二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

黄金の太陽THE LEGEND OF SOL28

INDEX|1ページ/10ページ|

次のページ
 

第93章 大悪魔の奸計


 不意の凶刃によって死したはずのロビンが、闘霊というウェイアードの防衛反応とも言える存在の力、それも最強を誇るものを得て、デュラハンを圧倒し、デュラハンは今、死の寸前まで追い詰められていた。
「さて、デュラハン」
 ロビンはソルブレードをデュラハンに向けながら言う。
「貴様にやってもらうことは三つだ。一つ、イリスの居場所を教えて、解放してもらう。二つ、シバを柱から出しても大丈夫なように活力を与えろ。そして最後、三つ目は……」
 ロビンは一呼吸置き、最後の要求を告げる。
「ヴィーナススターをよこせ。貴様が暗黒錬金術なんてものを創り出そうとしているのは分かっている」
「ぬ、うう……」
 ロビンによる総攻撃によって、ぼろぼろになったデュラハンは、持ち前の再生能力で回復しつつあるが、体力の消耗が激しく、回復速度は非常に遅い。僅かに呻くのが精一杯であった。
「ふん、少々やり過ぎたか? まあいい、話せるようになるまでは待ってやる」
 最早動くことは出来ないであろうが、デュラハンが妙な事をしないように、ロビンは切っ先を突き付け続ける。
 鎧が砕け、半裸体が露出するデュラハンの肉体は、徐々に回復していくものの、砕け散った鎧までは何故かいつまでも修復されない。
「何故だ……? 何故我が鎧は直らん……!?」
 デュラハン自身も、不測の事態のようだった。やがてデュラハンは、自らの体の内部にて異常を感じ始めた。
――魔脈が、萎れていく……!?――
 デュラハンの出血は止まらない。
 どくどくと体外にどす黒い血が止めどなく溢れ、それと同時に自身に宿る魔脈の一つが萎んでいく。
 そしてついには、魔脈が一つ壊れてしまった。
「何だ、魔脈とやらが潰れちまったようだな?」
 ロビンは、イリスとシバを助けるまでデュラハンを生かしておくつもりだったため、デュラハンの魔脈は潰さないつもりでいた。
 それが潰れてしまったことにより、ロビンは疑念をもった。
「……なるほどな」
 シンは、デュラハンの魔脈が壊れた理由を悟った。
「何か分かったのか?」
 ガルシアが訊ねる。
「デュラハンの野郎、心臓の隣にある魔脈からは、その再生力を促す血のようなものが流れてるとか言ってただろ? だからやつの魔脈は心臓みたいなものなんだ」
「言っていることはなんとなく分かりますが、では何故鎧が壊れて魔脈までも壊れたのですか?」
 イワンが訊ねると、シンは説明を続ける。
「簡単なことさ。鎧も奴の体の一部だったってことだ」
 シンの答えは全く簡単ではなかった。
「なるほど、風船がしぼむのと原理は一緒なのね」
 シンの僅かな説明で、全てを理解したのはヒナだった。その上、具体的なようで抽象的な例えを交えられ、一同の理解はまるで得られなかった。
「すまない、二人は天眼という能力で分かっているのであろうが、俺達には……。もう少し分かりやすく教えてはもらえないか?」
 呆気に取られる一同を代表し、ガルシアが詳細を求めた。
「しょうがねえな、なら、オレの言葉じゃ説明しても難しいみてえだから、姉貴の言葉を借りるぜ。デュラハンの魔脈を風船みたいなものだと想像してみろ」
 ガルシア達はひとまず言う通りに想像してみる。
 風船と言えば、その中に空気を含むことで膨らみ、球体を成すものである。球体でいられるのは、その中に十分に空気を含んでいる時のみで、空気が抜けてしまえば萎んで小さくなる。
