梅嶺小噺 1 の二
案の定、小殊は食い付いていた。
靖王と猪退治するつもりで、コソコソと用意をしていたのだ。
林府では出来なかった。父親の林燮に知れたら、大目玉をくらうので、密かに靖王府で狩りの準備をしていたのだ。
だが、流石、父林燮、息子林殊のそんな動きは、とっくに察知をしていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
二日ほど、靖王府に泊まり込みで作戦を考えたり、現場を見たり、弓や仕掛けを用意していた。
そして、ずっと赤焔軍の軍営で泊まり込んでいた林燮が、今日は帰って来るという。
そう、林府の従者が、靖王府に知らせに来た。
さすがに三日、林府に帰らぬのはマズかろう、と、靖王に次の日に猪退治をすると約束をして、一旦その日は、林府に帰る事にした。
夢中で、靖王と猪退治の算段をしていたので、薄暗くなっているのに気が付かず、急いで戻ったが、林府に着いた頃には、とっくに日は落ち、辺りは真っ暗になっていた。
林府の門まで来ると、誰かが屋敷から出てくるのが見えた。
出てきたのは蒙摯だった。
蒙摯もまた、林殊を可愛がってくれる義兄の一人だった。
「蒙哥哥、来てたんだ。」
蒙摯の側まで走って行く。
すると、蒙摯は驚くべき事を言う。
「おう、小殊。猪退治に行くそうじゃないか。」
「何で知ってるの!!!。」
靖王と二人だけの秘密なのに、一体どこから漏れたのか。
───まさか、、、景琰が、、、、父に言ったのか??。
父にバレたら、絶対に止められる、だから、誰にも漏らさず隠していたのに、、、。───
「林主帥は、小殊ならこんな話、逃がす筈はないと言ってたぞ。
わはははは、、、やっぱりそうか。」
「あ"あ"あ"〜〜〜、しまった!、、、。」
───蒙哥哥からやられた!。蒙哥哥を引っ掛けることはあっても、私は絶対に、引っ掛けられたりしない自信があったのに。───
林殊は自分の口を手で抑えて、しゃがみ込んだ。
「林主帥は、小殊に会ったら、知ってる口振りで言ってみろと教えたんだ。ホントに、自分から言うとはな。わはははは、、。」
蒙摯の機嫌は、一気に良くなったようだ。
「小殊、で、いつ行くんだ?、私も手伝ってやる。主帥がえらく心配していたぞ。」
───父上の差し金か。止めろって言っても、私は聞かないからな。だから、蒙哥哥を見張りにつける気か、、、。
面白くないなぁ、、見張られてるみたいだ。───
「えーと、、、明後日の昼頃から、、、。まだ、狩りの用意が出来てなくて、、、。」
「おぅ、そうか、明後日か!。私が付いて行くからには安心しろ、あっという間に仕留めてやるぞ。」
「うん、頼りにしてるね、蒙哥哥。」
「うん??、、そうか?、、、わはははは、、、。」
満更でもない様子で、蒙摯は上機嫌だ。
「それじゃ、明後日の昼だな。」
ばん!!。
「あ〜〜〜!!!、痛って〜〜。」
去り際に、蒙摯は林殊の肩を叩いて行った。
「蒙哥哥の馬鹿力がぁwww。」
「がははは〜〜〜。」
上機嫌で馬に跨り、去っていく蒙摯。
騙されたとも知らず、殊更、蒙摯は機嫌が良いようだった。
「、、、、ふふふ、、。ごめん、蒙哥哥。蒙哥哥が、一緒に行くのは楽しいんだけど、父上の差し金って言うのがなぁ、、、なんか、、、ヤなんだよなぁ、、。」
明日の為に、早く休もうと、林殊は屋敷に入る。
「ほんとにごめん、、蒙哥哥が来た頃には、きっと猪退治は終わってる。」
ごめんと口で言いつつ、林殊は全く罪悪は感じていなかった。
むしろ、父親の鼻を明かせると、痛快にさえ思っていたのだ。
