逆行物語 第三部~ヴィルフリート~
変動(1)
混乱に次ぐ混乱に、気付けば私はローゼマインを抱えて、自室の隠し部屋に連れてきてしまっていた。何故なのか、自分でも良く分からない。
幸い、叔父上が殆どの側近を排した状態で、皆で私の隠し部屋に集まる様に、との指示を出したそうだったが…。
叔父上はツェントになられた、フェルネスティーネ様とお話がある、と言う事で、詳細は3日後になるが、今、予測出来る事として、エーレンフェストの上位入りを口にした。
その3日後。
「ヴィルフリートは貴族院で特殊講義で医学を学びなさい。ローゼマインを支える為には絶対に必要になる。卒業は3年遅れるだろう。
ローゼマインはツェントとジルヴェスターの星結びの儀式を執り行う。それからツェントは、君の専属に髪飾りを作って欲しいと依頼してきた。自らの分と、元・王族の女性陣に贈りたいと申されていた。
最後にシャルロッテ、メルヒオール。ローゼマインは性質的にアウブには向かぬ。加えて社交能力が弱く、それ以外の能力が足り過ぎているが故に、問題が起こり易い。
はっきり言うが、ローゼマインは魔力を礎に注ぐだけのお飾りアウブにした方が良い。領地の真なる礎が神殿にあるらしく、城にある礎は神殿にある礎に魔力を送っているそうだ。
よって、ローゼマインがアウブになった際には、神殿で好きな事を遣らせようと思う。ヴィルフリートは卒業後、神殿でローゼマインの行う事を助け、実際の執務はシャルロッテとメルヒオールに任せる。つまりヴィルフリートが調整役となる。
神殿には貴族が多く往き来する事になる。ローゼマインは平民に甘いが、貴族の中で泳ぐのを苦手としている。…ヴィルフリートはしっかり妻を監視する事になるだろう。」
…叔父上以上にローゼマインを操作する等、不可能な気がする…。
余りにも速すぎる状況変動に私はついていけていなかった。3日間の中でも、お祖母様の派閥で、叔母上に従った者達が次いで魔石に替わって行った事も含めて。
父上から叔父上が、アウブの座も母上も奪った形になってしまう事に対し、私は重みを抱けていなかったのだ。故に、私はソレを受け止められたのだろう、と後になって思うのだ。
作品名:逆行物語 第三部~ヴィルフリート~ 作家名:rakq72747