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雪解けはもうすぐそこだ

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日向は、誰にもバレないように募らせた想いがある。
雪のようにしんしんと積み重なった想いだ。
いつの間にか、ずっと胸の中に降り積もったのは恋心だった

「好きだ影山受け取れ!」
日向は影山にバレンタインのチョコを渡していた。
「おぅサンキュ」
一世一代の告白に何を思ったかドキドキしながら日向はチョコを受け取った影山から告白の返事を待った

それなのに

「この下手くそ!!何してやがる、レシーブはもっと腰落とせって言ってんだろが!」

「わ、分かってるよ!下手くそって言うな!」

なんか通常運転なんだけど…

どうすればいいんだ…大王様
日向はバレンタインチョコと一緒に告白してみたら?と言った大王様もとい及川を恨んだ

ことの始まりはバレンタインデーの1週間前
日向はバレンタインコーナーの前でうろうろしていた
「うーん、入りづらい。いくらアホでも男がバレンタインコーナーに入るのはちょっとな…いや、でも影山に本命として渡せない分義理チョコでも友チョコでもあげたいし…」

「チービちゃん!」
「ひょあ!!」
現れたのは大王様、影山の元中学時代の先輩だ

「チビちゃん、トビオにお熱なの?!」
「え?!ち、違います!」
「でも今、本命として渡せない分、義理チョコでも「わー!!言わないで大王様!」

日向は及川にバレてしまったことに後悔した。

「ふーん。せっかくなら、ちゃんと告白したら?」
日向は目を丸くした
「こ、告白?!ででで、出来るわけないじゃないですか!」
「チビちゃん、どもり過ぎ」
及川は顔立ちの良さから物凄く絵になる笑顔で笑った

及川は考えていた。
影山の日向への気持ちは、兄的な危なっかしい弟の世話をするような目だったが、だんだんそれが変わってきている気がしていたのだ

(第一、あのバレー馬鹿が人の面倒見るようになってるんだもん。人は変わるもんだね)

(まぁ、トビオを変えたのは間違えなくチビちゃんだと思うけど、なんというか一途だ。今まで必死に隠してたんだろうな)

「いつでもいいしさ、協力するよ?恋愛相談ならなんでもござれだよ!この及川さんにかかれば!」

「な、なんで俺なんかのために協力してくれるんですか?」
日向は訝しげに聞いた
「ん?他校とはいえ、チビちゃんも可愛い俺の後輩だからだよ」
日向はキラリと目を輝かせた
「大王様アザーす!」
「まずその大王様呼びやめようか?」
「及川さん、よろしくお願いします」
「よろしい」
2人は連絡先を交換した。
及川は学校は違えど可愛い後輩の日向が影山とくっついたら面白いなと思ったからついそんな提案をしてしまった

日向はバレンタインの特設コーナーに入るのが恥ずかしかったが、同じ男の及川と一緒に入れば怖くない。そういえば、果たしては彼はどうしてここにいるのだろう?
「及川さんは、どうしてここに?」
「んー、たまには逆チョコもありかなって」
逆チョコ目的で現れた。すごいスキルだ。自分には絶対出来ないイケメンスキルだ

「さ、さっさとチョコ選ぶよー」
「あ、はいっ」

そんなこんなで、チョコを手に入れ影山にバレンタインにチョコを渡して告白したのだが。

練習中は特に変わりない。問題なのは2人っきりになってからだ

告白した後から影山が、自分の側によくいるようになった。
降雪が深くなり、バス通学に変え、雪道を歩く時でさえ、影山は車道側を必ず歩く。
「さ、寒い~!」
「おら」
そう言うと、いきなり日向の手をつないできて、影山のコートのポケットに日向の手と自分の手を入れた。

「これで温かいだろ」
「~!?」
な、なんでこんなこと普通に出来んのお前!!
「おいここ外だぞ!!」
「誰もこんな暗がりじゃわかんねーよ」
日向は心臓をばくばくさせる。コイツ誰だ。俺の知ってる影山じゃない!振り払いたいが、嫌われたくない日向は振りほどけない。とにかく熱いし、影山が近いし、こんな男知らない
「レシーブ上手くなったな」
「え、ほんと?」
それにしては、厳しかったような
「わざと、厳しくしてんだよ」
「なるほど」
「あとで腕見せろ、湿布貼ってやるから俺んち来い」
「……分かった」
雪がちらついて寒いはずなのに、バカみたいに高鳴る心臓の音と身体の芯が温かい
告白の返事は貰えないのになんでこんなことするんだ。それでもいいか、好きなのだから。

影山は告白する前より、練習以外では凄く優しくなった。
そして変わったことと言えばこういうところだ
日向は影山の家に着くと、お邪魔しますと一言言って影山と共に自室に向かう。両親はどうやらいつも夜遅くにならないと帰ってこないそうで、大体いつも2人っきりになる
「そこに座って待ってろ湿布持って来る」
暫くするとペットボトル2本と湿布を持ってきた影山が現れた。
ドアがパタンと閉まり、心臓が跳ね上がる
今この狭い空間に影山と2人っきり。
これから始まる「行為」にどうしてもドキドキと鳴り止まない心臓が日向を支配する
影山は湿布を取り出すと昨日貼って効能の切れた湿布を剥がし、新しい湿布を日向の両腕に丁寧に貼る
「ありがと」
「ん」
ゴミ屑を片し終え、影山はベッドを背に日向の隣に座りなおす。
暫く無言になると、影山が動き出す
「ひなた…」
影山は日向の頬に左手をそっと添えると日向の唇にちゅ、ちゅ、と小さく啄ばむように何度かキスする
暫くしてちゅ、と音を立てたあとキスをやめて日向が真っ赤になって、とろんとした表情を見ると、満足そうに笑みを浮かべる。
すると両腕を伸ばして優しくぎゅっと日向を抱き締めるのだ。影山は何も言わなかった。告白の返事はなかった。それでもいいかと日向は思うのだ
ずっとこの恋心は雪のように降り積もっていたのだから
少しくらい優しくされても許されるだろう

こんなことがもう告白をした日から、1週間も続いている
初めは日向が影山に対してギクシャクしていたが、影山は至って普通だった。

次の日
部室で練習着に着替えながら、日向と影山は話をしていた。
「でさー、夏がいつの間にか寝ちゃってさー」
「…」
すると影山は日向の頭を撫でた。オレンジ色の髪を指で梳き、愛おしそうに見つめて
「ひっ」
日向はびっくりし影山から離れた。
「どうした?」
どうした?!
「ばか!!ここ部室だぞ!」
何考えてんだよ!そう言うと影山は、とんでもないことを言い出した
「前から触りてーって思ってたから」
コイツそんなこと考えてたの?!
「おい日向、大丈夫か?顔真っ赤だぞ」
当たり前だろ!
「風邪か?」
すると何を思ったか、影山は自分の額を日向の額にコツンとくっつけてきた。
ボフン!
「!?」
日向は真っ赤になった顔を爆発させた。
「おーッス、どうした?」
すると部室のドアを開け菅原が入ってきた。
「いや、なんかコイツ顔真っ赤で具合悪いみたいなんで、保健室連れて行きます」
「そうか大丈夫か?前まで妙に日向お前とギクシャクしてたけど、平気か?俺が付き添うか?」
菅原は日向に触れようと肩に手を伸ばすが、影山に遮られた。
「俺が一緒に行くんで大丈夫です。」と言って日向の手首を取って部室を出て行った。
日向は菅原からの厚意を断って一緒に保健室に向かう影山に手首を引かれていた。
作品名:雪解けはもうすぐそこだ 作家名:tobi