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ソラから降りてくるLoneliness 2

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ソラから降りてくるLoneliness 2


〈艦長!アムロ大尉を保護しました!〉
パイロットの一人からラー・カイラムの艦橋へと通信が入る。
「そうか!…それでアムロは?」
ブライトの問いに、パイロットが口ごもる。
〈…負傷しています、医療班の手配をお願いしてします!〉
「アムロは話せるか?」
〈いえ…先程までは意識があったのですが、今は気を失っています〉
パイロットの言葉に、ブライトは嫌な予感に身を震わせる。

艦橋のモニターに表示された「RX-93νガンダム LOST」の文字。
アクシズの周囲でシャアのサザビーと戦闘していたのは確認されたが、その後νガンダムの反応が消えた。
それはつまり撃墜されたという事だ。
ブライトは一年戦争の時にも同じようにシャアとの激闘の末、アムロのガンダムが撃墜されたのを思い出す。
そして、あの後二人は生身で戦ったと聞いた。
今回も、二人は互いの機体が沈んだ後、同じ様に戦ったのだろうか…。
パイロットの様子から、アムロはかなりの深手を負っていると思われる。
「分かった。医療班の手配をしておく、至急帰艦せよ」
〈了解〉

アムロの帰艦連絡を受けたブライトが急いでモビルスーツデッキへと降りて行く。
すると、騒つくパイロットやメカニック達に囲まれ、アムロがパイロットの一人に支えられてコックピットから出てきたところだった。
「アムロ!!」
ブライトはアムロの元に駆け寄り、その姿に言葉を失う。
血で真っ赤に染まったノーマルスーツ。
切断され途中から無くなっている左腕。
大量の汗をかき、荒い息を吐く苦しげな表情。
「おいっ!アムロ!大丈夫か!?」
ブライトの声に、アムロの瞼がピクリと震え、その下から琥珀色の瞳が姿を現わす。
「ブ…ライト…」
「アムロ!大丈夫か?お前…この腕…」
ブライトに言われ、アムロが自身の左腕にチラリと視線を向ける。
「ああ…シャアに…やられた…」
「シャアに!?」
周りの皆がその言葉に騒つく。
「それにしても出血が多すぎる!」
まるで元々赤い色だったのではないかと思う程赤く染まったノーマルスーツに、ブライトは自身の血の気が引く思いがする。
「大丈夫…半分は…返り血…だから…」
「…返り血?」
それが誰の返り血なのか想像が付くだけに、ブライトはその相手がどうなったのかを確認せずにはいられなかった。
「それで…シャアは…?」
ブライトの問いに、アムロは辛そうな表情を浮かべ、少し間をおいてからブライトを見上げる。
「…死んだよ……」
少し声を震わせながら語るアムロに、ブライトは息を飲む。
「シャアが…死んだ…?」
かつて共に戦った頃の、クワトロとしてのシャアの姿が脳裏に浮かび、何とも言えない想いが心に込み上げる。
「ああ…俺が…この手で……」
語るアムロの瞳からは涙が溢れ出す。
「俺が…殺したんだ…!」
絞り出すように叫ぶアムロを、ブライトがギュッと抱きしめる。
「アムロ!…」
アムロの言葉にブライトだけで無く、周囲にいた者たちの間にも動揺が広がる。
『シャア・アズナブルが…死んだ!?』
ブライトは動揺しつつも、涙を流すアムロを胸に抱きしめる。
その暖かい胸に頬を埋め、アムロが悲しげに呟く。
「ブライト…あの人…俺の気も知らないで…満足そうに笑って…最高だとか言うんだ…。本当に…馬鹿な奴…」
ポロポロと涙を流すアムロを見つめ、ブライトは、二人が互いをライバルとしてだけでは無く、特別に思っていた事を改めて痛感する。
そして、その時のシャアの想いがブライトには何となく理解できた。
おそらくシャアはアムロに人生の幕を降ろさせたかったのだろう。
スペースノイドの独立の為とはいえ、多くの命を奪った罪を、アムロに裁いて欲しかったのだ。
彼は独裁者ではない、純粋過ぎる心を持った指導者なのだから…。
その純粋さは、目的を全うしようとする己の意志と共に背負った罪の重さを受け止めるには優し過ぎた。
その彼を救えるのは、彼が唯一認めたライバルであり、ファーストニュータイプのアムロ・レイ以外にはいなかったのだろう。
アムロもまたそれを理解していた。
だからこそ、情を捨てシャアに対して一切手を抜かず、本気で立ち向かったのだろう。
「ブライト…これで…良かったのか?俺は…間違ってたんじゃないのか…俺は…!」
「アムロ!?」
「ブライト!ブライト!俺!!」
「間違ってない!お前は間違ってなんかいない!あれで良かったんだ!」
ブライトは叫ぶアムロの頭を両手で抱え、言い聞かせるように答える。
その答えに、アムロは涙を流すと、そのまま意識を失ってしまった。
「アムロ…?」
身体の力の抜けていくアムロを支えながらブライトはその細い身体を強く抱きしめる。
その光景を、周りのクルー達は言葉無くただ見つめていた。


◇◇◇

緊急手術の後、医務室で眠るアムロの脳裏に子供の声が響く。
『ぱーぱ…』
その無邪気な声に、アムロの意識が浮上していく。
「俺…どうし…」
朦朧とした意識の中で、自分の状況を確認する。
麻酔が効いていて痛みは感じないが、左腕に違和感を感じる。
そして、「ああ…」と思う。
「俺…シャアと…」
アクシズの中での事が脳裏に蘇る。
あの人と…命懸けで戦った。
そして、この手で決着をつけた。
あの人がそう望んだから…。
いや、あの人と戦う事を望んだのは自分も同じだ。
出逢ってから十四年、俺の心の大半を占めていた存在。
パイロットとして、あの人と対峙するたび心が高揚した。他の誰と対峙しても感じなかった感覚。あの人だけが特別だった…。

そう、特別だった。一年戦争当時、ニュータイプとして覚醒した自分をララァと同じように肯定してくれた唯一の存在。
仲間達ですら自分を…この能力を持て余していた。ただ、自分たちが生き残る為には必要だったから認めてくれていただけだ。
だからこそ、あの人に「同志になれ」と言われた時、自分自身を能力ごと受け入れてくれるシャアに驚いた。
立場が違えばあの手を取っていたかもしれない。
いや、あの時あの手を取っていれば…もしかしたら、こんな結末にはならなかったかもしれない…。
アムロの瞳から涙が一筋零れる。

分かっていた。
ライバルという存在であり、それ以上に唯一自分が心の底から求めた存在。
だからこそグリプス戦役時、同志として共に戦った時…ダカールでの作戦の後、一度だけ肌を重ねた。
作戦の成功による興奮や酒の勢いもあったかもしれない。けれどあの時、それが当然のように互いを求めた。
その後、姿を消したシャアが地球連邦政府に…アースノイドに見切りをつけ、別の方法で何か大きな事を成そうとしているのだと気付いた。
クワトロ・バジーナとして戦っている時、彼は迷いを抱えていた。エゥーゴでは何も成し遂げられないと気付いていたから。
そのシャアが何かを決意し立ち上がろうとしているのだ、彼ならばどんな恐ろしい事も成し遂げるだろう。それで自分が傷付くとしても…。

…そんなあの人を止めたかった。
だからこそ怖くて仕方のなかった宇宙に上がってあの人を探し続けた。
結局は間に合わず、あんなに形で終わる事になってしまったが…。

アムロは右腕を持ち上げ、その手を見つめる。