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逆行物語 裏五部~愛と死のロンド~

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ジェルヴァージオ視点~クインタの懸想~



 その気のない人間を治療するにはそれなりの準備が必要だ。増してクインタは騎士で力付くがほぼ不可能だ。だからと言って、頼み込んでも承諾する筈もない。
 命令する事も考えたが、治療が必ず結果を出すとは言えず、それは果たして正しい事なのか。
 エーレンフェストの方がマシだ、と本人に思われては無意味だ。
 数秒間で思考がグルグルしたが、少しでも異常性に気付いて欲しかった為、私はこう口にした。

 「ジルヴェスター・エーレンフェストに懸想でもしているのか? いや、既に冬色の関係なのか?」

 と。

 目を見開くクインタに、私は畳み掛ける。
「ランツェナーヴェでは同性同士でも星を結ぶ場合がある。まあ、かなりの少数派だが。ユルゲンシュミットでは婚姻出来ぬのだろう? だがそう言う者が皆無、と言う訳ではあるまい?」
 否定の言葉を待っていたが、嘘では無い。だからもしかしたら、と言う可能性も少しは考えていた。只、その場合、相手は先代ではと思ったが(流石にそれを口にするのはどうかと思った、父より兄の方がマシだろうと)。
 だが、クインタは否定せず、何かを考える様な仕草になる。ややあって、困惑した様な表情で、
「基本、私は眠りが浅く、薬を使う事もあるのですが、使わない場合、必ずアウブの夢を見るのです。ツェントに申す事ではありませんが、恥ずかしながら…、その…、アウブがゲドゥルリーヒになっているのです。それはそう言う事なのでしょうか? 私はてっきり夏に冬の眷属神が彷徨っている(欲求不満、若しくは気の迷い)だけだとばかり…、」
 と言う。
「殆ど毎回、と言うならばバイシュマハートがシュラートラウムに接触している(淫夢=紛れもない願望と欲望)と見るべきではないか?」
 おい、無自覚か。それで無自覚だったのか。過去(現在はともかく)のアウブ・エーレンフェストは好意を寄せられる人物だったと言う事か。
「ジルヴェスター・エーレンフェストの…、聖杯から生じる姿(=生まれたままの姿、つまり素っ裸)を想像してみろ。」
 前屈みになってる……。取り敢えず空の魔石を渡してやるか。