二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

七色の日に寄せて

INDEX|3ページ/3ページ|

前のページ
 


 帰国の日の朝。小雨が降った。
「いい香り〜」
コウは窓から入ってくる雨に濡れた緑の薫りを、胸いっぱいに吸い込んだ。
「この環境を取り戻せたのは、アムロ様の積極的な研究開発のお蔭だ。我々は及ばずながらも協力をしていかねばな」
コウの背後に立ち、共に癒される薫りを吸っていたガトーがそう言い、バッグを片手に部屋を出た。
屋敷の入り口で暇の挨拶をしていると、奥から軽やかな足音が聞こえていた。
その後を追うように咎める男の声が近づいてくる。

「ま…な…い、ア…ロ! 出…はいけない。待てと言うのに!!」
「うるさいよ! ばかシャア!!」

背後から捕まえようとした男の腕をかいくぐり、白のランニングに青の縞模様のトランクス姿がコウの前に飛び出してきた。

「ごめん! 今の今まで顔も話も出来ないでいて。でも、環境再生にみんなが協力してくれる事。すごく嬉しいし励みになっているんだって事は、どうしても直接顔を合わせて言いたかったんだ。こんな遠くまで来てくれてありがとう! これからも頑張って行こうね!!」
コウより小さめな手がコウとガトーの手を握って言い募ってきた。その手は機械いじりによる荒れがあったが、とても暖かかったし、見詰めてくる瞳は夜空のような澄んだ美しさがあった。
「はい!共に頑張って行き…ま…しょう」
コウは意気込んでそう言葉を返し始めたが、その視界に映る象牙色の肌のいたる所に散る淡紅色の花びらの存在に赤面し、語尾は消え入りそうなものとなってしまった。
「アムロ様。そのお姿は、コウには些か刺激が強すぎる…かと…」
ガトーも頬の高い場所を朱に染めながらも、当主が目通りを阻止しようとした理由に行き当たった。
清廉でいて妖艶という真逆の印象を与える姿に、常にアムロを見慣れている筈のジンバも視線を外している。
そんな華奢な姿が、蒼いビロードのマントにくるまれて隠される。
「その様な姿で他者の目の前に出てはならんと止めていたというのに、まこと言う事を聞かぬじゃじゃ馬だ。挨拶なら私が代わってするから良いと言い含めていただろう?」
マントからはみ出ている紅茶色の旋毛にキスを落としながら金彩の美丈夫が言うと、蒼い塊がもぞもぞと蠢き、芽が出たようにポンッと顔を出した。
「それはシャアの都合だろ? 僕には僕の付き合いってのもあるんだよ! そもそも、最初からコウやガトーさんと話をさせてくれれば、もっと進んだ開発の話が出来たはずなのに…。毎晩毎晩、抱き潰してくれて!! 僕がシャアのもとから離れるなんて事、太陽が西から昇ったってあり得ないって、どうして解ってくれないかナァ〜」
むくれて言う言葉は子供っぽいのに、内容は赤面ものの惚気。
「この天然度合いが、いまだにH・Gに白い木馬に根強いファンが存在する理由なのかな? ねぇ、ガト〜」
「私に振るんじゃない!!」
見上げてくるコウの頭を押さえつけると、ガトーは頭を下げて挨拶をするなり、速足で城塞の跳ね橋へと歩き出した。
当然、コウの手を握り締めていたので、引きずられるような感じになったコウは走る状態だったが、出来るだけ振り返ってアムロへと手を振った。
アムロもマントから片手を引き出すと、精いっぱい振り返してくれた。

二人は互いの姿が見えなくなるまで、そうして手を振り続けたのだった。


 城塞から1km程離れたところで、ガトーが初めて振り返る。
コウは息も絶え絶えになりながらも、同じように振り返ってみた。

そして二人は
同時に息を飲んだ。


「知っているか?コウ。虹のたもとには宝が眠っていると言われていると…」
暫しの沈黙の後、ガトーがぽつりと問いかけてきた。
「あ〜〜。そんな話を聞いた記憶があるなぁ。……ほんとに、宝物が眠ってるんだね」
「ああ! そのようだ」


二人がため息と共に見やるその先には、幻想的な景色が表れていた。

うっすらとした朝もやの中

断崖絶壁を背にして、緑に囲まれた銀杜松色の城塞には

虹のたもとがかかっていた。

そして、その虹の上に、逆の配色で出来た

もう一つの虹がうっすらとそのアーチを描いていたのだった。
2013/07/16
作品名:七色の日に寄せて 作家名:まお