二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

第1章・10話『異変は、晴れ間と共に』

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 
東方星写怪異録 第1章・10話


―紅魔館―屋上―
魔理沙「──ぃ……おい、しとね……大丈夫か!?」
しとね「────魔理沙?うん、大丈……っ」
魔理沙に体を揺さぶられ、しとねは返答するが首筋の痛みに苦悶の表情で首に手をかざす。
咲夜「……失礼するわよ」
しとねの手を掴んだ咲夜は、首筋の噛まれた傷跡を見て。
咲夜「……お嬢様と妹様、どちらに吸われたの?」
しとね「フランちゃんの方、ですね」
そう返答すると咲夜は何処にあったのか救急箱を取り出し、手早く噛まれた傷跡に包帯を巻き、隠していく。
咲夜「立てる?」
しとね「は、はい……大丈夫です」
立ち上がろうとしていたしとねは、空でぶつかり合い発生した衝撃波にバランスを崩す。
咲夜は無言でしとねを支え、空を見上げる。
魔理沙「パチュリー、お前の魔法であの姉妹喧嘩止められないか?」
パチュリー「無理よ、レミィの中に入り込んでる暴食は吸血鬼では無いし……フランはそこの子の血を吸ってるんでしょ、なら……いつもの様にしても動きが鈍るだけよ」
魔理沙「決着がつくまで見てるしかないって事か」
魔理沙は兎擬きでパチュリーと通信をしながら、空を見ていた。
姉妹は捉えられない程の速度でぶつかり合い、それにより時折衝撃波を発生させる。
魔理沙「しとね、チルノと戦った時みたいな事は出来ないのか?」
しとね「あれは私じゃなくてジンの能力ですし、私では……」
咲夜「せめてお嬢様の意識を表に出せれば」
魔理沙「どうやってだよ、近づけもしないんだぜ?」
咲夜と魔理沙が打つ手無しと言った感じで黙り込む、パチュリーも考え込んでいいるのか先程から喋っていなかった。

しとね「(ジン……頼みたい事があるんだけど)」
ジン「(……お前の考えはこっちにも分かっている、が……推奨は出来んぞ下手をすれば────)」
しとね「(分かってる、だからって何もしないのは嫌だから)」
ジン「(好きにしろ……我は痛覚の遮断か?)」
ジンは素っ気なくも協力してくれる様で、しとねは微笑みながら。
しとね「(ジン……ありがとう)」

しとね「一つだけ、手立てがあります」
しとねの言葉に咲夜と魔理沙が振り返る。
魔理沙「自滅覚悟の特攻とかなら反対だぞ、しとね」
咲夜「賛成するかは、この子の策を聞いてからでも遅くはないわよ魔理沙」
咲夜が魔理沙を諭しながらしとねへ発言を促す様に手を出す。
しとね「私だけでは無理なので、咲夜さんと魔理沙の能力とパチュリーさんの魔法が要るんです────」
しとねの言葉に咲夜と魔理沙は互いの顔を見合わせる。


