番マインの側に居たのはお前だろう、ヴィルフリート。