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逆行物語 裏六部 ~それぞれの時間~

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カッシーク~上位者の道標~



 昔から、自分に都合良くしか考えられない子だった。テレージアはそれを危惧していた。
「カッシーク、ヨナサーラを第二夫人としたのは何故だ?」
 昔の記憶が甦った私に、ヴィルフリート様が話し掛けて来られた。
「コンラートを跡継ぎにする為でございます。」
 私ははっきりと答えた。
「ヨナサーラを第一夫人とすれば、ヨナサーラとの子を求められます。コンラートの芽を遺してやりたかったのです。只…、その為に、ヨナサーラには不遇の身を押し付けてしまう事が申し訳無いと思っております。」
 本来、第二夫人は使用人ではない。我々下級貴族には良くある話ではあるが、その様な真似をする家は中級からまず相手をされなくなる。増しては目の前に居るのは、更に下級の事情等、体験する事の無い領主候補生。目先さえ何ともならず、その方法に手を染めざる得ない等、下手な言い訳にしか聞こえぬだろう。
「そうか…。」
 ヴィルフリート様がフッと柔らかな笑みを浮かべた。
「カッシーク。」
 その笑みを問う前に、黙ったままだったフェルディナンド様が、私に声を掛けられた。
「それならば、1つ知恵を授けよう。ヨナサーラとコンラート、2人を尊重する知恵だ。」
「それは…?」
 私はフェルディナンド様を見詰めた。
「簡単だ。亡きテレージアと婚姻関係を終了させ、ヨナサーラを第一夫人にするのだ。フィリーネとコンラートの後見人は私が努める。
 1度家を潰し、コンラートが成人すればテレージアの家を復興させれば、彼が当主だ。
 まずはフィリーネとコンラートは、青色になる事を考えて貰わねばならぬが…。勿論、必要な費用は此方が持つ。
 だが了承して貰えれば、カッシークの家はヨナサーラを第一夫人に迎え入れる事が出来る。其方等は家の管理の名目で住み、コンラートが成人する際、管理の礼で適当な家を与えよう。」
 信じ難いくらい、良い話だ。しかし…、一体何故、そこまで? 
「カッシーク。私はフィリーネがどうしても欲しいのです。」
 ローゼマイン様がそう言われた。
「これは私の我が儘です。もしかすれば妬みや嫉みがあるかも知れません。そのせいで辛い想いをする事も有り得ます。それが解っていても、私はフィリーネに側に居て欲しいのです。
 ですからカッシーク、この家の憂いも取り除きたいのです。勝手をする御詫びに、貴方達には下級貴族への執務依頼を優先的に回しましょう。」
 正直な話、上位からの命令にも等しい面はあった。故に断れなかったのは確かだ。
 贔屓される事で厄介な事も起こり得るだろうと思えば、憂鬱な気持ちもあった。
 しかしそれらは直ぐに吹き飛ばされた。後にして思えば、グリュックリテートの試練が終わりを告げた瞬間だった。

 その日、最後にローゼマイン様がフィリーネに仰られた。
「フィリーネ、忘れないで。中継ぎは資格が無い者がなるのではないわ。資格があれど、様々な事情から継げなかった者が、急遽、継ぐ事になって、それが本来の跡継ぎ予定の者が、成人するまでと、期間をハッキリと区切られるから中継ぎなのです。
 洗礼前の子は存在しない。ならばカッシークは中継ぎでもない。例え実態が中継ぎだったとしても、上位からの命令が無い以上、跡継ぎを決めるのは当主であるカッシーク。中継ぎは只の代理では無いの。」
 と。深まりつつあった溝が埋まっていく瞬間が分かった。

 その後、フィリーネはダームエル様の第二夫人となり(ダームエルはイルクナー分家の婿入り当主)、ヨナサーラに対する己の無礼を学ぶ事になった様だ。

続く