一晩など、あっという間だった。
夜が開ける前から、林殊は飛び起きた。
「いよいよ今日だ。」
───景琰なんか、まだ寝てるんだろうなぁ、、。遊びに行く日はいっつも寝てるんだ。ダメだよなぁ、、。───
、、、いや、ただ林殊が、早過ぎるだけなのだが。
支度をして、心踊らせて、林府の玄関に向かう。
誰かに見つかったら、きっと林燮に話がいく。
それでは癪に障る。「誰にも知られずにもぬけの殻」が、林殊の理想だ。
特別こっそりと、、、屋敷の中を通らずに、厩舎に自分の馬を取りに行く。
馬も林殊の心が分かるのか、林殊を楽しみに待っていた様だ。
馬に鐙と鞍をかけ、林府の門へと向かう。
今日も天気が良くなりそうだった。
───きっと、気持ちのいい狩りになる。───
自分の思い描いた様に、きっと狩りが進む、林殊は自信が満々だった。
「小殊!!。」
意気揚々と、林府の門を出たところで、声を掛けられた。
「げえっ!!!、蒙哥哥!!。」
振り返ると、弓を背負った蒙摯が馬に乗っていた。
「わはははは、、、全くその通りだ!。」
なにがその通りなのか。
「小殊〜〜!。置いてく気だったな〜〜!。」
「えっ、、、あ、、いや、急に今日行くことに、、。」
苦しい言い訳だった。
───なんで分かったんだろう、、、、蒙哥哥、あの後、靖王府にでも寄って、聞いて行ったのかな、、。───
目を丸くして、事態が掴めずキョトンとしている林殊が、蒙摯には可愛らしくて仕方ない。
林殊に騙されて、怒って当然の蒙摯だったが、林殊のそんな様子に、怒り出さず、笑うばかりだった。
「主帥がな、小殊が何と教えようとも、明日の朝の夜明け前に、林府の前で待っていろと言ったんだ。言われた通りに待っていたら、お前が出てきたのさ。」
「、、、、、くぅ〜〜っ、、、。」
もう、悔しさしか無かった。
───全部、父に読まれていた、、、。───
「蒙哥哥を騙すつもりは無かったんだよ、、。父に監視されてるみたいで、嫌だったんだ。」
「分かるよ。小殊の年頃にはみんな、そんなもんだ。気にするな。私も猪狩りは楽しみで仕方がない。殿下や小殊と一緒ならば、尚の事だ。」
「うん、、、。」
答える林殊は、蒙摯と会う前とは違って元気がない。
蒙摯はこの年頃になった、林殊の気持ちは、大体分かる。
蒙摯もこの年頃の頃は、親が煩わしくて仕方がなかったのだ。
「中々なぁ、、、父親は超えられぬぞ。ましてや、主帥ならば尚更だ。」
「蒙哥哥は、武術の腕が凄いもん。もう、とっくに超えたよなぁ。大人だもん。」
「いやいや、それだけじゃ超えられぬ。私はまだまださ。」
そう言って笑っていた。
蒙摯がそう言っても、林殊の心は晴れぬようで、表情は曇っていた。
「なんだ?、まだ悔しいのか?。もう、気持ちを切り替えろ、な。」
「、、、あの、、、蒙哥哥、、。」
「なんだ?。」
「この事は、景琰には言わないで。、、ね?。」
「分かった分かった。」
林殊が気になるのはそんな事だった。
これで少しは林殊の気が晴れるだろう、と、満面の笑みで返事をかえす。
靖王に知られるのは、嫌なのだろう。
靖王はそうでも無いが、林殊は、何かに小さな事で、靖王と張り合っている時があるのだ。
二人は靖王府に行く。
珍しく、靖王は起きていて、出発する用意が整っていた。
荷物を分けて積み、目的の村に向かう。
山里の村に着いたのは、日が高くなった頃だった。
三人で猪が居るという、山に入っていった。
事前に被害の酷い村の人々からは、大猪の有様は聞いていた。
そして大体の縄張りも掴んでいたのだ。
夜中に村の畑の作物を食い荒らして、朝方、山に帰るという。
