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逆行物語 第六部~貴族院の教師~

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ヒルシュール~フェルディナンド様の弟子~



 それから月日が流れ、とうとうヴィルフリート様とローゼマイン様が入学されました。
 お二人供、確かに優秀でしかも周囲を引っ張っていく力がございました。実技以外は一発合格なさる学生が何人もおりました。どの様な方法を取っているか解りません。しかし、その能力は疑い様がありません。
 そして実技と言えば…。
 魔力圧縮にて、フェルディナンド様から言われ、特別なモノを用意しましたが、2人の魔力圧縮を確認した処で壊れました…。規格外を超えてますわよ、これは…。
 失礼ですが、ジルヴェスター様の子とは思えない素養があって、フェルディナンド様がそれを開花させたからではないでしょうか。
 騎獣作成ではフラウレルムから聞きましたが、乗り込み型騎獣なるモノを作り、今までとは違い、騎獣服に着替えなくとも乗れる、幾分か荷も積めるモノで、その講義で流行りが出来たそうです。
 …尤も流行ったのはシュミル型であり、ローゼマイン様が「獅子です!! 可愛いでしょう!」と言い切った、摩訶不思議な形ではありませんが。
 ヴィルフリート様もお作りになる事が出来るそうですが、状況に応じて、作り変えるそうです。講義として作ったのは普通の獅子の騎獣でございました。
 普段使いする方の騎獣は…、後ほど見て、驚く事になります。

 「ヒルシュール先生、ヴィルフリートです。ローゼマインが図書館のシュミル型魔術具の主になってしまいました。至急、図書館まで御願いします。」
 三回繰り返す前に部屋を飛び出しました。その私の後ろを追いながら、繰り返すオルドナンツは目立ったでしょうが、構ってられません。
 あの、シュバルツとヴァイスの!! 動かなくなった魔術具の!! 主にローゼマイン様がっ!!!!
 私は優雅では無い姿で、図書館へ向かいます。
「ヒルシュール!! 魔石!! オルドナンツ!!」
 アナスタージウス王子らしき声も聞こえません。

 図書館には申し訳無さそうなローゼマイン様と深々と頭を下げるヴィルフリート様がおりました。
 …感激で祝福したら、主になった…。流石規格外です。
 私はシュバルツとヴァイスの検分をどうにか、と思っていると、アナスタージウス王子がローゼマイン様が主で構わないと仰いました。
 …どうやら警戒してる様ですね。長引かせるより、重要度の低い魔術具の主である事を認めた方が良いとお考えなのでしょう。
 まあ、その様な事は良いのです。
「ローゼマイン様、是非シュバルツとヴァイスの検分をさせて下さいませ!!」
「分かりました。けれどシュバルツとヴァイスは図書館の魔術具で、居なくなればソランジュ先生が困る事になります。…分解されると大事ですので、手を触れないと約束して頂く事、図書館から出さない事を許可して頂く事が条件です。」
 …私の性格を解っている様です。フェルディナンド様から聞いているのかも知れません。むむ、と交渉を考えていますと、ヴィルフリート様が声を掛けて来られました。
「ヒルシュール先生、条件を呑んで頂ければ、非常に珍しく、最高級の希少素材を近々手に出来る予定なのですが、そちらをお渡ししますよ。」
「…何ですって?」
 思わず反応しますと、ヴィルフリート様はにこやかに仰いました。
「シャタープ会得直後にはお渡し出来ます。」
 具体的に時期が分かるならば、嘘では無いでしょう。
「研究しがいがありますよ。」
「…解りましたわ。条件を呑みましょう。」
 少し残念ですが、彼等が用意する素材が気になります。この決断は間違いではありませんでした。ええ、ありませんでしたとも。…非常識なだけで。