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逆行物語 第三部~ローゼマイン~

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フェルネスティーネ



 浦島太郎の私は、フェルディナンド様曰く、必要最低限の事だけを詰め込まれて、貴族院へ行く。その際、口を酸っぱくして言われた事がある。
「今年の1年には、次期ツェントが入られる。お名前はフェルネスティーネ、と申される。
 彼女は中央神殿の青色神官と青色巫女の間に生まれた、貴族社会では忌避される存在だった。しかし現・ツェントと中央神殿長に神託が下り、ツェントの養女になった。君が眠った直後に、だ。
 神殿で彼女は孤児院長として、孤児に音楽を教えていたと言う。新しい音楽で、新しい舞踊を作り、その孤児達の舞台で、運営費を得ていたらしい。
 中央神殿のキュントズィールと呼ばれ、貴族院では本人達が居ないにも関わらず、中央神殿のキュントズィールとエーレンフェストの聖女、どちらが優れているかと、比較する者も多いと聞く。良くも悪くも、君に関わろうとする者も出るだろう。
 …くれぐれも余計な事をせぬように。特にフェルネスティーネ様自身が関わろうとしないとは言えぬ故、王族とは極力離れる様に。」
「私、面倒な事等、起こしませんよ。本があれば、大人しくしております。……ひひゃひへふ(痛いです)。」
 フェルディナンド様の理不尽な、長い説教はまだまだ終らなかった。

 その王族に挨拶をする。
「フェルネスティーネ姫、命の神、エーヴィリーベの――――――――。」
 フェルネスティーネ姫は薄い水色のサラサラヘアー。リンシャンを使ったらもっと綺麗になるだろう。瞳も綺麗な金色で、柔らかな印象を残す。だけど…、何だろ、この既視感。
「アナスタージウス王子――――――。」
 軽く沸き上がる疑問に蓋をして、アナスタージウス王子にも、挨拶をしたら、何か嫌味を言われたので、軽く交わしていく。
「お兄様、お義姉様に言い付けますわよ?」
 嫌みの応酬に、フェルネスティーネ姫が口を出し、アナスタージウス王子が口を閉ざす。

 「ふふふ…。大企業に就職したばかりの新卒なローゼマインが、社長とバトルするドラマがあれば、面白そうね。」

 え!

 「フェルネスティーネ、訳の分からぬ事を言うな。」
「あら、つい夢の言葉を使ってしまいましたわ。申し訳ありません、お兄様、ローゼマイン。」

 この人、転生者だ!!!!

 思わぬ仲間を発見して、私はフェルネスティーネ姫を見詰めてしまった。

 一応、知らせた方が良いよねと、私は夢と言う暗号(と言うには大袈裟だけど)で、フェルネスティーネ姫が転生者である事を記した手紙を書いていく。
 …それにしてもお話したいな…。許してくれるかな…。
 私は頬を抓るフェルディナンド様を敢えて思い出さない様にした。その罰だろうか…。
 私の図書館行きは、フェルディナンド様にとことん邪魔をされていた。その上、兄様まで邪魔立てに便乗してくる。私は情熱で壁を壊す事を決めた。