靖王と猪退治するつもりで、コソコソと用意をしていたのだ。
林府では出来なかった。父親の林燮に知れたら、大目玉をくらうので、密かに靖王府で狩りの準備をしていたのだ。
だが、流石、父林燮、息子林殊のそんな動きは、とっくに察知をしていた。
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二日ほど、靖王府に泊まり込みで作戦を考えたり、現場を見たり、弓や仕掛けを用意していた。
そして、ずっと赤焔軍の軍営で泊まり込んでいた林燮が、今日は帰って来るという。
そう、林府の従者が、靖王府に知らせに来た。
さすがに三日、林府に帰らぬのはマズかろう、と、靖王に次の日に猪退治をすると約束をして、一旦その日は、林府に帰る事にした。
夢中で、靖王と猪退治の算段をしていたので、薄暗くなっているのに気が付かず、急いで戻ったが、林府に着いた頃には、とっくに日は落ち、辺りは真っ暗になっていた。
林府の門まで来ると、誰かが屋敷から出てくるのが見えた。
出てきたのは蒙摯だった。
蒙摯もまた、林殊を可愛がってくれる義兄の一人だった。
「蒙哥哥、来てたんだ。」
蒙摯の側まで走って行く。
すると、蒙摯は驚くべき事を言う。
「おう、小殊。猪退治に行くそうじゃないか。」
「何で知ってるの!!!。」
靖王と二人だけの秘密なのに、一体どこから漏れたのか。
───まさか、、、景琰が、、、、父に言ったのか??。
父にバレたら、絶対に止められる、だから、誰にも漏らさず隠していたのに、、、。───
「林主帥は、小殊ならこんな話、逃がす筈はないと言ってたぞ。
わはははは、、、やっぱりそうか。」
「あ"あ"あ"〜〜〜、しまった!、、、。」
───蒙哥哥からやられた!。蒙哥哥を引っ掛けることはあっても、私は絶対に、引っ掛けられたりしない自信があったのに。───
林殊は自分の口を手で抑えて、しゃがみ込んだ。
「林主帥は、小殊に会ったら、知ってる口振りで言ってみろと教えたんだ。ホントに、自分から言うとはな。わはははは、、。」
蒙摯の機嫌は、一気に良くなったようだ。
「小殊、で、いつ行くんだ?、私も手伝ってやる。主帥がえらく心配していたぞ。」
───父上の差し金か。止めろって言っても、私は聞かないからな。だから、蒙哥哥を見張りにつける気か、、、。
面白くないなぁ、、見張られてるみたいだ。───
「えーと、、、明後日の昼頃から、、、。まだ、狩りの用意が出来てなくて、、、。」
「おぅ、そうか、明後日か!。私が付いて行くからには安心しろ、あっという間に仕留めてやるぞ。」
「うん、頼りにしてるね、蒙哥哥。」
「うん??、、そうか?、、、わはははは、、、。」
満更でもない様子で、蒙摯は上機嫌だ。
「それじゃ、明後日の昼だな。」
ばん!!。
「あ〜〜〜!!!、痛って〜〜。」
去り際に、蒙摯は林殊の肩を叩いて行った。
「蒙哥哥の馬鹿力がぁwww。」
「がははは〜〜〜。」
上機嫌で馬に跨り、去っていく蒙摯。
騙されたとも知らず、殊更、蒙摯は機嫌が良いようだった。
「、、、、ふふふ、、。ごめん、蒙哥哥。蒙哥哥が、一緒に行くのは楽しいんだけど、父上の差し金って言うのがなぁ、、、なんか、、、ヤなんだよなぁ、、。」
明日の為に、早く休もうと、林殊は屋敷に入る。
「ほんとにごめん、、蒙哥哥が来た頃には、きっと猪退治は終わってる。」
ごめんと口で言いつつ、林殊は全く罪悪は感じていなかった。
むしろ、父親の鼻を明かせると、痛快にさえ思っていたのだ。
一晩など、あっという間だった。
