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逆行物語 真一部~ローゼマイン~

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カーオサイファの軌跡



 ヴェローニカ様がフェルディナンドの為にマントを用意している。フェルディナンドも養父様も知らぬ話だけど、彼女の愛情深さが少しだけ、蘇った。立て直しは簡単では無いだろうけど、もしかすれば、また元に戻れるのでは無いか、と希望が見えた。いや、先々代に対する完全な見限りがそうさせたのだから、元に戻ると言うのは違うのか。
 でも…、私の知るフェルディナンドはヴェローニカ様を憎んだままだったし、話に聞いただけだけど、ヴェローニカ様はフェルディナンドがアウブの座を狙っているって主張して、神殿に押し込んだ。毒を盛ったりしているのは、ここまででも見ているけど、私が知ってる限り、まだ続いていたし……。

 私の疑問の答えは、少しずつ明らかになっていく。確信に至ったのは養父様の星結びの日。
 フェルディナンドから溢れる感情は、紛れもなく、曾て私に向けられていたモノと同じで、それは間違いなく、養父様に向けられていた。
【!!】
 所謂、淫夢も見ていた。本人は思考を停止して、自分の気持ちに気付かない様にして、記憶の奥底に封じてしまっていたけど、明らかにヴェローニカに気付かれていた。

 ――ああ、これだ。これだったんだ、ヴェローニカがフェルディナンドに辛く当たったのは。

 確かに母親として警戒するだろう。増しては養父様のレイプ事件を考えれば、より必死になってしまうのも頷ける。
 それまでは寧ろ、養父様に恋を教えた養母様に感謝して、仲が良かったのに、フェルディナンドの気持ちに気付かない養母様は、養父様と同じくフェルディナンドの擁護に回ったものだから、急速に悪化していく。
 …養父様を支えるのは、ヴェローニカの派閥だ。フェルディナンドを切り捨てた方が家庭は平和だった筈だ。養母様がアーレンスバッハ出身じゃないと嫌味を言われる事もなく、ヴィルフリート兄様も奪われる事は無かったのだろう。
 フェルディナンドの命を守る為に、ヴィルフリート兄様を人質にしたのだ。孫に危害を加える事はしないと信じて。
 そうして、養父様は神殿にいるフェルディナンドに仕事を押し付けた。フェルディナンドが必要だと、態度で示し、その心を守ったのだ。もう、先々代が居ないから。代わりに先代の遺言や贈り物だと言って、フェルディナンドがエーレンフェストに必要だと、その行動で教えていたのだ。
 …後にそれが養父様の怠け癖となってしまったのは、後にフェルディナンドが仕事中毒になったのは、後に共依存になったのは、フェルディナンドが養父様の甘さに、怠惰に縋り付かなければ生きていけない事実があったからだ。
 フェルディナンドが養父様の足枷になっている現実から目を剃らしていただけで、心の底ではきっと気付いていたんだ。

 平民の洗礼式。ふと気付く。あれ? 私は相変わらず幽霊だけど、今、“マイン”はどうしてるの? 

続く