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子供の本分

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その日キラーTが必要な書類を届けに司令部に行くと、ヘルパーTの姿はなかった。
ただ、代わりに司令の席には子供が座っていた。
見た目はやや血小板よりは上くらいで、ヘルパーT細胞の制服にほぼ似たデザインの服に、下は違って太もの出ている半ズボンに、黒い靴下(ソックスガーター付き)。誰かさんみたいに細くて淡い色の髪に、黒縁の眼鏡。
キラーTが来た時も顔も上げないで、熱心に何かの資料らしき紙の束を見ている。

誰だこいつ。と思ったが、キラーTはとりあえず先に用事を済ませることを優先した。
「制御性T、あいついねえのか」
言いながら持ってきた書類を制御性Tに渡す。
「目の前にいらっしゃいますよ、司令」
「何だそりゃ。つかよお、このガキ何だ。何の細胞だ?」
「ですから彼がヘルパーT司令です」
「なるほどどうりでどっかで見た面だと……うええええええ!?」
「いいリアクションですね」

制御性Tの話はこうだ。一昨日の朝、司令部に出勤してきた職員達が見たものは、子供の姿になった上司であるヘルパーT細胞だったと。
「…って信じられるか!!」
「私は冗談は嗜みませんし、事実以外申し上げられません」
確かに先日あの命がけの場面での細包ジョーク以外で、彼女が冗談をいう場面など一度も見たことがない。
「じゃあマジなのかよ…お前、本当にヘルパーTか…」
子供は答えないで、キラーTを警戒したような目で見ていたが、隣の制御性Tに話しかけた。
「制御性Tさん…」
「ああ、司令、彼はキラーT部隊の部隊長で、」
「おい制御性T、どういうこった。こいつ俺のこと分かんねーのか?」
「どうやら彼には一昨日以前の記憶があまりなく、特に個人的な来歴に関する記憶が曖昧なようです。自分でここへやって来たように、ヘルパーT細胞である、という自覚はあるようですが」

キラーTはちょこんと椅子に収まっている子供をまじまじ見た。
「なあ今の状態でウイルスだのなんだの来たらどうすんだ。まずいんじゃねえか」
「見た目は子供ですけれど、彼は未熟胸腺細胞でもなく、ちゃんとしたヘルパーT細胞です。問題ありません」
子供、もといヘルパーTは小さな手で、今度は渡された書類をパラパラとめくっている。
「いやいやいや大丈夫なのかよ。こんなガキに司令の仕事が出来んのか?」
「彼がヘルパーT細胞であることが最も重要なのです。ヘルパーT細胞でなければ免疫細胞に命令は下せません。作戦の決定に関しては私達司令部でサポートします」
何だか釈然としないが、言う通り最善はそれしかあるまい。
制御性TがヘルパーTに声をかけた。
「ヘルパーT司令。少し休憩なさいませんか。向こうでお茶をいれます」
「ありがとう。制御性Tさん」
さすがに制御性Tも子供相手だとどこか口調が優しい。それにしても礼儀正しいヘルパーTとは違和感だ。

ヘルパーTは足が届いていない椅子から飛び降りて、とことことキラーTに近付くと、背伸びをしてさっき見ていた書類を腹に押し付けた。
「きみ、書類にまちがいが三か所あるよ。ぼくがもどってくるまでに直しておいてくれたまえ」
「お、おう…?」
ヘルパーTは周りの職員にも声をかけて仕事の進行具合をたずねたり、指示を出したりしている。
あの男が真面目に仕事をしている……。
この姿になったのは一昨日からだそうだが、司令部の人間はもうすっかり慣れているようだった。その上話しかけられると皆もれなくほんわかした表情になっている。
作品名:子供の本分 作家名:あお