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ソラから降りて来るLoneliness

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ソラから降りてくるLoneliness


「貴方より貴方の事、愛していたんだ」


U.C.0093.3.12
宇宙を駆ける純白の機体と、重厚な佇まいでそれを待ち受ける真紅の機体。
二機は何度もぶつかり合い、サーベルを交えファンネルを飛ばし合う。
一歩も引かぬ攻防、全ての武器を失ってもモビルスーツで殴り合いの戦いを繰り広げる。
そして、互いの機体がアクシズへと沈み大破した後も、二人は生身で剣を取って戦った。

アクシズの居住区内の一角にあるヨーロッパ調の豪奢な屋敷へとアムロをおびき出したシャアは、かつてのア・バオア・クーでの様に、アムロに剣を差し出す。
「アムロ、剣を取れ!決着をつけよう」
あの時とは違い、今回は重厚な中世の騎士が使う剣だ。
アムロはその剣を手に取り、グッと握り締める。そしてその剣越しにシャアを見つめると小さく息を飲む。
「…いいだろう」
ヘルメットを脱ぎ捨てシャアに向き合う。
「行くぞ!」
シャアの叫びと共に剣がガシャリと音を立てながらぶつかり合う。
二人は激しく剣を交えながら互いの瞳を真っ直ぐと見つめる。
そして、かつて剣を交えた時の様に、己の全身全霊を込めて一太刀一太刀を繰り出す。
決して手加減などしない、男同士のプライドを懸けた戦いだ。
己の信念の為、大切なものを守る為、ライバルと認めた男との決着をつける為。
二人は何度も剣をぶつけ合う。

十四年前、初めて出逢ったのは戦場だった。その後も何度も戦場で合間見え、命懸けで戦った。
しかし一度だけ、戦場以外で偶然出会った事がある。
ララァにあった翌日、モビルスーツ越しではなく、初めて直接顔を合わせた。
アムロは直ぐにシャアだと気付いたが、シャアは何かを感じたものの、アムロがガンダムのパイロットだとは気付かず、エレカを泥濘みにはめたアムロを助けてくれた。
その時のシャアは戦場とは違い、優しい男で、自分の制服が汚れる事も顧みずに他人に手を差し伸べるような男だった。
おそらく、その優しさは彼の人間としての本質だろうとアムロは思った。シャアの事など何も知らなかったがそう直感したのだ。
そしてその出来事は、アムロにとって忘れられないものとなった。
もしも立場が違えば、同志になれたかもしれないとさえ思った。事実、グリプス戦役時には同志として共に戦った。
そしてグリプス戦役時、行動を共にする中で、仲間という関係以上のものを彼に感じた。
自分にとって唯一無二の存在なのだと彼を認識した。
それはシャアも同じで、親愛、恋愛、情、この想いがどういった部類の感情なのか分からなかったが、狂おしい程に互いを求めた。

そして今、二人は再び剣を交える。地球連邦や地球に住む人々を見限り、ネオ・ジオンの総帥となったシャアは、地球を汚染し、スペースノイドを迫害するアースノイドに粛清を与える為にアクシズの地球落下作戦を実行した。
性急すぎるシャアの行動を止める為、アムロはシャアに立ち向かう。
そしてシャアも、自身の信念を貫く為、そして最上のライバルと決着をつける為アムロと対峙した。

