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梅嶺小噺 1

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藺「呆れた奴だな。猪退治だけじゃなくて、別の騒ぎも起こしていたのか?。、、まったく、、この男は、、。」
長蘇を見る藺晨の顔は、明らかに呆れていた。
蘇「ほっとけ、、、昔の話だ。」
長蘇は、ぷいっと何処かを向いた。機嫌が悪くなった様だ。
蒙「いやいや、小殊だって、いつも理由も無く騒がせたりはしない。それなりの理由があったのだ。」
藺「はぁ〜〜ん、、理由がなぁ、、、。」
藺晨は怪訝な眼(マナコ)で、長蘇を見ていたが、長蘇は何処かを向いたまま、無視をしていた。
藺「長蘇の昔の話は、事欠かないくらいあるのだろう?。」
蒙「元気な子供だったのだ。力を持て余していたのだろう。悪さばかりでは無い。皆、元気な小殊が、好きだったのだ。」
藺「、、、そんなに力が余ってたのか?。今の姿からは考えられぬな。怪童なんぞ、嘘っぱちだと思っていたのだ。」
蒙「いやいや、数々、伝説を残してるぞ。、、、うむ、そうだな、、例えばだな、、、。」
長蘇が、眉をひそめて蒙摯を見るが、蒙摯は長蘇の視線には気づかなかった。
藺「、、、、蒙摯、ここは暑いだろう?。他所で話さぬか?。ここに長く居ると、汗をかいて風邪を引きかねん。主帥に寝込まれたら、大変な事になる。」
確かに蒙摯は、じわりとと所ではなく、汗ばんでいたのだ。
蒙「、、確かに、、、少し暑い、、、かな?。」
戦「そうですね、蘇先生もお休みになりませんと。」
藺「何処かに話す場所くらい有るだろう。ほら、行こう。病人は休まねばならぬのだ。さあさあ、行くぞ。」
藺晨が先立って部屋を出ていき、蒙摯と戦英も後に続いた。

「蒙哥哥、、。」
長蘇が呼び止めた。
「ん?。」
蒙摯が振り返る。
長蘇は心配気な顔をして、僅かに首を振って合図をしている。
「分かってる、小殊、ゆっくり休め。
、、、大丈夫だ、作り事など言わぬ、心配するな。」
そう言って、蒙摯は長蘇に片目を瞑る。
そして、三人揃って部屋を出ていった。

───そんな事を言いたいのでは無いのだ。蒙哥哥は、嘘など言わぬ。
、、、、、、だから、嫌なのだよ。
蒙哥哥の口から出る言葉は、皆、本当の事なのだから、、、、。───
何の話をする気だろう、、、。
心配しても仕方ないが、、、一体何を話すのか、、。
身に覚えがありすぎて、蒙摯が話しそうな内容を、長蘇は絞りきれなかった。


飛流がじっと部屋の扉を見ていた。
いつまでも見ていた。
「行きたいか?、飛流?。」
───一緒に、蒙哥哥の話を聞きたいのか?。───
「うん。」
ぱっと、長蘇の方を向いた、飛流の顔は明るい。
「駄目だ。ここに居ろ、飛流。」
飛流は、ぶすっとムクれた表情に変わる。
ずかずかと長蘇の側に来る。
さっきまで蒙摯が座っていた椅子に腰を下ろし、長蘇の寝台に肘をつき、腕を組んでその上に頭を乗せた。
唇を尖らせて、明らかに不満そうだ。
そんな表情も飛流らしくて可愛らしい。
飛流は心を偽らぬ。
───そんなにむくれるな。───
長蘇が飛流の頭を撫でてやるが、飛流は、チラリと背後になっている、扉に目をやるのだ。
───、、、、、、、。
私がこの子に、大人気なく意地悪をしているように、見えるではないか。───

