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逆行物語 第四部~ハンネローレ~

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ローゼマイン



 私がローゼマインと出逢った瞬間の、あの感激は生涯、忘れる事は無いのでしょう。
 シュミルに似た愛らしいお姿に、私は姉妹になる事が嬉しくてたまりませんでした。お兄様は憎まれ口でしたけれど。
 そのローゼマインが規格外なのは知っているつもりで、全く解っていなかったと知ったのはローゼマインと平民との会合に参加させて貰った時でしょう。
 商人とのお話は圧巻の一言でございました。ローゼマインは洗礼式前まではマインの名前で活躍されていましたから、いきなり貴族、それも領主一族だったと知らされ、さぞや驚いたと思います。
 ローゼマインの独特な考え方はついていく者が殆どいませんでした。それを纏めていたフェルディナンド様は本当に有能な方だと思います。
 さて、私は姉妹仲の親交を深めると言う事で、フェルディナンド様の御屋敷に招かれたのですが…、
「ハンネローレ、私の兄、ジルです。」
「兄上、新しい妹ともゆっくり話していると良い。」
 …ローゼマインには兄でしょうが、私やフェルディナンド様にとっては平民として接する存在であって、兄として話をする相手ではありません。にも関わらず、ローゼマインは兄として紹介し、フェルディナンド様も兄として大切に接しておられたのです。
 洗礼式前まではこの家で住んでいたローゼマインは、表向いては関係を絶った事になる兄に、非常に甘えて育った様です。
 …寝室に大きな寝台があって、そこで一緒に眠っていたと聞かされた時には、本当に驚きました。しかも、フェルディナンド様が御一緒だなんて…。
 平民は家族一緒に眠るのも珍しくないのです、との事ですが。はあ…。
 様子を見ている限り、ジルが困っていても、ローゼマインとフェルディナンド様がお離しになられない様です。
 ジルは記憶を失っていて、心配している様ですが、逆に負担を掛けている気がします。過保護、と言う言葉が浮かびます。果たして良いのでしょうか…。

 …将来、3人で…、とかなられたらどうしましょう……。

 はっ、私は何を! 慌てて浮かんだ考えを振り払いました。…取り合えずジルとローゼマインとフェルディナンド様に関しては考えない様にしましょう。
 そう固く決意した筈なのに、私は常に揺るがされる事が多いのです。

 え? ローゼマインとヴィルフリート様が仲良くお話し出来る舞台作り? ヴィルフリート様も今年、貴族院に入学される? そ、そんなっ、私がその様な大役を…!
 普通の紹介とは訳が違います。かなり複雑な状況下のお話しなのです。私とローゼマインとヴィルフリート様が同じ入学年で良かっただなんて…、私は思えません! 生まれた時の間が悪かったなんて…!

 ドレッファングーアよ、私に加護を!!!