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永遠の楽園 【嘘の楽園 after】

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「謝る必要は無いよ。君の言うことは尤もだ。俺は恨まれても仕方がない。戦争とは言え多くのジオン兵を殺したからな」
「だったらネオ・ジオンから出ていけよ!連邦からどう扱われていたか知らないがネオ・ジオンに来るなんておかしいだろ!」
「…まぁ…そうだよな…」
「アムロさん!」
カミーユとは違い、のんびりと硬いベッドに座って困った顔をする。
「でも、すまない。ずっと側にいるってあの人に約束しちゃったから出ていけないんだ」
「はぁ?約束って誰とだよ」
「ん?ん……内緒」
『そんなのクワトロ大尉に決まってるだろ?』とカミーユは思うが口には出さず溜め息を吐く。
「内緒だぁ!?」
「とりあえず、俺の事を認められないのは仕方ないけど、君たちの邪魔にならないようにするからさ、出来ればここで生きる事を許してくれないか?」
「勝手な事言ってんじゃねーよ!」
「ああ、勝手だよな」
「分かってんなら出てけよ!」
「ごめんな。でもこれだけは譲れないんだ」
「ふざけるな!」
「ふざけてないよ」
すまなそうにしながらも、決して譲らないアムロに兵士が大きな溜め息を吐く。
「あんたも強情だな」
「ははは、諦めは悪い方なんだ」
「あんたの諦めの悪さは知ってるよ!大体引力に捕まった隕石をモビルスーツ一機で押し返そうとするなんてイカれてる!あんた頭おかしいだろ!」
「ああ、俺もそう思う。でも、あの時はどうしても諦めたくなかったんだ」
「隕石押し返して自分が落ちてりゃ世話ないな!」
「あー、そうだね」
アムロがポリポリと頬を掻きながらヘラりと笑う。
そんなアムロを兵士が溜め息混じりに見つめる。
「あんたのその身体、その時の後遺症だろ?」
「ん?まぁね。正直生き延びるとは思ってなかったよ」
「ホンット諦め悪いな」
「ははは!流石に自分のしぶとさには笑ったよ」
「何でそんなにまでする?」
「何でかなぁ。とにかくシャアと決着を付けたかったし、シャアを止めたかったんだ」
「その為に自分の命を懸けたって言うのか?」
「まぁ、グリプス戦役の後はその為だけに生きてたようなもんだったからな。それが叶うなら死んでもいいと思ってた」
アムロの言葉に兵士が言葉に詰まる。
「…あんたバカじゃないのか?」
「そうかもね」
あっけらかんと話すアムロに、兵士は開いた口が塞がらない。
「……はっ!バカに何言ったって仕方ねーな!好きにしろよ!」
「ははは、ありがとう」
「勝手にしろって言っただけで認めたわけじゃねーよ!」
「ああ、そっか」
どこまでも呑気なアムロに兵士の態度も段々と投げやりになっていく。
「はぁ、もう付き合ってらんねーよ」
「ははは、でもこんな殴り合いしたのロンデニオンでシャアとやり合った時以来だな」
「はぁ?総帥と殴り合いしたのか?」
「ああ、偶然出くわしてさ、一言文句言ってやろうと思って飛びかかった」
「総帥とアンタじゃガタイの差がありすぎるだろ」
少し呆れながら兵士が言うと、アムロが悔しげに答える。
「そうなんだよな、何であの人あんなにガタイがいいんだ?俺がどんなに鍛えたってあんなに胸板厚くならないのに!」
「アムロさん、それは人種的なものもあると思うので仕方ないんじゃ…」
カミーユがボソリと口を挟む。
「だけどムカつくだろ!それにあの人、あんなガタイなのに意外とすばしっこくってさ、アクシズの中で白兵戦した時も俺の仕掛けた爆弾もバズーカー砲も避けるし、腹が立つったら」
「アンタ総帥相手にバズーカー砲ぶっ放したのか?」
兵士が顔を痙攣らせながらアムロに確認する。
「ああ、全部避けられたけど。アイツだって俺に手榴弾投げてきたんだからお相子だろ?モビルスーツ戦だったら負けないのに!やっぱり肉弾戦は不利だな」
事もなげに言い放つアムロに、話を聞いていた他の兵士も唖然とする。
「アムロさんって意外と負けず嫌いですよね」
「だってカミーユ、悔しいだろ!?クッソ、どうしたらあの人に勝てるかなぁ。ハヤトに柔道習ったんだけど、やっぱり投げ飛ばせても受け身取られてダメージは与えられないんだ」
「空手、教えましょうか?」
「え?カミーユ、ホントか?教えてくれよ!」
「おい、アンタその身体でまだ総帥に挑む気か?」
「当たり前だろ!今すぐには無理だけど、リハビリして絶対にもう一回勝負してやる!」
グッと拳を握りしめるアムロに、兵士が思わず笑いだす。
「ははは!アンタ本当にバカだな」
「何でだよ!」
「総帥に敵うわけないだろ?」
「そんなのやってみなくちゃ分からない!」
「相手はあの赤い彗星だぞ」
「だからなんだ!絶対に負けない!」
言い切るアムロに兵士達が笑い出す。
「なんだよ!お前ら俺が敵うはずないと思ってるだろ!」
「当たり前だろ!なんなら賭けるか?」
「いいだろう!何を賭ける?」
「そうだな、アンタが勝ったらここで一番良い酒を奢ってやるよ」
「よし!乗った!」
「アムロさん…そんな売り言葉に買い言葉…」
なんだかおかしな展開になってきた事にカミーユの怒りも何処かへ行ってしまう。
「よし!とりあえずここから出たら飲みに行くぞ!」
「おう!」
何故かそんな流れになって互いの怒りは有耶無耶になってしまった。


