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逆行物語 裏五部~愛と死のロンド~

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ジェルヴァージオ視点~クインタの忠誠~



 アーレンスバッハとラオブルートの力を借りて、ツェントになった私は中央にユルゲンシュミットに移り住む者達の為、日夜働いた。
 住み慣れたランツェナーヴェで、レオンツィオの元へ集う者が多く、ユルゲンシュミットの協力者にも充分な礼が出来た。
 今は牢だが、丁重に扱っている前王族は、何れ何らかの役目を与える予定だ。トルークの影響下から脱しても、グルトリスハイトの無い治世に疲れ切った前・ツェントと、恋愛脳の第二王子には野心が無い。第一王子は次期ツェントと決定していたし、グルトリスハイトの無い治世しか知らぬ故、納得はしていない様だが、牢の中で力の差を見せれば折れる程度の気骨だろう。
 目下、私が気にしているのはクインタ…、エーレンフェストのフェルディナンドだ。私と同じアダルジーザの実。敵対しないならば、身内同然だと言える。
 そんなクインタはラオブルートの話に寄れば、随分と酷い扱いを受けているそうだ。集めた情報を読んでいると、怒りが込み上げる。
 …いっそ、エーレンフェストのアウブにさせるか? いや、田舎領地のアウブ等よりも、此方に呼び寄せた方が良いのか。…本人が何を望むかにも依るか。
 身内としてなら呼び寄せたいが、ツェントとしてならアウブにした方が良い。アーレンスバッハが煩いからな。
 厄介な事にゲオルギーネはエーレンフェストのアウブを望んでいる。力を貸した見返りに、と言い出している。戦いが終わってからとは、計算高い。
 前王族に支える大領地が幾つもあると言うのに、その監視の前で幾ら下位の中領地と言えど、侵略を許可する訳がない。戦いの前に言い出していたなら、切っていたろう。
 エーレンフェストが邪魔になる可能性があったなら、私の侵略に合わせて、エーレンフェストに侵攻させただろうが……。
 とにかくも身内として発言力で、エーレンフェストのアウブにしてしまえば、ゲオルギーネを黙らせる事になるのだが、果たして望むかどうか。出来るだけ希望に添ってやりたい。

 そう考えて、クインタと話す。だが…。
「私はフェルディナンドです。エーレンフェストの領主候補生であり、アウブの補佐です。それ以上の望みはありません。」
 思ってもいない言葉だった。
「待て、覚えていないのか、クインタ。アダルジーザの離宮で過ごした幼い頃を忘れてしまったのか? 私と其方とは血が近い。」
「私はフェルディナンドです。失礼ながら、ツェント、貴方とは何の関わりもありません。
 私の父は前アウブ・エーレンフェストで、兄は現アウブ・エーレンフェストです。身内はエーレンフェストのアウブ一族です。」
 私は眉を寄せた。
「何故、そこまでエーレンフェストに固執するのだ。」
「エーヴィリーベがゲドゥルリーヒを求める理由を問いますか?」
 それを聞いて、私はユルゲンシュミットにも来ない、レオンツィオにも従わない、と言った何人もの魔力保持者を思い出した。飼い潰される生き方に慣れ切って、思考を放棄、或いは間違う者達を。
(もしや、正常な判断が出来ぬのか?)
 魔術に頼らぬ術を研究しているランツェナーヴェだが、まだ礎の代わりになる物は出来ていない。
 レオンツィオはそれを作り出し、何れはユルゲンシュミットには頼らぬ治世を築くつもりでいる。しかし、現段階ではまだ魔石が必要なのだ。
 だから魔力保持者の扱いが手入れを丁重に扱う道具に対するモノで、不満を感じて当然なのだが、如何せん、何故かそれが当然、自分達さえ我慢すれば…、と言う感覚に陥っている。まるで稀に居る肉体的、或いは精神的、若しくはその両方の暴力夫(家族付随もあり)の妻の様に。
(参ったな…。レオンツィオに頼んで心理治療士を派遣…、いや、駄目だろう、それは。)