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永遠の楽園 【嘘の楽園 after】

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シャアはアムロの肩口に顔を埋めて呟く。
「すまない、少しこのままで…」
「どうしたんだ?なんかあったのか?」
首に回されたシャアの腕を掴みながらアムロが尋ねる。
「…君が…」
「俺?」
シャアは大きく息を吐くと、更にギュッとアムロを抱きしめる。
「…アムロ…」
「一体どうした?」
アムロの問い掛けに、シャアは顔を上げると、自分を見つめるアムロと視線を合わせる。
「なんだよ、そんな情けない顔して」
「……」
「こっち来いよ」
アムロはシャアを自分の正面に来させると、真っ直ぐにシャアを見上げる。
シャアはそんなアムロの前に跪き、アムロの膝に顔を埋めて抱きしめる。
「なんだ?久々に総帥やって疲れたか?」
優しくサラサラのプラチナブロンドを指で梳いてやる。すると、シャアは顔を伏せたまま、ポツリポツリと話し始めた。
「…二人でいた頃は…私だけの君だったのに…」
「シャア?」
シャアは顔を上げ、アムロを切なげに見つめる。
「君が…ネオ・ジオンで上手くやっている事が喜ばしいのに、君が他の者と笑い合っているのを見ると、嫉妬心が湧き上がる…」
「はぁ?嫉妬って…別に浮気してる訳じゃないぞ?」
「分かっている、分かっているのだ。しかし、君を独り占めしたい」
「シャア…」
少し困った顔をしてアムロがシャアを見下ろす。
そして、情けない顔をするシャアの頬を優しく撫ぜる。
「バカだなぁ。俺にとって貴方は特別だよ。それに約束しただろ?ずっと側に居るって」
「ああ、分かっている。だがどうしようもないんだ」
そんなシャアの顎を掴むと、グッと自分の方へと引き上げる。そして、その形の良い唇に己のそれを重ねる。
それは触れるだけのものではなく、舌を絡ませ互いの唾液を交換しながら行う深い、深いもの。
「んん…」
気付くと、アムロからした筈のキスはシャアに主導権を握られ呼吸が出来ないほどに濃厚なものになっていく。
「んんんんん!」
「アムロ…」
シャアはそのままアムロの膝の裏に手を入れ、車椅子から抱き上げる。
そしてそのままベッドへと連れて行き、そっとシーツの上に下ろすとようやく唇を離す。
「シャ…ア…」
「アムロ…好きだ…」
綺麗なスカイブルーの瞳で見つめながら囁かれる言葉に、アムロの顔が真っ赤に染まる。
「あ…えっと…」
「君は?君は私の事をどう思っている?」
真っ直ぐに見つめられ、アムロは戸惑いながらも小さな声で呟く。
「……きだよ…」
「アムロ?」
アムロは意を決してシャアを見上げる。
「貴方が好きだよ!」
そんな潔いアムロの言葉に心が熱くなる。
「ありがとう…アムロ」
シャアは極上の笑みを浮かべると、そのままもう一度アムロにキスをする。
そんなシャアをアムロも自由の効く右手で抱きしめる。
「シャア…貴方が好きだよ…誰より大切だ」
「アムロ…!」



翌朝、そのままアムロの部屋に泊まったシャアがダイニングの席にいるのをカミーユが嫌そうな顔で睨みつける。
「なんで貴方がここに居るんですか?」
「アムロと一緒に朝食を取ろうと思ってな」
「そのアムロさんはどうしたんですか?」
「うむ、昨夜少し無理をし過ぎてな、まだ眠っている」
「貴方が無理させたんでしょう!」
「すまない、アムロが愛しすぎて抑えが利かなかった」
「無理させるなって俺言いましたよね!?半身の麻痺もありますけど、内臓も少し弱ってるんです。だから無理はダメだって…!」
「そうなのだがな、どうにも我慢が出来なかった」
「はぁぁぁぁ。どうせ、つまんない嫉妬したんでしょう?」
「…っ」
カミーユに図星を指され少し言葉に詰まる。
「アムロさんは貴方のために周りと上手くやっていこうと頑張ってるんですよ。貴方の負担にならないように、自分の存在が貴方のマイナスにならないようにって!」
「…アムロ…!」
「分かったら、これからは温かく見守って下さいよ!あんな嫉妬にまみれた思惟を飛ばしてこないで下さい!」
モビルスーツデッキでシャアが飛ばした嫉妬の想いはカミーユにガンガン伝わっていた。
「アムロも気付いていたか?」
「どうでしょう?話に夢中だったから気付いていなかったかも」
「そうか…」
「ほら!分かったらとっとと飯食って仕事に行ってください!俺が後でアムロさんの診察しますから」
「うむ、すまない。カミーユ、頼んだぞ」
「ハイハイ」
不機嫌そうに返事をしながらも、シャアとアムロが互いの想いを伝え合えた事を感じて安堵する。
『全く、世話がやけるったら!』
溜め息を吐くと、窓の外に広がるスウィート・ウォーターの景色を見つめる。

ここは前のように二人だけの楽園ではないけれど、偽りではない本物の楽園。
これから二人はここで生きていく。
偽りのない永遠の楽園で…。


end

2018.6.27