数日後、何故か喧嘩をした兵士達とアムロはモビルスーツデッキに居た。
「ネオ・ジオンの機体っていつも思うけどセンスいいよな。この流線型のフォルムなんて抵抗をスムーズに流して動きを滑らかにしてる。武器もバラエティ豊かでさ、連邦のジムとかなんてカクカクしいというか、イマイチなんだよな」
「そうだろう!アンタよく分かってるじゃないか!」
兵士と一緒にメカニック達が集まってくる。
アムロの車椅子を押すカミーユも、モビルスーツの事になると思わず前のめりになり会話に参加する。
「俺はガンダムタイプも嫌いじゃないですよ」
「まぁな。でもそう思うとリックディアスは双方の良いところをうまい具合に取り入れた良い機体だったな」
「あれってクワトロ大尉が開発に携わってたんでしたっけ?」
「そうそう、あの人目の付け所は良いんだよな」
少し悔しげに呟くアムロに、例の兵士が呆れ顔で呟く。
「アンタ本当に負けず嫌いだな」
「うるさいよ!」
「ははは!」


そんなアムロ達の様子を離れた所からシャアとナナイが見つめる。
「なんだアレは」
「例の喧嘩騒ぎの後、営倉で何やらあったようです」
淡々と答えるナナイに、シャアが渋い顔をする。
「ジオン兵とアムロ大尉が打ち解けたのなら良いことではありませんか?」
「それはそうだが…」
アムロが他の者と仲良くしているのが少し腹立たしい。
「大佐、独占欲が強すぎます」
「そんな事は…」
と言い掛けて、アムロの肩に腕を回して笑い合う兵士達に激しく反応してしまう。
「おい!近過ぎるぞ!」
「…大佐…」
シャアのその反応に呆れながらナナイが盛大な溜め息を吐く。



久しぶりにアムロ達と夕食を共にした後、シャアはアムロの部屋を訪れる。
「アムロ、いいか?」
ドアをノックするシャアを、アムロは笑顔で迎え入れる。
「ああ、どうぞ」
電動車椅子を操作しながらソファへと案内すると、シャアが後ろからアムロを抱きしめた。
「シャア!?」