二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

第2章・1話『帰還と出会い』

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 
東方星写怪異録 第2章・1話


―篝宮市―篝宮展望公園―
スキマから出て来たしとねは夜がふけ、薄暗い公園を見渡しながら。
しとね「帰って来たんだ」
そう言いしとねは空を見上げる。
空に出来た星はしとねが去る前と、幻想郷にも出来ていたものと比べると明らかに大きくなっていた。
ジン「呑気に空を見ている暇はないぞ」
しとね「うん?」
ジンの言葉にしとねが振り返って見たのは、黒い泥で出来た様な人形だった。
その泥人形に手は無く、足と呼べるものが1本だけ地面にへばりつく様に伸びており、顔と思しき場所には縦に1つだけ眼が見開かれていた。
その泥人形はユラユラと横に揺れながらこちらへゆったりと迫ってくる。
しとね「悠遠の書、大丈夫だから雪の所に」
『────では、ご武運を』
そう文字を浮かばせ、しとねが頷くと悠遠の書は持ち主の元へと消える。
しとね「……さてっと」
悠遠の書を見送ったしとねは改めて泥人形の方へ向く。
すると泥人形はその躯を左右に強めに揺さぶり、辺りにベチャベチャと躯の泥を飛び散らせる。
飛び散った泥は数ヶ所で寄り集まり同じ泥人形を象る。
ジン「空の星からの影響が……ある訳では無い様だな」
しとね「そう……」
ジンの言葉に端的に返し、しとねは目を閉じ足を開き前にかがみこんで手を地面につく。
そして、開かれたしとねの目には一切の光を通さないかの様に深く、暗く濁る。
1番近かった泥人形がしとねに覆い被さる様に襲い掛かる────
しとねが音も無く消えると同時……ヒュっと空を切る音がし、泥人形の頭が地面に落ちて溶けるように消える。
一瞬で泥人形達の背後に移動していたしとねの手には、1本の折り畳み式のナイフが握られていた。
しとね「……次、どれ?」
横目で泥人形達を見ながら、しとねは冷たく言い放つ。
泥人形の一体が仰け反り、棘の様に変えた泥をしとねへ飛ばす。
屈んで棘を避けたしとねは同時にナイフを泥の頭へ向けて投げつけ、別の泥人形へ向き走りだす。
ドスっと泥人形の頭にナイフが刺さり、後ろへ仰け反りながら消え刺さっていたナイフが地面に落ちる。
しとねが近づく泥人形の体が膨張し、縦に切れ目が入り大口を開くかの様に裂けしとねをバグンと喰らう。
しとね「精製、居合刀」
しとねがそう呟きカチンっと小気味好い音がなると同時、泥人形がバラバラと崩れながら消える。
刀を手にした状態で崩れる泥人形から出て来たしとねは、左足を下げ左手の刀自身の後ろに回し腰を落とし右手を刀の柄に乗せ、小さく息を吐く。
しとねが踏み出そうとした瞬間────
???「……封魔陣」
呟く声が聞こえると、しとねの背後から赤く光る針が飛び出し泥人形達に刺さる。
すると、まるで風船に針を立てたかの様に泥人形が1つ……また1つパンっと破裂して消えていく。
しとね「……誰」
しとねは右手を柄に触れたまま、針が飛んできた方へ振り返る。
???「……」
ガサッと音がし木々の間から誰かが出てくる────が、辺りの暗さも相まって相手の顔が見えない。
しとねは深呼吸をし、警戒を解き話しかける。
しとね「ええっと……?」
そうしとねが喋ると同時、雲に隠れていた月が辺りを照らし始め相手の姿がハッキリと分かる。
しとねと同い年に見える女の子は後ろの黒髪を赤いリボンで結んでおり、同じ学園の制服を着て、手に数枚のお札を持っていた。
???「白夢 玲(しらゆめ れい)よ」
しとね「あ、夕城 しとね……です」
急に名乗られ、呆気に取られながらもしとねは名乗り返す。
玲はしとねを眺めながら「夕城……夕城」と呟く。
玲「貴女が守央の言ってた子か」
しとね「守央を知ってるんですか?」
玲「ええ、数週間前から世話になっているもの」
そう言う玲は辺りを見渡しながら、しとねの前まで歩いて来る。
それなら私が幻想郷に招かれたのと同じ位か、としとねが考えていると。
玲「しとね、頼みがあるんだけど……」
しとね「はい、何でしょう?」
玲は少し頬を赤らめながら────
玲「奴らを追ってたら道が分からなくなった、案内……してくれない?」
しとね「はい……はい?」
予想外な言葉に、思わずしとねはキョトンとせざるを得なかった。

