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逆行物語 第六部~貴族院の教師~

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ルーフェン~ディッターの申し子~

 

 ヴィルフリート様はローゼマイン様と同様、乗り込み型騎獣(屋根部分にローゼマイン様とは違い、見事な獅子が誂えられている以外は随分前衛的であった)に魔獣を放り込むと、自身も運転席とやらに座った。
 そこでダンケルフェルガーの陣営は、エーレンフェストの騎士達と戦う者とは別に一部、ヴィルフリート様の騎獣を引っ張り出す者を決めた。
 ローゼマイン様と同じ作戦では、勝てぬぞ、エーレンフェストよ。
 
 …それ以前の問題か。

 全くバラバラな連携をローゼマイン様は策で乗り切っていたが、ヴィルフリート様は一向に指示を出さぬ。単にぶつかり合うだけなら、勝負は見えている。呆気ない程、簡単にエーレンフェストの陣営は崩れ、騎士達は倒れ伏した。
 しかし、ヴィルフリート様には何の動揺も見られぬ(遠目から視力強化での観察だが)。降参する様子も無い為、ヴィルフリート様の騎獣に魔術具を仕掛けた。光の網で引っ張り出そうとしたのだ。だが。
「なっ!!?」
「バカなっ!!!??」
 魔術具はヴィルフリート様の騎獣に触れた途端、壊れてしまったのだ。それはつまり、魔術具に込められた魔力よりも圧倒的に多く、騎獣に触れた場所を介して、ヴィルフリート様が魔力を叩き込んだと言う事だ。それも瞬時に。

 何と言う魔力量…。何と言う技量…。

 先程まで面倒と言う気持ちを隠さないヒルシュールでさえ、目を見開き、直ぐに顔付きが変わった。
「ヴィルフリート様に研究を手伝って貰いましょうか…。」
 ボソリと何か言ったが聞こえなかった。
 ヴィルフリート様が騎獣の中で、シュタープを出したのか分かる。何やら口許が動いた。
直ぐに緑の貴色の光が、莫大に倒れ伏したエーレンフェストの見習い達に降り注ぐ。
「何だっ!!!!?」
「敵が立ち上がった!!??」

 「さて。これで我々とダンケルフェルガーの騎士達との差が良く分かった筈だ。この差を埋めたローゼマインがどれだけ優れた策を出したかも。」

 唖然としながら立ち上がるエーレンフェストの見習い達に、拡声器越しのヴィルフリート様の声が響く。聞こえた内容に、ダンケルフェルガーの見習い達も、思わず聞き入る。
「訓練に身が入っていなかったと聞く。これを期に充分な反省をして欲しいが、今はディッターの最中であり、相手はツェントの剣である、それは後で良い。今はこの最良の機会を精一杯生かせ。目の前の、敵と言う名の師より盗め、その強さの秘訣を。我が魔力尽きぬ限り、幾度倒れても復活させよう。――行け!!」
 エーレンフェストの呆然とした様な顔付きが徐々に変わり、戦いに赴く戦士としての風貌を作り出す。

 ――そして、第2幕が始まりを告げた。

 ヴィルフリート様のお言葉に嘘は無かった。何度倒しても、エーレンフェストの見習いは甦る。当然、時間の経過と共に、我らダンケルフェルガーの魔力と体力が削られる。時間が経過する程、我らが不利になる。
 最初はヴィルフリート様の魔力が尽きるのを待つ気でいたが、回復薬を飲む事さえせず、大量の祝福で味方を癒し続け、疲労の気配すら無いのに気付く。
 より焦り、不利から敗北への道を短くしてしまった。宝を守る数人だけが、何とか戦っている。
「保った方か。」
 これは相手が悪い。ヴィルフリート様お1人に誰もが手を出せぬ。まだローゼマイン様の方が組み易かった。そう思い、呟いた時だった。
 
 ヴィルフリート様が我らダンケルフェルガーを祝福した。

 ――即ち、回復させた。

 「ダンケルフェルガーが体力切れを起こしただけだ。まだまだ其方等は敵わぬ。――さあ、もっと学べ!!」
 このディッターが終わった時、ヒルシュールが非常に憮然としていたが、私は生まれて初めての、長時間ディッターの見届けに、興奮が押さえられなかった。

 流石はフェルディナンド様の弟子!!!! ディッターの申し子の弟子は!!!! やはりディッターの申し子なのだっ!!!!
 ヴィルフリート様、ローゼマイン様、騎士コースでお待ちしております!!!!

続く