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テイルズオブジアビス 星の願いが宿る歌

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 ルークの言葉を聞いても、父は眉1つ動かさず、母は穏やかな微笑みを称えたまま、ハーブティーの温もりを楽しんでいる。それを見て、続きを話して良いのだと判断した。
「ナタリアと結婚して、この国の王になるのは俺じゃない。アッシュです。だから俺、アッシュを取り戻したいんです」
「取り戻す?」
 クリムゾンが聞き返す。ルークは頷き、また続ける。
「理由はわからないけど、突然アッシュは“ここ”から消えました。でも、必ずどこかで生きてる気がするんです。根拠があるわけじゃない、でもそう感じるんです」
 胸元を左手で握りしめ訴えるルークの言葉を、両親は静かに聞いている。
「だから、俺にアッシュを探しに行かせてください。ナタリアを助ける方法も一緒に探します。手がかりもほとんど無いような状態ですけど、何もせずにただここでナタリアの目が覚めるのを待ってるなんて、俺にはできない」
 お願いします、とルークは頭を下げる。暫しの沈黙の後、カチャリと食器が鳴る音がした。
「彼が戻ったら、またあなたがいなくなってしまう、ということはないのですね?」
 ギクリと肩が揺れる。その可能性を、ルークも考えていないわけではなかった。
「…たとえ、そうでも」
「駄目です」
「!」
 顔を上げてシュザンヌの顔を見ると、先程までの優しい微笑みは消え、ルークを真っ直ぐ見つめていた。
「あなたと、アッシュ。二人がまた揃って私たちに顔を見せてくれると約束してください。でなければ、私は許しません」
「あ……」
 ルークが、自分を犠牲にしてでもアッシュを取り戻そうと考えていたことも母には既に見透かされていた。
「ふたりとも私たちの大切な息子。もう、どちらも失いたくないのです」
 自分もアッシュも揃って再び帰る。それが叶うと、すぐに答えられない後ろめたさから目を伏せる。しかし、ここで諦めたらきっと本当に叶わない。ならば。
「…わかりました」
 シュザンヌとクリムゾン。両親の顔を見つめて、はっきり口にする。
「俺とアッシュ、ふたりで帰ってこれるようにします。絶対、見つけて帰ってきます」
 本当は、アッシュが見つからなければその時は自分がナタリアと結婚して国王になる、と話すつもりだった。だが、これは今は言わなくていい事だ。絶対ふたりで帰ると誓ったのだから、帰れなかった時の話をする必要はない。
「だから、ナタリアが目を覚ますまでの間、俺に旅をする許可をください」
 再び頭を下げる。今度は、それほど間もなく返事があった。
「好きになさい」
 答えたのはクリムゾンだった。それを聞いてルークはぱっと顔を上げる。
「お前はもう大人だ。いつまでも親の顔色を窺う必要はないのだぞ」
 言われて気づく。そういえば、一応成人の儀も済ませたことになっているのだった。眠っていた時間も長ければ、そもそも生きてきた時間も短い自分にとって、それはあまり現実味のない事だった。
「…だが」
 クリムゾンがハーブティーを口にして、ふうと一息ついた後、
「話してくれたことは嬉しかった」
 何も言わずに出ていってもおかしくないと思っていたからな、と言った父の表情はとても穏やかだった。それを見ていたシュザンヌもにっこりと笑ってルークに顔を向ける。
「危ないことだけはないように。たとえ大人になっても、私たちにとって可愛い息子であることはずっと変わらないのですから」
 膝の上に乗ったルークの手に、シュザンヌの手のひらが重なる。それは一瞬で、またすぐ離れてしまった。
「ありがとうございます。父上、母上」
 母は頷き、父はまたティーカップに口をつける。それに倣うようにルークもまたハーブティーを口にする。慣れのためか一口目よりも幾分飲みやすいし、過去の記憶を手繰ればもっと独特な飲み物はいくらでもあったが、
「…やっぱり、美味しいものではないですね」
 ずず、とまた啜っていると
「うふふふ…」
「やはりまだまだ子供だな」
 母は眉尻を下げて笑い、父は呆れたように頭を振りながら、やはり笑っていた。