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逆行物語 第三部~ローゼマイン~

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神命と王命(2)



 何を言われたのか、解らなかった。
「この命令は、神命、“争いの芽を摘む事”と関係している。人間の都合で起こされた政争により、正しき神の教えが失われ、その為にユルゲンシュミットは崩壊の危機に瀕していた。
 神々は心を痛めており、先の政争に参加しなかった、つまり中立を保ったエーレンフェストの中、争いを嫌う性質の人間を、ツェント・フェルネスティーネに宛がうとされ、ジルヴェスター・エーレンフェストが選定された。
 その為、ジルヴェスター・エーレンフェストは既に領主にあらず、今、その座に任じられたのはこの私である。
 立場上、中継ぎになる私が次の権力争いの場を作る訳には行かぬと、フロレンツィア様を娶り直し、ジルヴェスター・エーレンフェストの子の父となる。」
 領主でない養父様はエーレンフェストの名を冠しない。それでもジルヴェスター・エーレンフェストと呼ぶのは、フェルディナンド様の抵抗だろう。受け入れたくは無かっただろう。養父様からアウブも、愛する妻も奪ってしまうのだから。
「そして…、神命、“神殿の復興”の為、エーレンフェストの次期アウブをローゼマインとし、争いを嫌う、ジルヴェスター・エーレンフェストの血を直系で遺す為、ヴィルフリートを配偶者と成す。」
 暗い声の宣言に、私は愕然とする。
「これらがエーレンフェストに下された命である。続いて……、」
 頭を殴られた様な衝撃に耐えながら、私は続きを聞く。まだ倒れる訳には行かない。
「アーレンスバッハが反乱の下準備をしていたらしい。その為、アウブ夫妻はその場で捕らえられ、処刑が決定している。アーレンスバッハ内で、協力者と見做される者を中央騎士団が捉えるらしい。
 アーレンスバッハは取り潰し、領地は境界線を引き直す。細かな事は決まっていないが、隣領地だ、エーレンフェストにも何らかの余波があると考えてくれ。」
 アーレンスバッハとの争いは斯くして終わりを告げた。思い付いた一文が、頭痛を益々酷くする。
「最後に中央だが、元は貴族院のみが中央領地であると言い、それ以外の領地を手離された。元・ツェントや王子夫妻がアウブを務める領地が出来るだろう。また貴族院の講義にも何らかの変動が出ると申された。学生達は苦しいだろうが、勉学に励む様に。」
 その声を最後に、私は意識を失った。