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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL28

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「待てロビン! 魔脈に手を出すな、デュラハンにはまだ生きててもらわなきゃならないんだからな!」
 シンはロビンの行動を制止しようと叫ぶ。
「ふん、一個や二個潰れたところでまだ残ってるんだ。これくらいじゃくたばりゃしねえだろ」
 ロビンがソルブレードを抜くと、デュラハンの魔脈の潰れた傷口から、どす黒い血が勢いよく噴き上がる。
 さて、とロビンは再びソルブレードをデュラハンに向ける。
「もう一個潰すか? それとも貴様が口を割るまで指を一本ずつ切り落としてやろうか?」
 ロビンは恐ろしい笑みを浮かべ、まるで拷問でもしようかという様子だった。
 赤く光る眼が、ロビンの殺気を強めていた。
「や、やめろ!」
 デュラハンはロビンの脅迫に屈し始めていた。
「ふふん!」
 ロビンはソルブレードを振るう。
「ぎゃああああ!」
 どす黒い血を噴き上げながら、何かが宙を舞って落ちた。それはデュラハンの右腕であった。腕が飛ばされたことにより、握られていた剣もからからと転がった。
「魔脈を潰しちゃ死ぬかもしれないからな。腕一本で勘弁してやるよ。さあ、いい加減オレの問いに答えてもらおう」
「ぐうう……わ、分かった! 全て白状する! だからこれ以上は!」
「ならまずはイリスの居場所だ。どこに居る?」
 完全に怯えきったデュラハンは、ついにロビンの質問に答え始めた。
「……ぎ、玉座の後ろ、下の方にイリスを封じた石板がある。ヴィーナススターもそこに……」
「本当だな? 嘘だったら、次は左手を弾き飛ばすぞ」
「ほ、本当だ! 何なら我が直に……」
「いや、妙な真似をされたら厄介だ。貴様は動くな」
 ロビンはデュラハンから目を放すことはしなかった。
「誰か調べてみてくれ。玉座の裏だ」
「ああ、俺が行こう」
 ガルシアが玉座の後ろへと行く。
 玉座の裏を調べてみると、よく見ないと分からない蓋がしてあり、それを外すと更に引き出しまであった。
「あったぞ!」
 引き出しの中には、デュラハンの言う通り、不可解な文字が彫られた石板と地のエレメンタルスターが隠されていた。
 しかし、デュラハンの言う通り、イリスを封じた石板らしき物があったが、大きさはガルシアの黒魔術の魔導書ほどで、これにイリスが本当に封じられているのか疑わしかった。
「おい、あんな小さな石板なんかにイリスは囚われているのか? 適当なこと言ってるんじゃないだろうな?」
 にわかには信じがたいロビンは、デュラハンに更に詰め寄った。
「デュラハンの言う通りやで、ロビン」
 石板を持つガルシアに近付き、アズールは言う。
「本当なのか?」
「せや、ガルシア。この石板には文字が記されてるやろ? これは石化呪詛の呪文なんや」
 アズールによると、イリスは石化するのみならず、石板という媒体に封じ込められる呪詛をかけられているとのことだった。
 デュラハンの狙いは、イリスを石板にした上で、イリスの力を取り込んでイリスと融合することだった。
 しかし聖と闇、相反する二体が直に融合することができないがために、イリスを肉体とともに存在させておかずに石板に封じる呪詛をかけたのである。
「解呪はできるのか?」
「できるで、オレの浄化魔法を使うたらな」
 デュラハンの呪詛は、見た目ほど複雑なものではなかった。
 アズールの得意とする精霊の魔法、水の精霊カシスを使用した魔法を使えば、悪霊叫びや死霊の誘いさえもはらいのけたように、もとに戻る程度の呪詛であった。
「やってくれるか?」
「言われるまでもないで、ガルシア。ほなやったるか」
 アズールは精神集中し、魔法の詠唱を始める。
「水の精霊カシス、その清らかなる流れにてあらゆる穢れを祓え!」
 水の精霊の力を使い、アズールは、毒であろうが呪い、更には悪霊をも浄化する水を石板に放った。
 浄化の力を宿した水滴が石板に触れると、一瞬石板が水色に光り、次の瞬間表面がひび割れを起こした。
「バカな……イリスが……!」
 イリスとの融合を目論み、石板へと封じた張本人たるデュラハンは、イリスの封印が解かれていく瞬間を目の当たりにして呆然としていた。
 やがて石板は全て砕け散った。しかし、そこからすぐにイリスが出現することはなかった。
「ちょっと、本当にイリスは大丈夫なんでしょうね!?」
 たまらずメガエラがアズールに詰め寄ってきた。
「大丈夫やて、メガエラさん。今にイリス様は顕現するで」
 ほら、とアズールが指を指すと、デュラハンの呪詛の解呪はまだ続いていた。
 砕け散った石板に刻まれていた文字だけが宙を舞い、列をなして渦を巻き、その中心部に入り込んでいく。
 そして、渦の中心部が虹色に輝くと、ついにイリスの姿が出現した。
 イリスは、エナジーの輝きのような光を纏い、浮遊していたが、輝きを失うと力なく崩れてしまった。
「イリス!」
 メガエラはイリスを正面から抱き止めた。
「イリスは無事か!?」
 ガルシアは急ぎ近づいた。
「アズール!」
 まるで、手遅れだったかのようなイリスを抱きしめながら、メガエラはその目に憎しみを込めてアズールを睨んだ。
「少し落ち着きぃや、メガエラさん。イリス様は気を失ってるだけや」
 メガエラは、固く抱きしめているイリスの口元から、小さく呼吸しているのを耳で感じ取った。
「……よかった、生きて……」
 メガエラはようやく安堵し、イリスをそっと地面に横たえる。
 バチっ、と衝撃が走った。
「許さない……!」
 衝撃はメガエラの双剣から、ロビンの方へと放たれたものだった。
「メガエラ!?」
 メガエラの突然の行動に皆が驚いた。
「……なんの真似だ、メガエラ?」
 ロビンはとっさに首を傾け、衝撃をかわしていた。そしてデュラハンに切っ先は向けたまま、メガエラの方を見る。
「知れたこと。デュラハンに引導を渡してやろうとした、それだけよ」
 静かな怒りに満ちたメガエラの瞳は、むしろロビンに向けられているようだった。
「そうか。だがオレには、お前がオレごとぶち殺そうとしたように感じられたが?」
 ロビンは不敵な笑みを込めて返す。
「ええ、そうよ。私は私よりも強い者の存在を認めない。イリスを除いてね」
 チャキッ、とメガエラは右手の剣をロビンに向けた。
「ふっ……」
 ロビンは振り向くことなく、デュラハンの最後の魔脈を潰した。
「がはあっ!」
 さらにロビンは、デュラハンに完全に背中を向けた状態のまま、デュラハンの本当に最後の生命力の源、心臓を刺し貫いた。
 デュラハンはうめき声すらも上げることなく絶命した。
「ほら、デュラハンはたった今オレの手でぶち殺してやったぜ? オレより遥かに弱く、お前より圧倒的に強い奴をな」
 ロビンはまるで、メガエラを煽るような口調である。
「それで、メガエラ、お前の望みはなんだ?」
「私は復讐の女神、メガエラ。私の望みはただ一つ、今この場であなたを殺す。デュラハンを殺したあなたを殺せば、私の復讐は果たされる……」
「ふふふ……はははは……!」
 ロビンは上を向き、前髪をかき上げながら高笑いすると、大悪魔デュラハンすらも一睨みで怯ませた目をメガエラに向けた。