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「……セイ。おい、アレクセイ」
ズボフスキーに声をかけられ、アレクセイは現実に引き戻された。
「あ、ああ、すまない」
「いや、いいさ。ミハイルはユスーポフ侯の事を調べてみると言っていた。
ミハイルが調べなくとも、諜報部で何か持っているだろう。おいおい見てみればいいさ」
ユリウスの事もあり、ユスーポフ侯の事はアレクセイも調べてみようとは
思っていた。しかし、一歩が踏み出せずそのままになっていた。
「これ程の書類だ、おれも手伝うよ。なぁ、もう何日も帰ってない。彼女も
寂しがってるぞ。今日はこのくらいにしておかないか」
 「……すまない、おれはもう少しこの書類に目を通したい」
 ズボフスキーが何を言いたいか分かっていた。アレクセイは知らぬ風を装うが、ズボフスキーは彼の扱いには慣れている。
 「そう邪険にするなよ。実はな、アナスタシアの救出作戦の少し前、ミハイルが、ウオッカを持ってうちに来たんだ。遅くなったが結婚祝いだ!って言ってな。どこで手に入れたのか『スミルノフ』だ。そいつを一緒に飲もうや」
重い表情のまま押し黙っているアレクセイだったが、ズボフスキーはかまわず続ける。
「ミハイルのやった事は確かに許されることじゃない。非難されて当然だ。
それは、やつも十分分かっていたんだろう。だからこんな結果になった。
党の上層部がなんと言ってくるか分からんが、せめておれたちは、共に闘った仲間として、弔ってやらないか」
このひげの同志の懐の深さに改めて感心する。
アレクセイだけではない。ズボフスキーにとってもミハイルの死は衝撃で、
簡単には消化出来ないものであるはずだ。
それでもしっかりと受け止め、前へ進もうとしている。
そのまっすぐな姿勢はガリーナに対する姿勢とまったく同じだ。
過去に辛い事があった彼女をあたたかく受け止め、しっかりと守り、
確かな家庭を作って未来へと進んでいる。
しかし、自分には到底そんな事は出来ない、とアレクセイは思っていた。
アカトゥィ監獄の悲劇は、彼の心の大部分を占めたままだ。
自分だけが生き残ってしまったという罪悪感は、ますます彼を革命という大事業へと駆り立てている。
それに加えて今回のミハイルの事だ。
ユリウスと自分の未来など、思いやる余裕はなかった。


おれはまだまだ若造だ。革命家としても、男としても。
そんなおれが、今あいつに何をしてやれるというんだ。
こんなもどかしい思いすら、持て余しているってぇのに。

アレクセイは天井を見上げ、大きく息を吐いた。
「……ああ。わかったよ。あの野郎の弔いだ」
「素直じゃないな」
「おれはいたって素直さ。いつもな」
二人はまだ残っている同志に声をかけ、事務所をあとにした。



作品名:その先へ・・・2 作家名:chibita