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オクトスクイド(2)

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「本当か・・・。」
「そ、そうみたいだね・・。」
待て。そんなのありえない。いくらなんでも早すぎる。
アオイはカンナが持っている書類を確認した。そこには移動が命じられた人員の名が書かれておりカンナの名が確かにあった。
「あたし入って1年半しかたってないんだけど間違えてんじゃ・・。」
「いや、でもカンナの名前書いてあるよ!精鋭に移動って。」
信じられないので目をこすって再度確認してみれば、紛れもなく自分の名前だった。
「精進おめでとう。」
とアオイがお祝いの言葉をくれたが、いまいちピンと来ていない。
「・・・嬉しいのか嬉しくないのか。」
「いいじゃん!私なんかもう入隊して二年も過ぎてるのにまだ第3から上がれないんだからさ。多分カンナ強いから指名されたんだよ・・。」
と少し落ち込んだような感じの物言いでアオイは言う。
「でも・・。」
アオイがさみしそうな目で言った。
あたしも黙る。そうだよね。あたしもアオイと離れるのが嫌だ。お互い性格は反対だけど、控えめで馬鹿みたいに優しいアオイ。それに比べてあたしはどこか気性が荒くて反発的で言葉も目つきも悪い、いわば彼女みたいにいい子じゃない。でもお互い支えあってきたし心を許している。怖がられてきたあたしの唯一の理解者がアオイだった。そんなアオイと離れてしまうなんて考えられない。
あたしがさみしくなるな、と口を開こうとした瞬間
「でもよりによってあの悪名高い精鋭なんて!」
 あ、悪名・・・アオイに想定外の事を言われ、ガタっとこけそうになった。

てっきり寂しくなるね、とかいう部類の言葉が来るかなと期待した自分が少し恥ずかしくなってきたじゃん…

というか。
「悪名高いなんてご本人様たちに聞かれたらどうすんだよ・・・・。こればかりはフォローできないからな。」
「だってそうじゃん!精鋭部隊の皆様と言えば、冷酷無慈悲のサキ総隊長とお局様と恐れられているミア副隊長・・。戦いには2人とも精通してるけど、あそこに入って目でもつけられたらほんとに地獄見るって聞いちゃったからさ・・・。」
 ああ・・・とカンナは腕組をした。確かにアオイの言うとおりである。あそこに入隊してあまりの訓練の厳しさに逃げ出したり自殺を図る隊員も後を絶たないという噂もしょっちゅう聞いている。総隊長だけでも厳しいのに、マナーや礼儀全般にに厳しすぎる副隊長が余計それに拍車をかけているらしい。
「そういやヤナギ隊長も言ってたなあ…精鋭の隊長はゴリラだって…。」
ええ、ただでさえ強いヤナギ隊長がそんなこと言うなんてどれだけなの… と若干(結構)引き気味のアオイ。
実はヤナギ隊長は身長189㎝、ダイナモローラーは片手で振り回すバケ…猛者であり、彼女自身も黒(黒はヤナギとサキ総隊長しかいない)である。そのヤナギ隊長がゴリラというのだから精鋭のサキ総隊長はよっぽどらしい。
「ねぇ、カンナ。」
「・・・ん?」
「・・・嫌じゃない?」
「・・・ノーコメントで。」
 

それから3日が過ぎた。
 
今日はあんまり心地よく寝れなかった。気持ち的なものかもしれない。
もしかしたら、今いる当たり前の状況から友達から離れて1人でいかなければいけないと思うと少し怖いのかもしれない。
今日はこの第3部隊を旅立つとき(表現が大げさかもしれないけどそれくらいの覚悟がいった)
日なので、第3部隊の隊員に挨拶していこうと思っていた。

