逆行物語 裏二部~ジルヴェスター~
悲しみと後悔の行方
後悔が胸を締め付ける。ヴィルフリートはマインを大切にしていたが、それは領地の為で、愛していた訳ではない。溺愛していると見られていたが、その実は、マインを上位領地の責任の、見せ掛けの旗頭にする為だった。
不満を上手く避けるのに、元アウブの肩書きが役立つとフェルディナンドを言い包め、私共々使われたから良く解る。
マインが納得し、頼りになると見ていたから、特に何も思わなかったが、フェルディナンドはどう思っていたのか。
「済まぬ…。」
それしか言えない自分に嫌悪する。
パサリ、カツン。
髪が解けた。髪留めが床に落ちる。背中に回された腕の力が緩まり、今度はフェルディナンドから目を合わされる。魔力の暴走が消えたからこそ、悲しみに沈んだ瞳が、虚ろだとはっきりと解る。
その瞳が、近過ぎて、焦点が合わなくなる。
私は唇を奪われていた。
驚いた私は思わず仰け反るも、追われて、開いてしまっていた口に、舌と共に、加減無しで魔力が流される。
合わない魔力が反発を押さえ込み、余りの気分の悪さに視界が反転した。
気が付けば、床に押し倒され、下半身を剥かれ、貫かれていた。
身代わりにされたのは、何故か解らない。それでも、フェルディナンドの悲しみを受け止める方法が分からない。
恥ずかしいが、フロレンツィアとは愛情を重ねる為の繋がり。
フェルディナンドとは…、償いの為の繋がり。だから受け入れた。大丈夫、姉上に嘗てされた事とは違う。傷付ける為にされた事じゃない。
だから、大丈夫、だ。
日を重ねる毎にフェルディナンドとはどんどん魔力が近くなった。フロレンツィアも気付いていただろうが、ただ黙って私を支えてくれた。
…結果として、フェルディナンドとフロレンツィアも魔力が近くなったと思う。
癒しを掛けられているから、後遺症は何も残らぬが、腰の違和感が消えない。まあ、只の気のせいなのだが。
続く
作品名:逆行物語 裏二部~ジルヴェスター~ 作家名:rakq72747