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逆行物語 第三部~ヴィルフリート~

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私の行く道



 「ヴィルフリート兄様は王命で仕方無く婚約者になった私より、フェルディナンド様の方が大事なんでしょう? まあ私はヴィルフリート兄様から次期アウブを奪ったから仕方ありませんよね。それに男女の機微は解りませんし。」
 それはなかろう、ローゼマイン。其方の為に、医学講義を学ぶのだぞ? その為に私は側仕えコースと文官コースと領主候補生コースの3つで、最優秀か準最優秀を取らねばならぬのだぞ? 未来の為に特別講義まで受けているのだぞ? 
 神殿に籠る其方と貴族院から戻れぬ私。忙しくも手紙を書いて、と言うのは確かに叔父上の指示だが、其方は返してさえもくれぬではないか。
 それでも無い時間を遣り繰りして、神殿に足を運んで見れば、メルヒオールや灰色神官、男の平民を自分の隠し部屋に入れているし、婚約者よりメルヒオール、貴族よりも平民、凄まじい価値観を隠そうともしない。
 嘗て無知だった故に、罪を犯した私や、今は亡き、お祖母様派閥の幼子達。一歩、間違えればローゼマインはその道を進んでしまう。教育について話し合うのもその為に。だが…、ここまで規格外ならば引っ張る足が長過ぎて、どうにも出来ぬのではないか? …ああ、そうか。この思考が許される者が、アウブ補佐までなのだな。アウブや第一夫人には無理なのだ。そう考えれば、父上はローゼマインも、叔父上も、私同様、甘やかしていたのではないだろうか。それも無意識に。
 しかし、どうすればローゼマインと距離を縮められるだろうか。本を何冊も、と言う事が出来るのは叔父上くらいだ。しかも本は劇薬にもなると言うし、それを交渉手段にするのは違うだろう。
 だからと言って、御守りを渡しても無意味だ。叔父上より劣っているからか、ローゼマインは私の物は身に付けて居らぬし…。それどころかハルトムートやメルヒオールに下げ渡している。まあ、女性に下げ渡されるよりはマシだが。
 ハルトムートに相談しても、相手にされぬしな…、とか思っていれば、ハルトムートが領地移動になった。ハルトムートの父が、中央に移動になった為だ。ローゼマインの機嫌が悪いな…。
 
 ん…? 

 しかしその後からは、リーベスクヒルフェに魅入られた様にローゼマインとの距離は縮まった。そうして大人になったのか、叔父上の気持ちも母上の考えも、少しは理解したらしい。
 だが、そのせいで貴族社会に反発を感じているらしい。しかしそれは、周囲の誰にもどうにもならぬ。この先はどう進むのだろうか…。

 気が付けば、私の卒業が近くなっていた。私とローゼマインの星結びはツェントが取り仕切るらしい。…大きなお腹で、と思わぬでも無い。
 因みに何故か、叔父上がまた酔っ払った。
「辛かったな、ジルヴェスター。男の尊厳も、大人の尊厳もボロボロではないか。くそっ、あの女…!!!」
 私は何も知らない。酔っ払いの戯言等、覚えておらぬ。身内の、それも父親のそんな話、聞きたくなかった等、思っておらぬ。叔父上が酔い潰れて寝たしな!!! なあ、ローゼマイン!!!

 ローゼ、マイン………? 



























 目を閉じて、今までの事を思い出す。卒業後より、約10年経った今日。叔父上はアウブを下りた。実現不可能になった王命に変わり、出された新たな王命により、

 本日から、

 私がアウブ・エーレンフェストだ。

続く