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機動戦士ガンダムRSD 第28話 明けない夜

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帰還途中サイジョウ元帥は、通信を開いた。
「すごいな。
帰ったらビールをおごってやるよ」
 サイジョウ元帥は、祝杯をあげようと持ちかけた。
「ありがとうございます」
 サオトメの声は、落ち着きを持っていたがその奥に勝利の興奮を感じていた。
通信を切るとサイジョウ元帥は、目頭を手でもんだ。
「俺も永くは、ないか。
マン・マシーン総隊長も後何年できるだろうか」
 そうつぶやくとサイジョウ元帥は、ガイヤス・ギヤのディスプレイに触れた。

                                    ※

 基地に帰還するとサオトメは、サイジョウ元帥に勝ったことによるプレゼントとお祝いの歓迎をされた。
特に女性兵士が多かった。
「ありがとう、皆。
ありがとう」
 サイジョウ元帥は、女性たちに囲まれているサオトメの状況がうれしくてたまらなかった。

                                    ※

 マーカー艦長は、医務室にて定期検査を受けていた。
何せマーカー艦長も50代後半の老艦長であった。
「これといって問題は、ないようですな」
 X線検査による検査では、問題なくいたって健康だった。
「不安ならビタミン剤でも出しましょうか」
 軍医は、ビタミン剤を出そうか提案した。
「ああ、それならいいんだ」
 マーカー艦長は、下着一枚だったが20代のころ重量挙げで有名だった。
出身地だったサイド5の中で優勝経験があるほど体は、鍛えられていた。
そのため50代後半になってもその引き締まった筋肉は、力強さを感じられる。
「でも本当に艦長の体は、若いです。
30代の肉体といっても通じますから」
 軍医は、マーカー艦長の肉体に感嘆していた。
「お世辞はやめてください。
肉体は、若々しくても顔はもうおじいちゃんです。
女性は、今サオトメがブームですよ」
 そういうとマーカー艦長は、服を着始めた。
 服を着終わるとリーン・ホースJr.所属のパイロットが入ってきた。
「失礼します」
 パイロットは、敬礼した。
「報告します。
サイジョウ元帥とサオトメ大佐がガイヤス・ギヤで訓練をしたった今帰還しました」
 パイロットは、サオトメとサイジョウ元帥の帰艦報告をした。
「サイジョウ元帥の辛勝かね?」
 マーカー艦長は、推測し答えた。
「いえ」
 パイロットは、首を横に振った。
「サオトメ大佐の圧勝です」
 マーカー艦長は、驚いた。
「本当かね」
 驚きのあまりマーカー艦長は、確認した。
「はい」
 パイロットが答えた。
「そうか」
 マーカー艦長は、少し考えた。
「祝い酒をおごってやらねばならないかな」
 マーカー艦長は、半分久々に酒が飲めるとよこしまな気持ちを持っていた。
「いや、それはよしたほうがいいんじゃないか?」
 とめたのは、軍医だった。
「おそらくサイジョウ元帥が祝い酒をおごっているでしょう。
酒は、少量なら楽しめますが大量は毒ですから」
 いかにも医者らしい理屈だった。
「それならまた今度にしましょう」
 マーカー艦長は、残念そうに答えた。

                                     ※

 ここは、高い階級の人物しか入れないVIPルームだった。
サオトメとサイジョウ元帥は、ここで祝い酒を飲んでいた。
酒は、2人とも純日本人とのことで日本酒の極上大吟醸酒を飲んでいた。
「おいしい」
 サオトメは深々とした味、フルーティーな香りそしてさらりとしたがとてつもない存在感をおいしいと心底感じた。
「大吟醸酒は、旧日本国の『最高の酒米を極限まで磨き蔵人の力を結集して醸した日本酒の最高峰』と呼ばれたものの中の極上を選んでみたからな。
そうやって心身を使って味わってくれると振舞ったこっちもうれしいよ」
 サイジョウ元帥は、酒とサオトメの飲みっぷりのおかげで笑顔だった。
「そういえばこうやって2人で話すのは、久しぶりだな。
どうだ、生活は?」
 サイジョウ元帥は、何気ない話題をふった。
「別段困ったことは、ありません。
ただ少々オーバーワークぎみで疲れが出てるのは、事実ですね」
 サオトメは、正直に答えた。
「いや、そうじゃなくてな。
恋愛のことだ」
 サイジョウ元帥は、あわてて質問の意味を言った。
「恋愛ですか?」
 サオトメ大佐は、きょとんとした。
「そうだ。
うわさのアイリス曹長とは、部隊編成にて分かれてしまったからな」
 サオトメとアイリスの関係は、以前からコロニー軍の中でうわさになっていた。
アイリス曹長は、サオトメの抜けたη艦隊に所属し続け今ルナツーで待機命令としばしばの哨戒任務をこなしていた。
「アイリスは、『憧れの女性』というところです」
 サオトメは、持っていたグラスを置くとうつむいた。
「恋愛には、奥手かね?」
 サイジョウ元帥は、「そうじゃないか」と勘づいていた。
「彼女がチャーミングすぎるんです。
いつもは、子供のような感じなのに時々女性の色っぽさを見せてくるんです。
女性の色っぽさを見せると部下ではなく1人の女性として目に焼きついてしまうんです。
そんな女性と私は、付き合う権利なんてあるかと」
 サオトメは、公私混同をする自分を許せなかった。
「やっぱり奥手だな」
 サイジョウ元帥は、そう結論付けた。
「それに怖いんです」
 サオトメは、らしくない言葉を言った。
「怖い?」
 サイジョウ元帥には、サオトメの怖がっているものがわからなかった。
「女性に私のファンは、多いのですがそれは『純白の死神ーアツシ・サオトメ』のような気がして相棒がキューピットになってる気がするんです」
 サイジョウ元帥は、サオトメが何を恐れているかわかった。
「事情は、わかった。
でもお前は、性格も顔も問題ないからガンダムサイガーがなくてもいけると思うが」
 サイジョウ元帥は、たとえサオトメが純白の死神にならなかったとしてもモテると思った。
「ありがとうございます。
すみませんでした。
せっかくのうまい酒をまずくするような話をしてしまって」
 サオトメは、それだけでもずいぶん勇気づけられた。
「そういうな。
振ったのは、こっちだ。
それにそういう個人的な悩みを話してくれるのは、父親役の上官としてはうれしい限りだ。
先の話だがもしお前をマン・マシーン乗りとしてしか見てこない女性が現れたら俺に報告してくれ。
制裁してやる」
 サイジョウ元帥は、そういうとウインクして残っていたグラスに残っていた酒を一気に飲んだ。
「ありがとうございます」
 サオトメは、お礼を言った。
「つまみもあるんだ。
一升全部飲んでも祝いだから罰は、当たらないだろう」
 サイジョウ元帥は、中身を空にしようと提案した。
「はい」
 2人は、新しく酒をグラスに注ぐと新たなつまみの袋を開けると楽しく飲み続けた。
                                    ※

 旧ロシア平原では、吹雪が荒れている天候の中ガーティー・ルーとミネルバはボナパルトに合流した。
艦外では、多数のストライクダガーが監視を行っていた。
「こちら第81機動部隊ネオ・ロアノーク大佐だ。