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逆行物語 真四部~下手の考え休むに似たり~

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麗乃=マイン~賭けの敗北?~



 「フェルディナンド様が私の着替えを手伝おうとしたけれど、結局、断念してハイデマリーに命じましたよね。あれと同じ理由で、ジルヴェスター様の着替えをユストクス達にさせているのです。」
 質問に返される答えの意味が直ぐには理解が出来なかったみたいだけど、“マイン”が続けるから黙って聞いていた。
 服の着脱は側仕えの仕事の1つだけど、あれは結構難しい。慣れない人間が直ぐに出来る事じゃない。
 なのにフェルディナンドは、自分で服の着脱を行う“マイン”に、世話される事に慣れさせる為と言って、その練習に付き合おうとした。
 当然、四苦八苦。物覚えが良いフェルディナンドだから、直ぐに出来る様になるとは思うけど、領主候補生が慣れるのは如何なものか。初めから完璧だったら、ユストクスも引いただろうけど、そうじゃなかったから、ハイデマリーに世話される事になってた(まあ子供と言えど、貴族が異性の着替えを介助するのはどうかと言う考えがあったので、側近の彼等にとってはホッとしていた)。
「特に今回のジルヴェスター様は意識がありませんから、余計に大変な訳です。なので最初から、ユストクスとラザファムに頼みました。手早く済ませたいですからね。そうでなければ、フェルディナンド様が着脱をしていたでしょう。“大好きな人を世話したい病”ですからね。
 なのでジルヴェスター様を絶対離さないでいれる位置に座るでしょう。そうなるとその席(助手席)では狭いでしょう? だからと言って、男性を座らせる気は無いでしょうし。ハイデマリーしか座れないのですよ。
 もっと言えば、私からも離れたくないのでしょうが、私は運転がありますからね。今は構ってあげられませんから、余計に寂しくて、ジルヴェスター様をお離しになられないでしょう。」
 間もなく、乗り込んだフェルディナンド様が一番広いスペースで、養父様を抱え込んで、座っているのを見て、ハイデマリーは零れそうなくらい、目を見開いていた。
 走り出すレッサー君に何故グリュンなのか、とか、この形が斬新だとか、ユストクスとエックハルト兄様とラザファムが色々話している。むう、レッサー君は可愛いのに。……あれ? 養父様の指輪、何処? 
 私の疑問が解決する前に、フェルディナンドが口を開いた。大切そうに養父様を抱き込んだまま。
「これからの事を説明する。」
 “マイン”以外が、フェルディナンドに注目する。ハイデマリーが若干、振り返りにくそうだったけど。シートベルトしなきゃいけないから仕方無い。
「だがその前に、ジルヴェスターをダンケルフェルガーに拐っていく事を黙っていた事を謝る。済まなかった。
 流石にジルヴェスターを巻き込むのは、事が大きい。その重みが醸し出され、疑われる事を恐れたのだ。」
 出奔だけでも事は大きいと思うけど。
「私は、幸せになりたいのだ。願いに目覚めてしまった。それにはマインを妻とし、ジルヴェスターを愛妾にせねばならない。肉体関係は無くても良いが、3人で共に生きたいのだ。」
 はああああああああっ!!!!???? 何を言ってるの!? そりゃユルゲン貴族はあの養父様でさえ、第二夫人を娶るくらい、複数の配偶者は当然だけどっ!! 女性がトップに立たなきゃ、妻は1人だけなんて有り得ないみたいだけどっ!!
 ……フェルディナンドの初恋が養父様だって知ってはいるけど…、って言うか実現したら、賭けは私の負けじゃない!? 今更ながら“マイン”を妻にするって言葉と賭けが結び付いた。

 いやあああああああああっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!