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六年生の子守唄の段(立花・善法寺・食満ver)

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「お~い、乱太郎―!しんべヱー!!」



忍術学園のとある長屋で、そんな声が響いた。


「まーた、どこ行ったんだ、あの二人…」


 その声の持ち主は、一年は組のきり丸。長屋の部屋を探すものの、親友二人の姿が見えず、探し回っているようだ。

「ん~弱ったなぁ。子供六人の子守プラス洗濯のアルバイトなんて俺一人じゃ無理だしなぁ~」

 乱太郎たちは諦めて、きり丸は長屋を出た。そろそろ学園を出る準備をしないとアルバイトに間に合わなくなる。

「…って、こんなこと、前もあったな。まさか…」

 そうつぶやき、きり丸は慌ててきょろきょろとあたりを見回す。
 周りには自分以外誰にもいないようで、ほっと息を吐いた。


「私が手伝ってやろうか!!」
「いっ!?」


 だが、どこか近くからそんな声が聞こえてきて、きり丸は思わず肩をはねさせた。

(まさか、また七松先輩…!?)

 どきどきしながらもう一度周りを見たが、…誰もいない。


「ん?」


 きり丸は首をひねった。いったいどこから声がしたのだろうか…


「お~い、ここだ!!ここ、ここ!!」

「え?あっ、まさか、善法寺伊作先輩!?」


 それを発見して、きり丸は駆け寄る。


「いや~、何故かわからないけど、こんな所に落とし穴があって…見事にはまってしまったよ」

「だ、大丈夫っスか!?」


 一人用の塹壕・蛸壺に、六年は組の善法寺伊作が埋まっている。
 きり丸は腕を引っ張って、何とか助け出した。






「…てゆ~わけなんスよ」

「ふ~ん。…じゃあ私が手伝ってやろうか」


 きり丸が善法寺に詳しく話すと、そんな答えが返ってきた。

「え?…善法寺先輩が…?(前にもあったよな、このパターン…)」
「いやねぇ、今日はすっかり暇してて。保健室には今日は新野先生がいてくれてるし、薬の調合も終わってるし」

 ニコリ、と笑顔を作って言う。
 しかし、それと反対に、きり丸はイヤ~な顔になるのを押さえ切れなかった。

「でもォ…、お気持ちはありがたいんですが、伊作先輩は、ちょっと…」
「なんだい、私は不運だから一緒に来てほしくないって?」
「い、いいえ、まだそんなこと言っていませんよ」
「…『まだ』って…」

 少し否定してほしかった善法寺が落ち込んだ。


「いよォ~し、それじゃあっ…!!」


 スクッと善法寺が急に立ち上がった。…かと思うと、どこかに向かって走り去る。


「??」


 きり丸はそんな善法寺の行動が理解できなかったが、それもすぐにわかった。

「いいから!一緒に来てよ」
「ったく…何だよ、伊作…」
「何なんだ?」

 向こうから、善法寺に引きずられてやってきたのは、六年い組の立花仙蔵と、善法寺と同じは組の食満留三郎。

「ほらっ、これでどうだい?」

 きり丸の前に来た善法寺は、満足げに言ってみせた。


「『どうだい』って…なんで立花先輩と食満先輩を…?」

「この二人が一緒だったら、不運だって逃げ出すさ!だから、一緒に行こうじゃないか」


 混乱するきり丸。

「…何の話だ?」
「伊作、ちゃんと話せ」

 それを放置して、六年の三人は話し出した。






「…私は、まあいいが」


 そう言ったのは、食満。

「悪いが私はお断りだ」

 即拒否したのは立花だ。
 だが、それに善法寺が食い下がった。

「なんでだい、仙蔵?」
「…私は子供は苦手だ」
「ええー。…いいじゃないか、克服するためと思って」

 善法寺は逃げ出そうとする立花の服を掴んで引き止める。

「先輩、無理しなくていいっスよ…」

 きり丸がそう口を挟もうとしたが…。


「ああ、そう言えば仙蔵。さっき、用具委員のしんべヱと喜三太が探してたぞ」

「な゛っ……!?」


 食満がそう言うと、立花が顔を真っ青にさせた。


「それは…まさか、福富しんべヱと山村喜三太のことか…!?」

「ああ。なんでも、『学園長先生にお使いを頼まれたから、一緒に行ってほしい』とか…」


 食満は「お前らいつの間にそんなに仲良しになったんだ?」と腕を組む。
 しかし、顔から色が抜け、口をパクパクさせる立花はそれどころじゃないらしい。

 きり丸と善法寺が目を合わせる。

 何だか、すごく嫌そうに見えるのは気のせいか…


「わかった。…きり丸。私も是非、アルバイトに行こう…いや、是非行かせてくれ…」


 ――…こうして、きり丸・善法寺・食満・立花の四人が、子守のアルバイトに向かうことになった。