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逆行物語 第三部~フロレンツィア~

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変動と覚悟(4)



 フェルディナンド様の側近は、数が少ない為、基本、ジルヴェスターの側近達を引き継いでいましたが、今はおりません。エックハルトとユストクスだけです。此方としても好都合です。ジルヴェスターの元へ行くかも知れない人間には聞かせたくは無いのです。
「御理解頂けたかと思いますので、私、寝所にてお待ちしております。」
 側近の1人がユストクスに染薬を渡します。
…業と直接的に言いましたし、態度でも現しましたから、ユストクスは驚いた顔になり、フェルディナンド様の顔を確認しました。
「貴方は私にジルヴェスターを裏切れと仰るのですか。」
 怒りを隠さない程度には信用されている様ですね。
「裏切るも何も他領の人間ではありませんか。」
 この天変地異の変動に振り回された数日のお陰で見えて来ましたが、どうもフェルディナンド様にとって、エーレンフェストとはジルヴェスターそのものの様に感じている様です。
 領主一族は一番に領地の事を考えねばなりませんから、今までならば、問題は無かったのです。しかしこれからは許されません。
フェルディナンド様はジルヴェスターとエーレンフェストを切り離さなければなりません。乱暴ですが、一番良い方法でしょう。
 それにフェルディナンド様がエーレンフェストを棄てられるとしたら、それがローゼマインの為になるかと思いますので、先を考えるならば、ローゼマインとエーレンフェストを一緒に考えて貰いたいのです。だから私は言います。
「夫が信を置けぬゲドゥルリーヒに、何の力がありましょう。増してはその子供等、エーヴィリーベには邪魔ではありませんか。メスティオノーラを救う者が、老害であれば、エーレンフェストはどうなりますか?」
(意味:フェルディナンドに愛されない妻として認識されるなら、暴走したライゼガングがローゼマインの望まぬ形で後ろに立とうとするだろう。そうなればヴィルフリート達はどうなる?)
 フェルディナンド様の目が細くなります。フェルディナンド様は子供達を生かす道を撰んでいます。
 しかしライゼガングの事ですから、何れそれ以上を求めるでしょう。
 ローゼマインの配偶者にヴィルフリートではなく、メルヒオールを望むならまだ良い方です。高みに昇れば仕方無いだろうと、2人共、暗殺される事もありえます。何せお義母様の兄君を暗殺しておいて、裁かれもせず、今に至っている派閥ですから。…お義母様に同情等、決してしませんが。
「…言いたい事は分かった。先に戻っているんだ、フロレンツィア。」
 私達は今宵、冬を迎えました。

 エーレンフェストの裏切り者とその一族は殆ど処刑か、終身刑を言い渡されました。ツェントのゲオルギーネの一派を許すなとの御言葉があったからです。
 中にはローゼマインが可愛がっていた者もおりました。…恐らく、ローゼマインとフェルディナンドに距離が出てきたのはここからでしょう。今まで以上に神殿に籠る様になりました。
 もう神官長にはなれないフェルディナンドは、自分の代わりにハルトムートに任せておりました。しかし、それは一時期のみでございました。元々、ヴィルフリートに神官長を任じる気でしたが、医学を学ぶ事を決めた為、在学中は講義と自主的な勉学に集中させ、貴族院から滅多な事では、帰領させなかったのでございます。だからこそ、ハルトムートに一時、その座を渡したのです。しかし…。
「この一族を中央に。」
 支えさせていたジルヴェスターの元側近を1人、ジルヴェスターに帰す事を決められました。その側近の成人前の子がハルトムートだったのです。結局、神官長はユストクスが勤める事になりました。
 ……仕方ありません。ハルトムートはヴィルフリートを嫌っていましたから、色々画策していた事が分かったのです。
「崇拝者と言うのも困りますわね。」
 寝台の中、2人で会話します。
「エックハルトを躾出来なかった時に、あの手を飼い慣らせないと学んだ。」
 躾…。
「良い例えですね。」
「唯、救いだったのは、エックハルトがユストクスの様な能力を持っていなかった事だ。お陰で力で事足りる。」
 頭が悪い方が良かったのでしょう。
「その点で言えば、ハルトムートは頭が良すぎますからね。」
 証拠を残さなかったから、領地移動になったのです。これからはツェントに見張られるでしょうから、帰って来るのは不可能でしょう。
 取り合えず、これで少しは落ち着きますね……。

 ライゼガングの復活はありませんでした。中立を守っていた、エルヴィーラが纏めてくれた、私の一派が力を持って台頭しました。彼等がフェルディナンドの後ろ楯になります。
 ローゼマインにはライゼガングの血筋、と言う意識がありませんから、彼女がアウブになっても、何かが変わる訳では無いのです。次期アウブの今は尚更の事でした。
 ですが、ライゼガングを無視する事も出来ませんから、フェルディナンドはブリュンヒルデを第二夫人に、とお決めになられました。背後はともかく、ブリュンヒルデは好感を持てる相手ですから、この際、完全に此方に組み込んで行く事をエルヴィーラと決めました。
 漸く領内に落ち着きが見られた頃、ダンケルフェルガーより上級貴族のクラリッサと言う女性が嫁いで来ました。…フェルディナンドの第三夫人として。
 忘れもしません、あの領地対抗戦を。私の目の前で求婚の課題を求めた彼女を。
「私に嫁いでも第三夫人だ。それを周囲全てに納得させてみよ。」
 延々とローゼマインの事を誉めやかすクラリッサに、フェルディナンドはそう言いました。通常ならクラリッサは第一夫人となり、私やブリュンヒルデは格下げになるでしょう。要は断ったおつもりだったのです。ですが……。
 結局、クラリッサはそんな経緯からエーレンフェストへ嫁いで来たのです。
 
 ドレッファングーアの糸紡ぎにより、ローゼマインが貴族院を卒業する事になりました。本来、ヴィルフリートがエスコートするのですが、ヴィルフリートはまだ卒業しない為、フェルディナンドが親族として、エスコートしました。
 卒業後、ローゼマインは神殿に籠る、いえ、正式に神殿に住み始めました。アウブを継ぐのはまだ先になりますが、フェルディナンドは中継ぎと命じられておりますので、そう遠くはないでしょう。
 中央からローゼマインの卒業祝いとして、アーレンスバッハとベルケシュトックが譲渡されました。今まで中央が面倒を見ていた2つを統合され、曾て、歴史で習ったアイゼンライヒを想起します。
 その領地で新たに生まれていた産業を引き継ぐ事になります。…ツェントの有能さには驚かされますね。
 そして詳細は不明ですが、その影響でローゼマインはかなり忙しくしている様です。フェルディナンドはその補佐にクラリッサを着けています。この2人、冬籠り出来ているのでしょうか…。
 何にせよ、ドレッファングーアの糸紡ぎは更に進みます。気付けば、ヴィルフリートの卒業が間近になっておりました。

続く