「ただ、風船っつってもちょっと変わっている。普通の風船は空気を入れる入口があるだけだが、こんな風船を想像してみてくれ。管のようなもので繋がってて、空気の出口もあるやつをな。そして空気は循環して風船を型どっている」
 ガルシア達は更に想像する。
「もしかして、管の先にはもう一つ何かが?」
 ふとひらめいたのはイワンであった。
「勘が鋭いな、イワン。そうだ、管は何かを繋ぐものだ。その先には必ず何かがあるものだ。例えば、管の繋がったもう一つの風船とかな」
 ガルシア達の理解は一気に深まった。
「なるほど。空気の循環している二つの風船のうち一つが破裂すれば、もう一方も破裂までは行かないまでも空気が抜けて萎む、というわけか」
「その通りだ、ガルシア。それじゃあここで本題に戻るぞ。デュラハンの魔脈は管か何かを通じて鎧と繋がっていた。そして鎧が壊れたせいで、魔脈から流れる力は外に出てしまった。後は風船の例えのようになったんだ」
 シンが説明し終えると、小さく拍手が鳴った。
「なかなかいい説明の仕方ね、シン。みんなも分かってくれたんじゃないかしら?」
 ヒナはシンを褒める。
「ね、ガルシア?」
 ヒナは、シンの説明でデュラハンの魔脈の仕組みを理解できたか訊ねる。
「ああ、理解できた。魔脈と鎧という二つの風船の一つ、この場合鎧が壊れたから、魔脈の力が漏れ出て魔脈も壊れたのだな」
 ガルシアは更に、魔脈の再生促進の力を流すための管があったために、デュラハンの鎧には魔脈と同じ色のまだら模様があったのだろうとも考え付いた。
「うん、ガルシアも分かっているようね」
 ヒナはガルシアも褒めた。
「あの頑丈な鎧が無くなった今なら、皆で総攻撃を仕掛ければデュラハンを討つことができよう。しかし今は……」
 ユピターが言う。
「せやな、まずはイリス様を助けなあかん」
 アズールはユピターに賛成する。
「……ふん、気に食わないわね。ああ、さっさとデュラハンを八つ裂きにしてやりたいわ!」
 気性の荒いメガエラは、苛立ちをあらわにし、両手に握る剣を震わせていた。
「少し落ち着きなさいよ、メガエラ。大丈夫よ。今にロビンがデュラハンから全てを聞き出すでしょうから……」
 ジャスミンがメガエラをたしなめ、ロビンへと視線を戻した。
「ふんっ!」
 メガエラの機嫌は更に悪くなったが、イリスの身の安全を優先し、大人しくロビンが吐かせるのを待つことにした。
 ロビンは切っ先を向けたまま、デュラハンが無い口を割るのを待っていた。
「デュラハン」
 ロビンが、デュラハンとの二人の沈黙を破る。
「いい加減話したらどうだ? 貴様の鎧はエクスカリバーの力で浄化した。もう二度と修復することはないんだ。時間稼ぎをしても無駄なことなんだぞ?」
 もっとも、とロビンは口元に笑みを携え付け足した。
「エクスカリバーを使わなくても、貴様ごときソルブレードで鎧ごと一刀両断できたがな」
 ロビンは更に詰め寄った。ソルブレードの切っ先が、露となったデュラハンの皮膚に触れた。それだけでデュラハンのどす黒い血が皮膚を伝う。
「ぐぎぎ……!」
 デュラハンは、ここまでこけにされた屈辱に、声にならない叫びを上げる。
「デュラハン、これが最後の警告、ならびに質問だ。イリスの居場所とシバを救う方法、そしてヴィーナススターはどこにある!?」
 怒鳴り付けるロビンに、デュラハンはまだ屈しようとしなかった。
「まだ黙りを決め込むつもりか。だったらもう、こうするしかないな!」
 ロビンはソルブレードをデュラハンに突き刺した。
「がああああっ!」
 デュラハンは悲痛な叫びを上げる。
 ロビンのソルブレードは、デュラハンの右胸にある魔脈を潰していた。