―紅魔館―上空―
フラン「っ、禁忌『レーヴァテイン』!!」
レミリア(暴食)「……神槍『スピア・ザ・グングニル』」
お互いのスペルがぶつかり合い、相殺しながら周囲の空気をビリビリと震わせる。
レミリア(暴食)「っはぁぁ!」
ガキィィィィィンっと音がし、フランの手からレーヴァテインが弾かれる。
レミリア(暴食)「ぅらぁっ!!」
フラン「ぐっ……あぁ!」
一瞬の隙をつくように暴食はフランのお腹を蹴り飛ばす。
暴食は開いた距離を詰め、フランへグングニルを突き刺す……
ドスっと刺さる音がし、グングニルは────フランでは無く、2人の間に割り込んでいたしとねの手に刺さっていた。
レミリア(暴食)「……なっ!?」
しとね「……」
動揺した一瞬を逃さず、しとねは反対の手でグングニルを持つ暴食の手首を掴みながら刺さっていた方の手を引き抜く。
グングニルが抜けたせいで傷口から血が流れ始めるが、しとねは構う素振りも見せず自らの血に塗れた指で暴食の唇をなぞる様に血を塗る。
レミリア(暴食)「……っ!!」
暴食は空いてる手の爪でしとねの首を切り裂く様に振る。
────がしとねは先程割り込んで来た時と同じで一瞬の内に暴食から距離を取っていた。
レミリア(暴食)「……どういうつもりだ、龍の神凪」
しとね「さあ?」
暴食の問いにただ笑みを浮かべるしとね。
その態度が気に食わず、暴食はしとねを睨み付ける────
レミリア(暴食)「う、ぐっ……ぐあ、あああ!!」
瞬間、体の内側から込み上げる衝動に駆られ暴食は思わず叫び声を上げていた。
その衝動を振り払うかの様にその場で暴れていた暴食だが、俯きその動きが止まり、その背からゴブリンの様な姿が弾き出される。
しとねは気を失っているレミリアを抱き寄せ、ブツブツと呟くゴブリンへ視線を向ける。
暴食「くっ……吸血衝動がこれ程とは」
しとね「それが、貴方本来の姿ですか……暴食」
暴食はゆっくりと視線をしとねへ向け、その顔を醜く歪めながら笑う。
暴食「そう……そうだ、こんな回りくどい方法を取らなくても、貴様を最初から乗っ取れば良かったのだ」
ケハハハと壊れた様に笑いながら暴食はしとねへ近づいていく。
魔理沙「今だっ、咲夜!」
魔理沙の声に暴食が振り向こうとし、視線をしとねから外す。
咲夜「幻符「殺人ドール」!」
咲夜の言葉で無防備な暴食の周りを円球に敷き詰められたナイフが取り囲む。
咲夜「お嬢様の体を乗っ取った罪は、その命でも済まないわ……死になさい」
その瞬間、敷き詰められたナイフが続々と暴食の体へ突き刺さっていく。
魔理沙「よし、パチュリー!」
パチュリー「全く、無茶苦茶な策ね……符の壱「セントエルモエクスプロージョン」」
いつの間にか屋上へ来ていたパチュリーが愚痴をこぼしながら魔導書を掲げる。
すると動けない暴食の真下に魔法陣が出来、暴食を巻き込む様に圧縮爆発が起こる。
暴食「……う、が、あ、ああ」
しとね「……」
空を飛ぶ事も出来ず、屋上へ落ちて体中を燻らせながらも暴食はしとねへ近付こうと手を伸ばす。
しとね「……フランちゃん、レミリアさんをお願い出来る?」
フラン「う、うん……いいけど、しとねは?」
フランの問いにしとねは微笑み、頭を撫でながら答える。
しとね「大丈夫、ちゃんと帰りますから」
そう言い、しとねは振り返ると暴食の前に降り立つ。
暴食「────────!!」
暴食が声にならない声で何かを叫ぶ、すると暴食の手に斧が出現し振りかぶる。
だが、斧の重さに暴食の炭になった手が壊れ斧が地面に突き刺さる。
しとねはその斧を両手に持ち、暴食へ向けて振りかぶる。
しとね「死する事なき理に縛られし魂よ……今を持ってその鎖を断ち切らん」
そう言うとしとねは、斧を振り下ろし暴食を両断する。
両断された暴食はゆっくりと後ろに倒れ、その体を赤黒い煙に変えてゆく。
暴食はが煙となって消えてゆくにつれ、紅霧も晴れていく。
魔理沙「霧が晴れてく、異変……終わったんだな」
パチュリー「これで終わてなかったなら、私は本当に書物庫から出ないわ」
パチュリーの言葉に怪訝そうな顔をする魔理沙。

レミリア「────う、あ?」
咲夜「お嬢様、お加減は如何ですか?」
レミリアが目を覚まし、日傘を差し影を作りながら咲夜は優しく問い掛ける。
レミリア「咲夜、迷惑を掛けたわね……」
咲夜「いえ、私がお嬢様の違和感に確信を────」
レミリアは咲夜の唇を指で塞ぎ、喋るのを中断させる。
レミリア「今回は私も反省しないといけないわ、お互い様よ……貴女も無事で良かったわ」