「、、、、、、良い。、、行っても良いぞ。」
ぱっと頭を上げた、飛流の表情はまた、明るくなった。
そのまま立ち上がって小走りに扉に向かう。
───、、、負けた、、、。───

「飛流!。何の話か、しっかり聞いてこいよ。」
「うん。」
扉の所で返事をした飛流は、満面の笑顔だった。
「何か一枚羽織っていけ。扉の向こうは寒いぞ。」
飛流は、この部屋に入った時に脱いだ、綿入りの上着を持って、扉に向かった。
そして、思い切り扉をあけ、その向こうへ消えていった。


「ふふ、、行ってしまった、、。」
藺晨は、長蘇を眠らせようと、他所に行ったのか、それとも長蘇の弱みを握りたくて、蒙摯の話をゆっくり聞こうと思ったのか、、、真意はどこにあるのか分からない。
飛流もまた、長蘇の過去に興味があるのか。
どこまでちゃんと聞いてくるのか、当てにはならないが。


藺晨は、薬には眠くなる薬剤が、入っていると言っていた。
───そんなものを飲んでも、どうせ眠れないのだ。───
梅嶺に入ってからは、長蘇の神経は研ぎ澄まされ、深く眠れた夜は無かった。
蒙摯や戦英も、梅嶺での戦い方を理解してきた様だった。
───私が前線に行かずとも、次は二人で対応出来るだろう。
配下の将軍達も、作戦の本質を見抜いて、よく動いてくれる。
ほぼ、思惑通りに戦さが進んでいる。───

そして。
───藺晨の言う事も、分かるのだ。
だが、言う通りには出来ぬ。
、、、、刻(トキ)が、、、、刻が無いのだ。

、、、、、思い通りにする為に、蒙摯に話を聞き出すのか?。
弱味なんか無いぞ。
例え有っても、藺晨なんかあっさり論破できる、、、。───

思いは巡り、心の隅から、忘れていた昔の事が湧いてくる。

───色々と、思い出してしまった、、、、、。

、、、、、アイツらのせいだ。───




殊更、

苦くて酸っぱくて、何処か甘いものが、
長蘇の胸の中に、
、、、、一雫だけ流れていった、、、




そんな感覚だった。


───余計な記憶が浮かんでしまう、、、。
正しく物事を見る事が出来ない。
どれだけ考え巡らせても、、、、今日は、、無駄だ。
、、藺晨の言う通り、今は眠った方が良いかも知れぬ、、、。───

藺晨が作った冰続丹。
いずれ、無理がくるだろうと思ってはいた。
だが、その症状は、長蘇の予見とは違っていた。
きっと沢山飲み重ねて、自分の心臓が止まってしまうのだろうと思っていた。
それで良いと思っていたのだが、、。
だから、急いでいた。。

───まさか、薬が効き難くくなるとは、、、。
まだ、今回は効いている。時間はかかったが、効果は現れた。
飲んで効果が出るのは、あとどれ程だろうか、、、。

冰続丹の結果が違おうと、私の成すべきことは変わらぬのだ。
私が死んでも、私にはまだやれる事がある。
その道筋をつけていかねば、、、。
結末を、確かなものにする為に、、、、。───
蒙摯の話同様、幾ら考えてもその時がいつなのかは、分からぬ事だった。

蒙摯が来る前に、藺晨の薬を飲んだ。
薬が、効いてきたようで、眠気が強くなる。
背中に当てた、枕を一つずらして、床に横になる。

柔らかな、春風に包まれるようで、心地良い、、。
ずっと、眠りが足りないのは、長蘇も分かっていた。


───このまま、素直に、眠れるだろうか、、。───
林殊の記憶が甦る。


───
、、、、、、、、、、、


、、あいつら、、、覚えてろよ。
、、、、絶対、、、、、、、

───


長蘇は、微睡み(マドロミ)の中に落ちていった。



───────────糸冬───────────
作品名:梅嶺小噺 1 作家名:古槍ノ標