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逆行物語 第六部~貴族院の教師~

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ヒルシュール~再会~



 私がフェルディナンド様を弟子にした事が、ヴェローニカ様の逆鱗に触れ、命に関わる様な嫌がらせが始まりました。
 しかし、怪我の巧妙と言いますか、結果的により研究しやすい環境を整えられました。
 ですから、フェルディナンド様が気に病む必要はありません。寧ろ、優秀な弟子を持つ事が出来、非常に楽しかったのですから、手に入れたモノの方が価値があります。
 私の事は問題ありません。私は寧ろ、卒業後、神殿に追いやられたフェルディナンド様が気に掛かります。
 アウブとなったジルヴェスター様には期待していた分もありましたが、結局、あの方には何を成せる訳では無かったのでしょう。
 けれどある年、急にフェルディナンド様から手紙が届いたのです。内容は領主会議終了後、直ぐに会いたいと言うモノ…。

 領主会議に参加すると? 

 教師である私は、領主会議時に貴族院にはおりません。ですから終了後直ぐなのでしょうが、領地では冬の社交が始まる訳ですから、直後に会うと言うなら、会議に参加しなければ、不可能です。
 私はフェルディナンド様が今、どう言うお立場なのか、気になって参りました。

 そして。
「お久しぶりです。ヒルシュール先生。」
 私は本当に久方振りに優秀な弟子と再会致しました。
「フェルディナンド様…、そのご衣装は…。」
 私は目を見張りました。フェルディナンド様は神官の青色を纏っていたからでございます。
「還俗は致しましたが、青色の、神官長の業務に着いてます。エーレンフェストでは現在、次期アウブの、ジルヴェスターの嫡男が神殿長を勤め、白色を纏い、その妹が孤児院長を勤め、青色を纏っています。」
 思わぬお話に私は呆気に取られました。
「実務はフェルディナンド様が行っているのでしょうが…、」
 アウブ・エーレンフェストは自分の子を神殿に置いたのですか? 
 と、此所で漸く席を勧めていない事に気付きました。その後ろにいる、アウブ・エーレンフェストにも。
「失礼しました。」
「よい、久方振りであろう? 会話に入るのもどうかと思ってな。」
 漸く席に3人着いて、お茶で咽を潤します。
「ヒルシュール。」
 アウブ・エーレンフェストが私を見ます。
「済まなかった。母に命に関わる妨害を受け、未だに援助が届いていないと聞いた。何も気付かず、何も知らず、本当に申し訳無かった。これからはその様な事にはならぬ。」
 率直な性格は変わっていない様ですね。
「いけません、貴方はアウブなのですから、私に簡単に頭を下げないで下さいませ。」
 良し悪しでしょうが、私には好ましく思えます。
「身を削って、フェルディナンドを守り続け、今に続くまで不遇に耐えてくれた其方に、下げぬ頭等に価値はない。」
 少しの苦味が滲む微笑みで、仰られました。「それに、私の子が入学したら、世話を掛ける事になる。」
 私はそれで最初の会話を自然と浮かび上がらせます。
「お子様を神殿入りさせたと聞いておりますが…。」
「今、神殿研究を進めているのです。ジルヴェスターの子は、私の弟子です。かなり優秀なので、ヒルシュール先生もご興味を持たれるかと。」
 フェルディナンド様からこの様な自慢を聞くとは…。
「ご兄弟、相変わらず仲が宜しい様ですね。」
 私はエーレンフェストにいる、ジルヴェスター様のお子の入学が非常に楽しみになりました。