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ソラから降りてくるLoneliness 2

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この手が…あの人の胸に剣を突き刺した。
それでしかあの人を救えないと…あの人自身がそれを望んでいると分かっていたから…。
それでも…それでも本当は…殺したくなどなかった。
出来る事ならばあの人と共に歩みたかった…。
そうだ…自分はあの人と共に生きたかった…。
今更ながら自分の本心に気付き、呆然とする。
「は…ははは…俺は…本当にバカだな…」
アムロの頬をいく筋もの涙が伝う。
「俺も…あの人と一緒に逝けば良かった…」
「何馬鹿なこと言ってるの!!」
突然、頭の上から声が降ってくる。
「え?」
視線を向けると、そのエメラルドグリーンの瞳に涙を一杯に溜めたベルトーチカがこちらを見下ろしていた。
「ベル…?」
「馬鹿!!」
そう叫びながら頭を抱き締められた。
「ベル…」
「アムロの馬鹿!」
泣きじゃくるベルトーチカの髪を見つめ、「あの人と同じ色だな」などと思う自分に呆れる。
そして、顔を上げたベルトーチカのグリーンの瞳を見つめ、あの人の瞳は空の色だったけれど、これは大地のグリーンだなと呑気に思う。
その瞳からはポロポロと涙が溢れ出す。
「綺麗だな…」
涙ってこんなに綺麗なものだったっけと思い、思わず口に出す。
「馬鹿ぁ!!」
縋り付くベルトーチカから自分を心配する心と愛おしむ心が伝わってくる。
それはとても暖かくて、冷え切った心を温めてくれる様だった…。
その時、ララァの言葉が脳裏に蘇る。
『アムロ…貴方なら生きていけるわ…』
『ふふふ、アムロとはまたいつでも遊べるから…今は貴方を抱きしめてくれる女性(ひと)のところへお帰りなさい。きっと待っているわ。坊やもそれを望んでる』
アムロは自由になる右腕で、そっとベルトーチカの背中を抱き締める。
「ベル…」
「…アムロ?」
「ごめん…。ただいま…」
顔を上げたベルトーチカの、涙でくしゃくしゃになった顔を見つめて微笑む。
「アムロ!!」
ベルトーチカの瞳からは更に涙が溢れ出し、キラキラと輝いている。
『僕には帰れるところがある』
一年戦争の時にも思った事。
あの時は結局みんなと引き離されて研究所に送り込まれて散々だったけれど、今度は違う。
ベルトーチカと、子供が待っていてくれた。
「僕には…帰れるところがある…」
アムロはベルトーチカの頬に手を添えて微笑む。
すると、ベルトーチカの中から子供の笑い声が聞こえてくる。
「ふふふ、俺たちの子供が笑ってる…」
「アムロ…」
二人はどちらともなく頬を寄せ合い、唇を重ねる。

『そうだね。ララァ。僕には帰れるところがある…待っていてくれる人がいるんだ。君にはいつでも会いに行けるから…今は…彼女と子供と生きていきたい…。シャアも…許してくれよな…』


「ベル、結婚しようか?」


end



◇◇◇


ベビーベッドの中で、赤ん坊がキャッキャと笑っている。
手を上げて、まるで誰かに手を振る様に…。

「ふふ、あの子ってば、しょっちゅうああやって天井を見上げて笑っているのよ」
ベルトーチカがフラウと笑いながらお茶をしている。
「赤ちゃんって、そういうのよくあるのよ」
フラウも今年8歳になったハヤトとの子供を見ながら微笑む。
「もしかしたらハヤトがそこにいるんじゃないかしらっ?て、よく思ったわ」
「ええ!じゃあうちの子のトコには誰が来ているのかしら?」
楽しげに話す二人を見ながら、アムロは赤ん坊が見上げる先に視線を向けて溜め息を吐く。

『大佐!ほら!こっちを見て笑ったわ。この子の金髪はまるで大佐の髪の色みたいですね』
『ふふふ、この琥珀色の瞳はアムロ譲りだな』
『そうですね!ちょっと垂れてるところもそっくり!可愛いわ!』

『うちの子のところに来てるのは“ネオ・ジオンの元総帥”と“元ジオン兵”の女性です』
アムロは二人をジト目で見ながら溜め息を吐く。
『それから髪の色はシャアじゃなくてベルトーチカの色です!』
心の中でツッコミを入れながら、赤ん坊を前にはしゃぐ二人を見つめる。
『アムロ!次は赤茶色の癖毛の女の子がいいな!』
『ウチの家族計画に口を出すな!』
こちらに視線を向けながら嬉しそうに語りかける“元ネオ・ジオンの総帥”に文句を言いながらも少し笑みが零れる。

こんな展開になるとは思っても見なかったが、まぁこれも悪くないかな…と思うアムロだった。


end