「おはよう~寝れた?」
「全然。」
「だよね・・・。」
「今日か・・・。」
「今日だね・・。」
あたしが半分虚ろな目をしてため息混じりで答えると、アオイも同じトーンで返してきた。
「てかさ、皆から変な目で見られるのが嫌だよなあ、なんでぽっと出のやつがすぐ昇格するんだって。」
「ああ、確かに皆どんなリアクション取るんだろう…」
「うーん…」
「多分それ考えてあんまり寝れなかったんだ?」
とアオイはカンナの顔を覗き込んだ。
カンナは言われたことが図星だったのか、うっ・・。と一歩後ろに引き下がった。
「ごめんって!うつむかないで。」
「いや、だって痛いとこ付かれたなって思ったから」
出さないようにしてたのに、分かるんだろうな。

だって、長い付き合いだから。
「でも、なんとか私がフォローするから」
「いいよ・・・恥ずかしいし、迷惑かけられないし。」
「そんな事言わないで。お世話になってるのはむしろこっちだしさ。」
「・・・。」
「力になりたいの、私もあの時助けてもらったし。」
誰だってそんなこと言われたら折れてしまうだろう・・・。
「ありがとう…。」
「うん!」
アオイは願いが叶ったかのように嬉しそうに答えた。


 
「今までありがとうございました。1年しか居なかったけど、楽しかったです。」
 訓練最終日。解散前に改めて別れの挨拶をした。あたしは入隊時と同じように頭を下げた。
「辛かったことも苦しかったことも第3のみんなが居たから乗り越えていけました。あたしは精鋭の方に行っちゃうけどまた見かけたら声掛けてくれると嬉しいです。」
案の定、隊員全体の視線が注目する。
「ねぇ、あなた入って1年よね?」
第一声を放ったのは先輩だった。怪訝な顔をしていた。すかさずアオイが割って入る。
「そうなんですよ~それですぐ精鋭なんて凄いですよね!私なんかと大違いですよ…」
「そうじゃなくて。」
もう一人の先輩が止めた。
「なぜ若いあなたが私たちを差し置いて精鋭なの?」
やっぱりきた。そう言われると充分覚悟はしてたが、いざ言われるとなると身構えてしまう。
「そうよ。なぜあんたなの?」
他の先輩も歩みよってくる。
 
ああ。完全に囲まれた…
「普通あたし達が精鋭じゃない?」
ごもっともです。と心の中で返す。
「私達の方が先輩だし」 
返す言葉もありません。
「普通逆よね?」
上に言って下さいよ!
完全に孤立無援になってしまったカンナは逃げ出したかった。

すると一人の先輩がカンナに手を出してきた。ここは殴られようと歯を食いしばった。

ポン。

「えっ?」
先輩はカンナの頭を撫でた。思いもよらない行動に戸惑う。
「大丈夫?無理やり従わせられたんでしょ?若いから先輩に尽くせって。」
… ?
「だって精鋭はあの鬼教官よ?」
…??
「副隊長は死ぬまでこき使わせる副隊長だし。」
…?????? 
「可哀想な後輩だわ。入隊したばっかりなのに精鋭に入れって無理矢理命令されたのよね。 よしよし。」
 先輩はそう言ってあたしを抱いてきた。優しく撫でられてどうすればいいのかと困惑した。
身動きできないあたしはヘルプを求めアオイを見たが、アオイは手を口に添えて和やかに笑っていた。

「いや別あたし上に従えとか無理矢理命令されてもないっすよ…?」
「ああー!そう言わされてるのね!いい?キツくなったらいつでも帰ってきてね!」
普通ならなぜ自分が上に行くのか、若すぎるのではないかなどのヤジが飛ぶはずだが全くそういうのはなく、皆心から祝福してくれた。さすがはあの優しいヤナギ隊長の率いる隊だった。

「あたし、第3の事絶対に忘れません・・!」
別れの挨拶が終わった頃、カンナは泣いていた。隊員皆の優しさに。皆と離れなければいけない悲しさに。




作品名:オクトスクイド(2) 作家名:Red lily