繰り出される剣が互いの身体を傷付ける。
アムロの剣がシャアの肩を裂き、シャアの剣がアムロの頬を裂く、一進一退の攻防が繰り広げられるなか、互いの体力も限界に近づいた頃、シャアの振り上げた剣がアムロの左腕を肘の辺りから切断した。
「あうっ!」
アムロの左腕が弾け飛び、無重力の空間に浮く。
そしてトドメを刺すため、フラついたアムロに向かってシャアが剣を振り上げる。
「これで終わりだ!」
「まだだ!」
アムロは左腕を失いながらも必死にその剣を受け止め、どうにか一歩下がって体勢を整える。
「はぁはぁ」と二人の荒い呼吸音が屋敷の広間に響き渡る。そして、アムロの白いノーマルスーツが血で赤く染まって行く。
「ふふふ、君が私の色に染まっていくな。そんな風に…私の手を取り、私のモノになればいいものを!」
「黙れ!俺は貴方とは違う!貴方に同調はできない!」
「ならば戦うしかあるまい!どちらかが死ぬまでな!」
二人は同時に剣を振りかぶると互いに向かって剣を振り下ろす。
「アムロ!」
「シャア!」
シャアの剣はアムロの肩を突き刺す。
そして、アムロの剣がシャアの胸に突き刺さった。
その瞬間、互いの視線が合わさり二人の意識が繋がる。そして意識が宇宙に溶けていく。
『アムロ…』
『シャア…』
『また…私の負けだ…』
『昔のは…相討ちだっただろう?第一俺の怪我のが酷かった』
『そうかな?一歩間違えば私は死んでいた。君は今も昔も容赦なく急所を狙ってくる』
『手加減して欲しかったのか?』
『まさか!本気のアムロ・レイと戦ってこそ私の目的は果たされる』
『貴方の目的…か……。これで…満足か?』
アムロが悲しげにシャアを見つめる。
その視線にシャアが不敵な笑みで答える。
『ああ、最高だ…』
『はっ!勝手な事ばっかり言いやがって!』
『ふふ…ああ…アムロ…刻が…見える…私はララァの元へ行けるだろうか…』
『バカだな、ララァならずっと貴方の側に居たよ。今もずっと見守ってる』
『ララァが?』
『ああ、ララァは貴方にベタ惚れだからな』
『そうか…』
微笑むシャアの意識が徐々に薄くなっていく。
『ララァによろしくな…』
アムロはそっとシャアに微笑む。その笑顔にシャアクスリと笑う。
『君に笑いかけられたのは何時ぶりだろうな…』
『貴方がバカな事しなけりゃ、いつでも笑ってやってたよ…』
『…ふふ…それは…残念だ…』
『よく言う…』
『君だけが…私の心を揺さぶる…。君の存在がどれだけ私の心を占めていたか…』
目の前のシャアの姿が薄くぼやけ消えていく。それを、アムロはただ見つめた。
『アムロ…君だけが…』
その言葉を最後に二人の共感は途切れ、周囲が宇宙から今まで戦っていた部屋の景色に変わる。
そして、アムロの目の前には剣で胸を突き刺されたシャアが安らかな顔で目を閉じていた。
アムロはそっとシャアを抱きしめ、その身体をゆっくりと床に横たえる。
そして、剣から手を離すとシャアの頬を残った右手でそっと撫ぜる。

「本当に…勝手だな…貴方は…。こんな…殺傷能力の高い剣を渡しやがって…」
過去に対決した時のフェンシングの剣よりも遥かに殺傷能力の高い剣。
それを渡された時、シャアの覚悟が伝わって来た。
“死を持って決着をつけようと…”
アムロの瞳からポロポロと雫が溢れ出し、丸い水滴となって宙に舞う。
「こんな…満足そうな顔して…最高とか言いやがって…俺の気も知らないで…」
血の噴き出す左腕を気に留める事もなく、アムロはシャアを見つめる。

「なぁ…こんな事言ったら…貴方は笑うか?…」
アムロは、剣の刺さったシャアの胸に自身の頭を乗せて瞳を閉じる。

「貴方より貴方の事…愛していたんだ…」



折り重なるように倒れる二人を、シャアを追って来たギュネイが見つける。
「大佐!!」
ギュネイの声に、アムロが反応して顔を上げギュネイに視線を向ける。
その二人の状態にギュネイが息を止める。
胸に剣が突き刺さった状態で横たわるシャアと、片腕を失いその横で座り込むアムロ。
「…っ!?」