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逆行物語 第三部~ローゼマイン~

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神命と王命(1)



 神託はツェントと中央神殿長に下ったと言われているが、実際は当時の上位6位までのアウブにも下っていたらしい。
 内容が内容だった為、伏せられていたのだが、神の意思を取りに行って、土下座したままのフェルネスティーネ姫に声を掛けようとしても、何故か言葉が出ない、と言う摩訶不思議な報告を受けた王族とアウブ達が、他のアウブ達と、貴族院に通う者達に発表したのだと言う。
 そして、夜には確かに祝福が舞い降りた訳で。その為、私達は貴族院の寮で缶詰め状態である。
 緊急に各地のアウブ夫婦と領主会議に参加する様な重鎮達が集められているらしい。
 神の意思はシュタープにしたし(形も定まったし)、私は部屋で本を読んでいた。
 
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 「姫様!!」
 本を奪い取ったのはリヒャルダ。
「アウブより緊急召還が出されました。領地に全学生が帰る事になります。」
 怖いくらい、真剣な顔だ。それだけ重要な事が起こっているのが分かる。…リヒャルダのこんな固い顔、初めて見たよ。私は言われるままに行動した。

 ざわり。エーレンフェストの広間では騒々しさが満ちている。それは貴族院での話をする者と聞く者が生み出している、だけではない。
 いないのだ、養父様が。顔色の悪い養母様はいるのに。固い顔のフェルディナンド様はいるのに。
「静まる様に。」
 七色に光る瞳が、辺りを見渡す。一瞬ばかりだけだけど、威圧を受けて、静寂に満ちていく。何と言う力業。
 効率主義なだけでなく、養父様の方がカリスマがあると言う事だろう、多分。初めてフェルディナンド様より優れた養父様の一面を知った気がする。
「昨夜、新・ツェントが任命された。それもユルゲンシュミットを創った神によって。」
 神様!!? 
「アウブ達が集まった場に、ユルゲンシュミットの柱たる神、エアヴェルミーン様が現れになった。」
 フェルディナンド様がまるで、アウブの様に話していく。…違和感を感じてしまう。
「未成年のツェントの実質の後見と言う事になる。そして、その場でフェルネスティーネ様とエアヴェルミーン様が王命より重い神命を出された。」
 ゴクリ、と唾を呑み込む気配があちこちからする。
「神命は2つ。争いの芽を摘む事と神殿の復興。」
 フェルディナンド様がそこで目を伏せられた。いや、私と兄様を見た気がする。
「各々の領地に神命を遂すに当たって、必要な王命が出された。これよりはアウブ、若しくは領主候補生が神殿長を勤めろ、と言う王命が全領地に課せられる最低限の命令だ。
 その他は領地によって、必要な裁定があるだろうと、多くは自由裁定に任されるが、細かな裁定まで、命じられた領地もある。」
 誰もが気付く。ここからが本番だと。
「エーレンフェストに関係し、より重大な事をまず伝える。

 …ツェント・フェルネスティーネの王配に、ジルヴェスター・エーレンフェストが選ばれた。

 既にフロレンツィア様とは離縁が成立している。」