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逆行物語 第六部~貴族院の教師~

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ルーフェン~エーレンフェストの領主候補生~



 私が寮監を勤める故郷、ダンケルフェルガーは神聖なるディッターで負け知らずなツェントの剣である。政争が起きる、起きないに関係はない。
 しかし過去、ダンケルフェルガーは負け続けた事がある。取るに足らない、中領地とは名ばかりの下位領地・エーレンフェストに。

 エーレンフェストに在席している、天才、フェルディナンド様に。

 あの方のディッターの才覚、知略、実力…、全く下位領地には勿体無い人材であった。
 にも関わらず、エーレンフェストはフェルディナンド様を冷遇した。アウブの私生児、と言う理由で。
 その首謀者は第一夫人、ヴェローニカ様。

 全く嘆かわしい!! 

 フェルディナンド様はエーレンフェストには似合わぬ。ならばダンケルフェルガーに頂こうではないか。
 その様に奮起したが、結局は上手く行かなかった…。そして貴族院を卒業したフェルディナンド様は、間も無く神殿へ…。
 何とも悔しい想いをしたものである。

 そのフェルディナンド様が神官服で領主会議に参加されたそうだ。堂々とした佇まいで…。更に驚く事に婚約されると言う…。王の承諾を得た相手は、異母兄である、アウブ・エーレンフェストの娘だと言う。
 フェルディナンド様はご婚約者とその兄で、次期アウブ・エーレンフェストである嫡男を教育されていると聞く。
 やがて神殿育ちと平民育ちの領主候補生の噂が、貴族院へ流れた。

 貴族院に入学された、エーレンフェストの領主候補生である、ヴィルフリート様とローゼマイン様は非常に優秀であった。
 しかしまだ入学仕立ての時期、ディッターの腕は分からない。フェルディナンド様は如何なるご教育をされたか気になる。
 そんな時、ダンケルフェルガーがエーレンフェストに宝取りディッターを申し込んだと知らせが入り、私は現場へ向かった。
 どうやら図書館の魔術具の主の座を巡っての事らしい。妹想いであるからなあ。
 さて、練度を考えればエーレンフェストがダンケルフェルガーに敵う筈も無いが…。そう思いながらも、競技場に立つ、ローゼマイン様の姿に高揚するは、フェルディナンド様を思い出させるからであろう…。

 たった1人の策士が戦況をひっくり返す。

 一言で現すならば(勿体無いが)、そんな処であろう。まだまだフェルディナンド様には劣るが、入学仕立てと言う事を考えれば、充分、その素養があると言える。流石はフェルディナンド様の弟子…!!
 しかも勝者である己を奢る事もなく、ご自身達の練度を理解されていた。御立派なものである。
 しかし、ローゼマイン様と違い、エーレンフェストの騎士見習いは理解していない者が多い様だ…。ディッターより十数日後の訓練中、ぼやいていたのを知り、エーレンフェストの現実認識に力を貸す事にした。

 名目は敗北を挽回する事。

 ダンケルフェルガーがエーレンフェストにディッターを申し込む。ローゼマイン様は領地に帰っておられなかった為、ヴィルフリート様が代理を勤めた。
 領主候補生2人共、領地に帰って、貴族院に居ない、と言う状況を避けているらしく、帰還は順番だそうだ。領地での産業や神殿関連で帰領せねばならないお2人は、互いが代理し合う形で残留と帰還を交代で勤めているそうだ。…何ともお忙しい事である。