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逆行物語 真一部~ローゼマイン~

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巻き戻る時間とエーレンフェストの過去



 空が、崩れた。

 そう表現するしかない。まるでパズル画が崩れる様に、バラバラと壊れていく。白い砂と金色の光が溢れ、周囲の景色が崩れていく。
【何…?】
 気が付けばヴィルフリート兄様達もいない。足下が白の砂に変わっている。窓もなく、空からは太陽の光が増すばかり。
【あっ!】
 黄と赤の貴色に輝く糸が縦横無尽に絡み合っていたのが解けていく光景が見える。そして。

 何事も無かった様に、私は執務室にいた。

 でも、何かが違う。まったく同じじゃない。第一に此処は夜。昼じゃない。第二に机に座っているのは兄様じゃない、別の誰かだ。
「今日はここまでにしよう。」
 兄様の位置にいる誰かがそう言った。
「畏まりました、アウブ。」
 側近らしき人達が動く。そのアウブは兄様じゃない。私が見た兄様は、既に養父様の年齢を遥かに追い越していたけど、この人は兄様よりまだ年上だと思う。
「明日から領主会議か…。アーレンスバッハは何の用なのだろうな。大領地からの話等、気が重い。下位で名ばかりの中領地に一体何の用事があるのやら。」
 何となく後を付いていくと、寝室で第一夫人と思われる人と話している。
「確かに。隣とは言え、格が違い過ぎて見当も……。」
 不思議そうに首を傾げる夫人。
 2人の会話を聞いていた私は、此処は過去なのだと気付く。夫人の顔がディートリンデに似ても似つかないから、先々代アウブ夫婦でもなく、もっと昔なのだと思う。先々々代だろうか、アレ?
【もしかして、ガブリエーレ様関連?】
 私は知らずに呟いていた。そして声は届かず、夫婦は横になったので、部屋を出た。生前と違い、疲れもしないし、眠りもしない私は、夜の空を見上げ、私にとってはつい先程の光景を思い浮かべる。
 神々は糸を解いたのだろうか、それとも解けてしまったのだろうか。
 良く分からないけれど、この先どうなるのだろうか。
 何故、時間が戻ったならば、私は此処にいるのだろうか…。
 分からないまま、夜が更けていき、朝がやってくる。
 幽霊になったからか、時間経過自体は苦痛にならない。
 そうして私は貴族院に向かうアウブ夫妻が、起き出してくるのをボンヤリと待った。