雪解けはもうすぐそこだ
「チビちゃんから話聞いたけど、今まで楽しかったって言われたんだよね?だったらもうチビちゃんとは終わりなんじゃないの?」
「及川さんには関係ないじゃないですか」
「関係あるね!チビちゃんは他校でも可愛い俺の後輩だもん」
「それを言ったら俺もですよね?」
「お前は別。だから今日は及川さんに譲ってよ」
「なんでですか!」
「いーでしょ別に、俺逆チョコ渡したけど、彼女からバレンタイン受け取ったから、ホワイトデーもちゃんと彼女にお返ししたいの。特に真剣に告白してきた子もいたから返したいの!分かる?」
「…!」
影山は日向の手首を離すと、及川に正面から向き直る。それを見た及川は、仕方のない子供を見るような目で話し始めた
「いい?トビオ、どんなにイイコぶったってお前の根元が王様なのを見抜いて、それを肯定してくれる人間なんて、チビちゃんくらいだ。
明日のホワイトデーにはちゃんと返してやるから、今は我慢しな。それとちゃんとチビちゃんのこと大事にしな。チビちゃんが可愛いのは分かるけど、1ヶ月も経たないうちにがっつかない」
「……分かりました」
影山は苦虫を潰したような顔をして、仕方なく頷いた
「じゃあね、トビオ。いい?ちゃんと大事な人には言葉でその気持ちを伝えなよ?じゃないと簡単に離れちゃうんだから」
「離しません」
「分かった分かった、そんな目で見ないでよ。お前ほんと最近変わったね。王様であることを誇れるようになった途端これだよ」
「じゃあ行こうかチビちゃん」
及川は日向を連れてホワイトデーのチョコ選びに付き合ってもらい、そのまま別れて帰った
ホワイトデー当日
早朝、影山と日向は3日ぶりに駐輪場の前で顔を合わせた
「はよ」
「…オス」
いつもなら、競争して走る道を2人は並んで歩く
「これお前にやる」
「?」
「バレンタインのお返し」
影山は可愛い包装がされたキャンティをエナメルバッグから取り出すと、日向に手渡した。
日向はびっくりして、影山とキャンディを交互に見て目を丸くする
まさか影山からお返しが返ってくるとは思っていなかった。確か女子からだってバレンタインを貰っていたはずだからだ。
「それと、」
「…?」
口をモゴモゴさせて日向の前に立つとバッと身体を90度に曲げた
「日向が好きだ。大事にするんで、俺と付き合って下さいコラ」
耳まで真っ赤になった影山と紳士なのか王様なのかわからない姿を見て日向は思わず笑ってしまった。
「ブッお前…ッそれは反則だっ」
ぶくくと口を抑えて笑う日向を見て、影山は顔を上げ日向を睨み付けた
「何笑ってやがる!!」
日向は涙目になりながら、目元をこすった
「コラは余計だ」
「……で、返事は?」
「お前顔こえーよ」
「もともとこういう顔だ」
日向は影山の頬に小さくちゅ、とキスをした。
「こちらこそよろしくお願いします」
「~っよし!」
「顔真っ赤!!」
「るっせ、また別れようとしたらブットバスからな」
「はいはい」
日向は、誰にもバレないように募らせた想いがある。
雪のようにしんしんと積み重なった想いだ。
いつの間にか、ずっと胸の中に降り積もったのは恋心だった
日向の恋心は今ようやく影山と共に春を迎えることが出来たのだ
雪解けはもうすぐそこだ
作品名:雪解けはもうすぐそこだ 作家名:tobi