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オクトスクイド

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「ちょっと、邪魔よ。ここはあんたが使っていい場所じゃないわ。」

そう言って一人のタコゾネスが、射撃練習をしているタコゾネスの武器をなぎ払った。彼女の持っていたバケットスロッシャーがゴトッと落ちる。
愛用の武器を落とされて冷や水にいきなり撃たれたような顔をしたが、ごめんなさい。と感情を押し殺して謝った。
顔こそは笑顔だが圧迫感を感じているのか、気弱そうな唇を震えさせていた。
それもそのはずである。自分より上の隊の先輩ゾネス三人に囲まれていたからだった。
早くこの場を去りたいと荷物をかき集めていると先輩ゾネスの一人が言い放った。
「大体、私達が来た時点で気付きなさいよ。ほんと回り見ていないんだから。」
「うわっ、見てこれ、全然的に当たってない。あなたエイムないんじゃない?」
 と言って先輩ゾネスはあまり当てられていない的を指さした。それに対して彼女は一瞬ムッとしたが先輩なので抗える訳でもなく、
「まだまだ勉強中の身なので・・。」
と返すしかなかった。
「ねぇ、あなたどこの部隊なの?」
「だ、第三です…」

第3部隊。
エリート部隊と言われるタコゾネス隊の中には、4つの隊がある。まずは第4部隊。一般的に第4部隊は「赤」と呼ばれるタコゾネスのみが所属する隊でほかの隊と比較すると決して強い方ではない。強さは第4、第3、第2、そしてエリート中のエリートと言われる「黒」いわゆる、赤より戦闘に長けたデラタコゾネスが所属している精鋭部隊の順になっており、彼女は第3に所属していた。

……と言っても最近入ったばかりで、実力はまだまだ第4レベルである。

「は?第3なの?あなたが?」
「こんなのがいるなんて第3も落ちたわね。」
とわざとらしく鼻で笑われた。酷い言われようである。
しかも、先輩は痛い所を付いてくる。確かに自分が弱いのは分かるが、おっちょこちょいでドジな私でもそれなりに努力してきたから第3に上がれたし、なにも第3まで批判しなくても良いではないか…

めちゃくちゃに言われて泣きそうになる。

分かってる、弱い自分が悪い。そう言われるのも仕方ない。
 
だから自分が悪い。

「とりあえず、この訓練場はあなたには不似合いだわ。帰りなさい。」
「そうそう。あなたにはもったいないわ。」
と言って先輩ゾネスは私を突き落とした。地面に尻餅をついてしまい、手をついたところから血が出る。
痛みとともに、今までにはなかった怒りと反抗心がじわじわと込み上げてきた。
「どうしてそこまで言われなきゃいけないんですか?」
涙ながらに先輩を睨みつける。何も自分は間違ったことは言っていない。
「大体この場所は共有地じゃないですか。」
抑えていた感情があふれんとしていた。誰かにちょっとでも触られれば爆発しそうだった。
「私だって好きで弱いわけじゃないんです。」
「何?口だしするつもり?」
と一人の先輩が突っかかった。しかしそれをもう一人が止めた。
「あんた、面白いわね。名は?」
「・・・・第3部隊、アオイです。」
「そして私たちが誰か知ってるわよね?」
「・・・はい。」
知らないわけがない。彼女たちは「黒」候補として活躍が期待されている第2部隊の先輩だ。実際彼女らの脚(形而上タコのゲソは脚とする)は赤色だが、黒になりかけている。
「知ってるなら話が早いわ。そしてこの「黒」候補の私たちにたがが「赤」ごときが、たてつくなんてどういう意味か・・・・分かってるんでしょうね。」
「・・・・。」
そういって先輩は指をぽきぽきと鳴らした。
これから起きる事態に気付き、一歩身を引こうとしたが他の二人に押さえつけられてしまう。
「度胸だけは認めてあげるわ。全くなんで私がこんな奴を矯正してやらなきゃいけないのかしら。これだから嫌なのよ「赤」は。」
「・・・・。」
「ま、私から矯正させてもらえるなんて幸せに思いなさいよ。」
と言って肘を引き、拳を打ってきた。
 
殴られる。切れのある重い拳が来る。
怖くなって目を思いきり閉じた。

・・・・・・・・・・・。

・・・・・・?

(殴られてない・・?)
目を開けると同じ「赤」が先輩の拳を受け止めていた。
「誰よアンタ?」
先輩は不意をつかれたようでとても怪訝な顔をしていた。
それに対し、その「赤」は冷静だった。
「先輩たちがおっしゃるとおりのただの「赤」ですよ?」
「ふん。生意気なガキね。あなたたち、やっちゃいなさい!」
その声と同時に私を拘束していた二人の黒候補の先輩が一気にその「赤」に津波の様にとびかかった。

「あ…!」
やられちゃう!

しかし、助けてくれた赤は動かなかった。いや、避けよるつもりなど微塵もないのだ。
アオイは見た。二人が飛び掛かる刹那、「赤」は笑っていた。とても悲しそうに。一瞬のことだったがその笑いが頭から離れなかった。

気が付けば先輩三人は地面に倒れていた。
アオイがはっと我に返ると、助けてくれた「赤」は大丈夫か?と手を差し伸べてくれ、アオイは起き上がった。大丈夫です。と言うとそうか。といい踵を返し立ち去ろうとした。

「待ちなさいよ・・・!」
すると、アオイを殴ろうとした先輩がその「赤」を止める。
「・・・あんた、赤のくせにふざけるんじゃないわよ・・・!!だいたい・・うっ・・。」
と言って赤に殴られたであろう場所が相当痛むのか腹を痛そうに抑えている。
それを同情するような目で見つめ、さらりと言い返す。
「・・・・あたしは今日入隊したばかりなので赤とか黒とか言われてもよくわかんないんですけど。」
そこにいた全員が目を丸くした。

今日入隊?そんな人が、あの黒候補と言われる先輩たちを倒したの・・?

「あたし的には先輩方なんかより彼女のほうがよっぽど強く見えますけどね。」
と言ってアオイのほうをまっすぐな瞳で見つめた。
その赤は踵を返してその場から立ち去った。





「待ってください!」
「なんだよ。」
相手はこちらを見てきた。もともと目つきが悪いせいか、睨まれてるのかと錯覚して一瞬怖かったが、先程助けてくれたことに礼を述べなければいけないと思った。

「さっきはありがとうございました。私ったら弱いくせにあんな態度取っちゃったから・・・。」
「・・・気にするな。仕方ないだろ。」
仕方ない。という事は一部始終見られていたという事か。アオイは正直恥ずかしかったが恩人に礼を言わなければいけないので話を再開した。
「あの、名前はなんていうのですか?」
自分で、はっと気づいてしまった。今の自分の態度が、まるで初恋の相手に勇気を振り絞って話すような態度をしてしまったからだ。
「・・・カンナ。」
「カンナ・・・さん」
「ああ。で、用事はそれだけか?」
「あ、いや、待ってください。」
速攻帰ろうとしたカンナの手を、もう離さないという勢いでガシっと掴んだ。

「あたし、カンナさんについて行っていいですか?」
カンナは目を丸くした。どうやら、予想外の言葉だったらしい。
「・・・あたしについて行ったってろくなことないぞ。」
まるで昔自分が弟子を持っていたかのような装いで呆れ気味に答える。それをアオイは声を上げてかき消した。
作品名:オクトスクイド 作家名:Red lily