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逆行物語 第四部~アーレンスバッハ~

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ゲオルギーネ視点~野望~



 アーレンスバッハに嫁いで来た日より、本日まで私はエーレンフェストの事を忘れた事はございません。何時か必ず、アウブ・エーレンフェストの座を、それが私の野望でございました。
 物心付いた時より、アウブに相応しくあれ、と育てられました故、私は私が、私こそがアウブになるのだと努力を続けて参りました。
 妹が可愛くなかった訳ではありませんが、アウブばかりは譲れないと厳しく接して参りました。故にか、妹は私と同じ様に受けていた教育に対し、私はアウブにならないからと、領主候補生の淑女・嫁入り教育に変えて欲しいと願いました。
 やる気を見せない妹に苛立ちを感じましたが、怠惰を強制する時間も勿体無く、私は努力を続けました。
 私の後ろ楯の母上はライゼガングと敵対しておりました。ライゼガングは上級貴族も多く、母の味方は下級・中級が殆どでございました。
 故にこそ、領内一致団結に向けて動けば、派閥の溝を埋められると、父もそうですが、母も個人の感情よりも、立場を考えて動いておりました。
 しかしそんな母の努力を嘲笑い、陰で女腹と呼ぶ者が多いと知っておりました。派閥融和を考え、第二夫人を娶らぬ父に、常識を弁えぬ嫉妬深い第一夫人では大変と、これ妙がしに嫌味を伝える者達が多く、真、賎しいと言うのはあの者達なのだと、私は学びました。
 私は努力しました。男よりも遥かに優れなくてはならないと、母を嘲笑う者達が心から平伏す未来を思い浮かべ、邁進していたのでございます。
 性別より能力、そう認められる日を作ると決めて。

 「次期アウブをジルヴェスターに定める。」

 それは正に私を否定するモノでした。私の努力を知っていた筈の両親が、年の離れた弟がアウブだと決めたのです。許せませんでした。どうしても許せませんでした。魔力が私より多い弟が、憎くて溜まりませんでした。
 弟はアウブの重みを理解していません。勉強を嫌がり、逃げて、そして平気で私の元へ匿う様に宣うのです。
「姉上はアウブになる為、努力されたと聞きました。」
 感情を抑えながら、注意すれば、そんな言葉が返ってきました。アウブの決定に逆らう重みも知らず、私の為に勉学をサボるのだと言い訳する事が許せず、私の心はライゼンシャフトの季節が舞い降りた様に燃え滾り、それと反比例する様に、頭はエーヴィリーベの季節が降臨した様に冴え渡りました。
「そう、私の為なのですね。その言葉が真実だと、グラマラトゥーア…、神に誓えますか?」
「はい!」
「では今日の処はお帰りなさい。アウブにならずとも、勉学は無駄になりません。その代わり私が呼んだ時には何を置いても直ぐに駆け付けなさい。」
 私はジルヴェスターの背丈に合わせて屈みました。私の、初めての口付けを贈る為に。
 …私の側近は母からの忠言を元に名を奪っておりますので、他言するなと命じれば良いのです。序でにジルヴェスターを傷付ける命を下してしまいましょうか。その為に必要な準備も当然、彼等の仕事です。
 私を裏切ったお母様、お父様、貴方達にカーオサイファを見せて差上げましょう。

 ジルヴェスターを秘密裏に呼び寄せて見れば、先日と同じ様に側近を撒いて来ていました。
 私の側近は顔色を青くしていますが、気にする必要はありません。次期アウブではない私に、忠誠を誓う者等いないのですから。
 私はジルヴェスターの目を布で覆うと、両手を後ろで縛りました。私を信用を得る為と考えているのでしょう、驚いても反発はしていませんでした。
 私は目を向けました。名を捧げている彼等は、私に逆らえません。彼等はジルヴェスターに手を延ばしました。そして…、
「―――――――っ!!!!!!!!!!!!」
 声にならない絶叫が聞こえる様です。名捧げの命令は体の反応まで操作出来るのですね。私はジルヴェスターを組み敷く男の望まぬ欲望を酷く冷静に見ていました。
「私にアウブの地位を渡すと? 貴方にそんな権限はありません。貴方は役立たずの怠け者です。只の子供より愚かです。そんな貴方が私に気遣うと? 身の程を知りなさい。」
 私は代わる代わる側近の男達を差し向けました。気を失えば、女達にヴァッシェンを掛けさせ、叩き起こします。異変を嗅ぎ付け、リヒャルダとカルステッドが駆け付けるまで。