公園から続く山道の途中、家に帰る為歩く玲としとねは篝宮市のパンフレットに描かれている地図を見ながら。
しとね「ここは地元の人でも余り来ませんからね、外灯も少ないおかげで道中は暗いですし」
玲「守央はこれがあれば何とかなる、って言っていたのだけど」
玲の言葉にしとねは「……あの人にとっては庭みたいなものですし」と苦笑いしながら言い、暗い山道を歩きながら街へと向かう。
しとね「白夢さんは────」
と、しとねが言い掛けた所で玲に遮られる。
玲「苗字じゃなくても構わないわよ、しとね」
しとね「じゃあ……玲はクラスはどこなんです?」
玲「貴女と同じC組よ」
しとね「知ってたんですね」
玲「ええ、学校の案内をしてくれた雪が教えてくれたわ」
ああなるほど、としとねは頷く。
しとね「(もしかして、とは思ったんだけど……博麗霊夢さんじゃ無いのかな?)」
ジン「(こっちに聞くな、とは言っても入れ違いで巫女がこちらに来たという可能性もあるが……)」
しとね「(……幻想郷で使った模倣の能力もこっちじゃあ使えないみたいだし、本人かどうかこれじゃあ確認できないし)」
ジン「(直接聞けばいいだろう、名前を出して反応を探るとかな……)」
しとね「それで博麗霊夢さんかどうか判ったら苦労しないと思うんだけど」
玲「博麗……霊夢?」
しとねはジンと会話をしていたが思わず立ち止まって声に出して喋っていた。
玲はその『博麗霊夢』の名前を聞いて────
玲「もしかして、人探しの依頼でも受けているの?」
……とぼけているわけでもなく、玲はそう言った。
しとね「そうなんですよ、えっと……ここ暫く本島からの依頼でそっちに行ってて、そこで新たに人探しを頼まれたんですよ」
玲「……まあ個人情報の事もあるし、これ以上は聞かないわ」
苦笑いしながら言い訳をするしとねを見て、玲はそう言い歩き始める。
しとねは、玲の後ろ姿を眺めながら……
しとね「人違い……か」
そう呟き、少し先で振り返った玲の元へ急ぎ足で向かう。


―篝宮市―市街区―
玲「結構至る所に居るものね、この……妖怪?」
しとね「一応妖精の分類、みたいですよ?その殆どは無害な子達が多いですし、中には話が出来る子も居るくらいで……こちらから攻撃や危害を加えなければ、ね」
そう言いながら、しとねは近くのガードレールに乗っていた手の平サイズの毛玉を撫で始める。
玲「……外見だけで判断するのはダメね」
しとね「まあ、本当に無害かは分からないですから距離を置いておくのも間違いではないですよ」
しとねは毛玉を撫でるのを止め手を退ける、毛玉はその場でしとねを見上げていたが急に毛を逆立てるとガードレールの上を走り去っていく。
玲「何だ、様子が……?」
玲は辺りを見渡す、周囲に居た妖精達も慌ただしくその場を離れたり隠れたりしだす。
まるで、何かに怯える様に……そんな中、しとねだけは一点を見つめ続けていた。
建物との間、暗く先が見えない路地裏に繋がるその道を……