夜が開ける前から、林殊は飛び起きた。
「いよいよ今日だ。」
───景琰なんか、まだ寝てるんだろうなぁ、、。遊びに行く日はいっつも寝てるんだ。ダメだよなぁ、、。───
、、、いや、ただ林殊が、早過ぎるだけなのだが。
支度をして、心踊らせて、林府の玄関に向かう。
誰かに見つかったら、きっと林燮に話がいく。
それでは癪に障る。「誰にも知られずにもぬけの殻」が、林殊の理想だ。
特別こっそりと、、、屋敷の中を通らずに、厩舎に自分の馬を取りに行く。
馬も林殊の心が分かるのか、林殊を楽しみに待っていた様だ。
馬に鐙と鞍をかけ、林府の門へと向かう。
今日も天気が良くなりそうだった。
───きっと、気持ちのいい狩りになる。───
自分の思い描いた様に、きっと狩りが進む、林殊は自信が満々だった。
「小殊!!。」
意気揚々と、林府の門を出たところで、声を掛けられた。
「げえっ!!!、蒙哥哥!!。」
振り返ると、弓を背負った蒙摯が馬に乗っていた。
「わはははは、、、全くその通りだ!。」
なにがその通りなのか。
「小殊〜〜!。置いてく気だったな〜〜!。」
「えっ、、、あ、、いや、急に今日行くことに、、。」
苦しい言い訳だった。
───なんで分かったんだろう、、、、蒙哥哥、あの後、靖王府にでも寄って、聞いて行ったのかな、、。───
目を丸くして、事態が掴めずキョトンとしている林殊が、蒙摯には可愛らしくて仕方ない。
林殊に騙されて、怒って当然の蒙摯だったが、林殊のそんな様子に、怒り出さず、笑うばかりだった。
「主帥がな、小殊が何と教えようとも、明日の朝の夜明け前に、林府の前で待っていろと言ったんだ。言われた通りに待っていたら、お前が出てきたのさ。」
「、、、、、くぅ〜〜っ、、、。」
もう、悔しさしか無かった。
───全部、父に読まれていた、、、。───
「蒙哥哥を騙すつもりは無かったんだよ、、。父に監視されてるみたいで、嫌だったんだ。」
「分かるよ。小殊の年頃にはみんな、そんなもんだ。気にするな。私も猪狩りは楽しみで仕方がない。殿下や小殊と一緒ならば、尚の事だ。」
「うん、、、。」
答える林殊は、蒙摯と会う前とは違って元気がない。
蒙摯はこの年頃になった、林殊の気持ちは、大体分かる。
蒙摯もこの年頃の頃は、親が煩わしくて仕方がなかったのだ。
「中々なぁ、、、父親は超えられぬぞ。ましてや、主帥ならば尚更だ。」
「蒙哥哥は、武術の腕が凄いもん。もう、とっくに超えたよなぁ。大人だもん。」
「いやいや、それだけじゃ超えられぬ。私はまだまださ。」
そう言って笑っていた。
蒙摯がそう言っても、林殊の心は晴れぬようで、表情は曇っていた。
「なんだ?、まだ悔しいのか?。もう、気持ちを切り替えろ、な。」
「、、、あの、、、蒙哥哥、、。」
「なんだ?。」
「この事は、景琰には言わないで。、、ね?。」
「分かった分かった。」
林殊が気になるのはそんな事だった。
これで少しは林殊の気が晴れるだろう、と、満面の笑みで返事をかえす。
靖王に知られるのは、嫌なのだろう。
靖王はそうでも無いが、林殊は、何かに小さな事で、靖王と張り合っている時があるのだ。
二人は靖王府に行く。
珍しく、靖王は起きていて、出発する用意が整っていた。
荷物を分けて積み、目的の村に向かう。
山里の村に着いたのは、日が高くなった頃だった。
三人で猪が居るという、山に入っていった。
事前に被害の酷い村の人々からは、大猪の有様は聞いていた。
そして大体の縄張りも掴んでいたのだ。
夜中に村の畑の作物を食い荒らして、朝方、山に帰るという。