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オクトスクイド

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「そんなことないです!」
「あたしはトラブルしかおこさないけど?」
「いいえ。私、思ったんです。あなたといたら自分を変えられる気がして、ここで別れたら一生会えない気がして、なんか、そう言われてる気がするんです。」
「・・・勘ってことか?」
勘、確かにそうかもしれない。でも。
「そうです。勘もだけど、それよりはあなたと会えたのは勘じゃなくてこう・・なんか、その・・・運命なんじゃないかなって…」
「運命・・・。」
と言ってカンナは何か考えるように地面を見つめる。
「絶対足手まといにはなりません、だから私を連れて行ってください!」

この人となら自分を変えられる。弱い自分から脱却できる。彼女の様な人を守れる強い戦士になりたいと、心から決心できた。

「・・・変わってるなあんた。」
あんたみたいなやつは初めてだよ。でも、悪い気分じゃないな。いつもあたしに向けられる目線は敵対心ばかりだったからな。と自虐的に走りそれが虚しいのか、それとも今の状況がおかしいのか、カンナは笑っていた。 アオイは初めて見せた彼女笑顔を見て安心した。やっと彼女は私に心を開いてくれた。それがとても嬉しかった。

「私の部屋、ここから近いんです。よかったら遊・・・・。」
とアオイは友好関係を築こうとカンナを自宅に誘おうと言ったその時、カンナがアオイの言葉を遮った。

「駄目だ。」
「え?」
「今回の件も忘れてほしい。」
カンナは先ほどまで柔らかかった表情を元に戻し、強張った表情をしていた。
「どうして・・・ですか?」
「無理なの物は無理だ。」
「なんで・・・・。」
と、私じゃダメなんですか?と言おうとしたその時である。カンナの口から思いもよらない一言が放たれた。

「あたしとじゃ、あんたは釣り合えない。よく考えろ。力の差がありすぎる。」
「・・・え・・。」
「あんたがあたしと行動を共にすることであたしに何のメリットがあるんだ?」
「それは・・・。」
「あたしはどうしてもやりたいことがある、あんたに足を引っ張られるのはごめんだ。それほどあたしは暇じゃない。他の人にしてくれ。」
すれ違いざま、カンナはアオイにそう吐き捨てその場を去ろうと歩き出す。
アオイは雷に打たれたかのようにショックを受けた。
とどめの一言を言われ、さっきまでの感情が一気に冷めた。

そうか、この人も私の事をバカにするんだ。
私が弱いから、迷惑なんだ。
アオイはふふっ。と笑い脱力し、カンナに背を向けた。
「結局、強い人なんて皆一緒ですよね・・・。自分が才能を持ってるからって弱い人をバカにするんです・・。」
自分がずっとずっとそういわれてきたように。
皆私を虐げるんだ。結局、私に仲間なんていないんだ・・。
ぎゅっ・・・と拳を握りしめたアオイは振り向き、ゴーグル越しにカンナを睨みつける。
「あんた・・・・。」
とカンナがアオイに手を伸ばすが、それを高い音が出る強さでバチンと弾いた。
「茶化すくらいなら、消えてください。」
「・・・・・・・。」
「お願いだから早く私の前から消えて!!」
アオイの叫びは訓練所全体にまで響き渡った。カンナは頷き、走ってここから去った。
アオイは泣いた。自分がこんなに頑張っているのに報われない悔しさと、こんなことを言われてしまう自分の無力さに。雨のような涙を流しながら訓練場の扉に背中を預けた。鉄の冷たさが体の芯にまで響き渡る。

しかし、アオイは知らなかった。もう一人の赤もその扉の裏に壁一枚の距離で背中を合わせていたことを・・・。




翌日。
アオイは朝礼に参加する為に第3部隊専用の訓練室にいた。
暫く待っていると第三部隊の隊長、ヤナギ隊長が入室し朝礼が開始される。いつも通り今日やる訓練の内容や各隊員の点呼、体調面や連絡事項などを確認し朝礼を終わらせようとしたその時だった。ヤナギ隊長が合いの手を入れ、終わりの挨拶を止める。

「急で申し訳ないのだが、私達の隊に新人が入ることになった。皆、かわいがってやってくれ。」
さ、入っていいぞ。とヤナギ隊長が言うと扉が開かれた。

ガチャ。
入ってきたのは赤色のタコゾネス。キツイ眉。何事にも無関心そうな表情。決して良いとは言えない目つき。

アオイの予感は的中していた。新人はカンナだったのだ。カンナと目が合ってしまいアオイは目をそらす。
ヤナギ隊長の命で、カンナは自己紹介をした。
「今日からお世話になります。カンナです。まだまだ何も知らないから迷惑をかけるかもしれないけど、できる限り気を付けたいと思います。よろしくお願いします。」
と言ってカンナはしっかりとした一礼をする。
「・・・・だそうだ。皆仲良くしてやってくれ。で、カンナ。お前の所属なんだが・・・」
と言ってヤナギ隊長は隊全体を見まわした。
第3部隊に限らず各隊は5つの班から構成され、各班の人数は4人。班内で二人組を作り訓練を行うという事になっている。
アオイが所属していたのは5班で、言ってしまえば一番弱い班だった。

(でも3班が一人空いてるし入れられるとしたらそこだよね。だって新人なら第4部隊から入るのが普通なのにいきなり第3に入るから、彼女自身が優れてるのもヤナギ隊長は知ってるってことだよ・・・・ね?)

とアオイは都合のいいように考えていた。
ヤナギ隊長が3班!というと、アオイはほっとした。カンナが自分の班に入ることを避けたかったからだ。
「3~5班のリーダー来てくれ。」
というと3、4、5班のリーダーたちはヤナギ隊長のもとに集まる。こちらからは何を話しているかは聞こえないが何やらリーダーたちは嬉しそうだ。
ヤナギ隊長がもういい。というと各班のリーダーたちは持ち場に戻る。

「皆、聞いてくれ。3班が一人空いているので、4と5班のリーダーが繰り上がることになった。」

それは3班に4班のリーダー、4班に5班のリーダーが繰り上がるという事。それでは5班に空きが出るという事になる。しかもアオイのパートナーは4班に昇格する5班のリーダー。
アオイは血の気が引いていくのを感じた。
そんなことは全く知らないヤナギは、カンナの肩を力強く押した。
「今日からお前は5班だ。頑張れよ。」
カンナは何を考えてるのかわからないような顔で、はい。と言った。
「アオイ!」
「はい・・・・。」
「今日からカンナを面倒みてやってくれ。年も近いし、気が合うと思うから宜しく頼む。」

「承知しました。ヤナギ隊長。精一杯、頑張ります。」
アオイは昨日自分が言ったことを反芻した。
“あなたと私が出会えたのは、運命だった“と。
たとえそれが良い形でなくても。運命を受け入れようと思った。



初の訓練が終了した後、カンナは自室で明日に備えストレッチをしていた。
今日は7kmをできる限りのスピードで走る訓練だったので少し体に疲労が残っていた。
(明日は射撃訓練と筋力トレーニング・・・・。元々体力に自信があったとはいえ、慣れるまで時間がかかりそうだな。)
時計の針は10時半になっており、カンナ自身も睡魔に襲われようとしていた。
作品名:オクトスクイド 作家名:Red lily