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子供の本分

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用事は済んだが、ヘルパーTが気になってすぐに帰る気になれず、女性職員にはひときわ人気らしく、楽しそうな彼女達に囲まれている彼を少し離れて見ていると、
「あなたもどうぞ」
制御性Tが茶の入ったカップを渡してきた。
「なあ、あいつずっとこのままなのか」
最初の衝撃が去ると、急に不安になって来て、制御性Tにたずねた。今のヘルパーTはキラーTである自分のことも覚えていないし、見た目の幼さとアンバランスな、真面目な性格で表情があまり変わらない部分は胸腺学校時代に戻ったかのようだ。
もしずっとこのままだとしたら。

「実を言うと過去に同様の事例があります。記憶細胞によると、この体のヘルパーT細胞では代々このような現象が確認されているらしいのです。遺伝子異常なのか、他に原因があるのかは分かりません。しかしその場合数日、長くても一週間程度で元に戻ります。後遺症もみられません。もちろん今回の事態も同じ経過をたどるという100パーセントの保証はありませんが…」
「な、何だ。そうなのかよ」
ひとまずほっと胸をなで下ろす。
元に戻るんならあいつしばらくはこのままでいいかもな、大人しいし、仕事も真面目だしと思っていると、丁度こっちを見たヘルパーTと目が合った。よおといつもの調子で笑いかけると、ふいっと顔をそらされた。
(愛想はねえな…)

「しっかし、数日で戻るんだろ?わざわざ制服作ったのかよ」
「他部署の子供用の制服ですよ。少し手は加えましたけど」
「半ズボンとかよーお前の趣味なんじゃねーの」
「何のことですか」
何気なく言った言葉だったが、無表情な中にほんのわずかにぴくりと目元が動いたのを、珍しくキラーTは見逃さなかった。
「お前、浮いた噂ひとつないと思ったら稚児さん趣味かよ」
「意味が分かりません」
制御性Tは表情も変えず、ため息をついて、付き合ってられませんねとその場を離れた。

長年の付き合いでも彼女に口で勝つ(と言えるものなのかどうかは分からないが)のはおそらく初めてだ。キラーTが機嫌良くしていると、ヘルパーTが女性職員達から離れてこっちにやって来た。目の前に立って、キラーTの顔を見上げる。
「ん?どうした?」
改めてこのヘルパーTを見てみると、年齢的には幼年学校で初めて会った時よりも、ずっと幼い。
出会う前の顔はきっとこういう顔だったんだなとそんなことを思う。
子供同士でいた時は、むかつくだけで思いもしなかったが、手足の小さな子供特有の丸いライン、幼くても分かる整った顔で、大きい目が愛らしく、上目使いにこちらを見るのは確かにかわいく…なくもない。
うっかり相手に合わせて腰をかがめてしまった上、無自覚にホノボノした顔になっていた。今なら司令部の連中の気持ちが分かる。
ヘルパーTが口を開く。
「さっきからきみうるさいな。くだらないことを話さないよう、少し口をとじていたらどうだ」
うん、この喋り方、子供時代を彷彿とさせる。
前言撤回だ。

か わ い く な い

「いったああー…っ!なにするんだよ!」
デコピンされた額を両手で押さえて、ヘルパーTが涙目になって睨みつける。
「うっせえ教育的指導だ!大人に対する態度ってもんを教えてやる!」
「きみこそ上官にたいする態度がなってないぞ!キラーT細胞はみんなこうか!」
「あんだと!」
向かってこようとするヘルパーTの頭を手で上から押さえていると、がしっと横から掴まれた。
「乱暴はやめて頂けますか、キラーT」
いつのまにやら戻ってきていた制御性Tが、腕を掴んでいる。
「お前な、いつものこいつだったらぜってー助けねえだろ…」
「そんなことはありません」
掴まれた腕がみしっと音を立てた。
「ちっ、わあったよ」
せめてもにと最後にぐしゃぐしゃっとヘルパーTの頭をかき回してやった。
「っ、きみ大人のくせに大人げないぞ!?ばかか!」
「へん、クソガキにはいーんだよ」
「あなた達いい加減にして下さい」

結局制御性TがヘルパーTを引き離してその場はお仕舞いになって――抱きかかえる時の制御性Tがちょっと嬉しそうだったのは、誰も気が付かなかっただろう――キラーTも司令部を後にした。
部隊の詰め所に戻る帰り道、思い出の方の顔が浮かんで、仕方ねえからあと何日間か、クソ生意気なガキのあいつに付き合ってやるかとキラーTはひとりごちた。
作品名:子供の本分 作家名:あお