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オクトスクイド(2)

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「行っちゃうのね、カンナ」
「ああ。」
「寂しくなるね…」
「あたしもだ。」
「…。」
「最後に1個だけいいか。」
「うん。」
昨日、アオイがあたしを庇ってくれた。嬉しかった。でも。
「自分がまだまだなんてもう言うなよ。アオイはアオイで、いい所があるんだから。比べるもんじゃないよ。」
「カンナ…」
「でも、庇ってくれてありがとう。・・・うれしかったよ。」
「うん。」
アオイは泣いていた。彼女なりに泣くのを我慢していたみたいだった。
「もう!泣くなよ、しっかりしろよ。会えないって訳じゃないんだから。」
あたしはアオイを抱いた。
泣くなよって言ったけどアオイが泣いているのをみて、あたしもつられて泣いてしまっていた。

また、逢おうな。






早朝。カンナはいつもより少し早く起き、グラウンドのベンチに座っていた。いつもならこの時間は寝ている時間だが今日は頭が冴えており全く寝れなかったので、後日移動先となる精鋭部隊の訓練を見ていたのだ。

ここに入るのか・・・あたしが・・・。
内心不安だった。
精鋭の先輩たちはほかの部隊に比べ気迫と表情が違っていた。体つきも引き締まっており、本当に最前線で・・・・というよりはどうしようもない緊急時に活躍しそうという感じだ。一人一人とても真剣な表情でグラウンドを走っている。

ついていけるかなぁ・・・・・。
と考えていると後ろから懐かしい声が聞こえた。

「カンナじゃないか!」
「ヤナギ隊長!?」
と言ってあたしは立ち上がり一礼をする。ヤナギ隊長はカンナが元所属していた第3の隊長だ。昨日まで研究所のほうに出張に行っており精鋭のほうに移動するという事はまだ伝えていなかったのである。
「精鋭に移動だってな。聞いたぞ。」
「はい。連絡が遅くなってしまい申し訳ないです。」
「大丈夫だ。気にするな。仕方ない・・・しかしほんとに実感が湧かないな・・一年前こんなに可愛かった後輩が精鋭なんて。」
と言ってヤナギは今もかわいいがな!と言って笑った。
「正直あたしも実感ないですよ。今現にこうしてヤナギ隊長と話してるし。」
そして可愛くないです。と付け加える。なんでだよ。とヤナギはカンナを小突いた。

「ふふっ・・・・でもお前は精鋭なんだから気を引き締めて行けよ・精鋭はほんとに厳しいからな。」
「ヤナギ隊長でも厳しいと思うんですか、精鋭って。」
思わず失礼な質問をした気もするが、隊長も戦いに関しては精通しているし身長も約2m。ダイナモを片手で振り回す豪傑だし、普段こそは優しいがいざ実践となると性格が豹変するほどのいわば戦い慣れしている凄腕の戦士である。そのヤナギが厳しいというのだ。

「そうだな。精鋭が厳しいというか精鋭の隊長が鬼だからそうなるんだよ。」
と言ってヤナギは立ち上がり諦めたように首を傾げた。
「私は・・・・サキ総隊長の足元にも及ばないからな。」
と背伸びをしてまた座る。今度はカンナと足がすれすれになる位まで近くに座り、精鋭のほうを指さす。
「噂をすればなんちゃらってやつだな。見ろ。・・・精鋭部隊隊長、サキ総隊長のお出ましだぞ。カンナ。」
最初は良く見えなかったが。一人の黒がグラウンドに入るとその他の隊員が自主練を止め、
その黒に向かって敬礼していた。

あの人が総隊長・・・?
・・・・・・・。
なんか・・・・・。
「もっとゴリラと思ってた・・・。」


ヤナギが飲んでいた水を思いきり吹き出す。
「カカ、カ、カンナ?」
「いやだってヤナギ隊長より強い人だからずっとゴリラってイメージしてたんすよ・・。」
「そそうか・・・。」
(まぁ今のは面白かったから黙っといててやろう・・・。)

「しかし・・・。めっちゃ走らせますよね。」
「今日は確か・・・。あっそうだ。三時間持久走とほふく前進100周がメニューにあったぞ。」
「ええ・・三時間持久走ならまだしもほふく前進100周って・・。」
「しかも休憩少なめだから余計鬼だな。」
確かにヤナギの言うとおりだ。先ほど三時間持久走が終わったばかりなのに30分の休憩も入れずほふく前進の訓練に入っている。隊員達にも疲れの色が出ており脱落者が出るのも時間の問題だ。

ここからが総隊長の本領発揮かな。とヤナギ。

ほふく前進の三分の一が終わった頃、一人の隊員が涙を流しながらほふく前進をしていた。彼女は体力が限界に来ていたのか表情を苦痛にゆがめ、すでに過呼吸になっており今にも倒れそうだ。見ているこちらが心を痛めてしまうくらい衰弱しきっていた。
それを冷静な目で(悪くいってしまえば他人事の様に)見ていたサキ総隊長はさすがに彼女の身を案じたのか、彼女の元に歩み寄り膝をついて語りかける。
「・・・・泣イテルノ?」
何とも無機質な、機械のような口調でその言葉が放たれた。
しかし問いかけられた隊員は過呼吸が激しく、返答することが出来ない。
「・・・・・泣ク余裕ガアルナラマダマダ大丈夫ネ。」
と言って何も見なかったかのように持ち場に戻る。場の空気が固まった。
明らかに隊員のほとんどから不満の目線が集中するがそれにものともせず、泣いたから何?と吐くようにつぶやく。
「イイ?泣イタッテ戦場ジャ通ジナイノヨ。」
あまりにも無慈悲な対応に隊員は皆唖然としていた。それに喝を入れるかのように、
「泣ク暇ガアッタラ身体ヲ動カシナサイ!!」
とグラウンドの端から端まで響きそうな声を上げたかと思うと今度は後ろを振り返えった。
「其処!!頭ヲ上ゲスギヨ!!撃タレテ死二タイノ!?」
と総隊長からは明らかに見えない位置で訓練していた隊員に向かって注意を入れた。

それを見ていたヤナギは、うわ・・・目が背中にもあるのかよあいつは・・・と内心引いているように言った。これにはカンナも驚きを隠せないようで、両腕を組み右手の指を口に当て思いつめるような動作をしていた。
ヤナギは滅多に見せないカンナの動作を見て少しからかいたくなった。
「怖気づいたか?」

と不敵な笑みを含ませながら聞くとカンナははっとなり腕組を止めた。
「怖気づかないって言ったら嘘になりますね…。」
「・・・だよな。」
「・・・一つ気になったんですけど。」
「ん?」
「精鋭の先輩たちって2年前の“あの件”以前からいるわけですよね。」
「そうだな。皆少なくとも入って6年とか8年くらいじゃないか?」
「じゃあなんであたしみたいな新米がすぐ精鋭入りになったんですかね?」
まだあたし15だし。入って一年ですよ。とカンナ。

 カンナやヤナギの様に人型に生まれたオクタリアンは生まれつき他のオクタリアンよりも身体能力や知能とともに高く、対イカ兵士として活躍が期待されている。人型に生まれるのは極稀なことでありしかも女しか生まれない。彼女らは14から人型になるが、研究者や地位の高い人型などの一部を除き(それらも希望すれば入隊ができる、噂には高い地位を持っていながらも自ら最前線に行くことを希望した人型もいるとか)
作品名:オクトスクイド(2) 作家名:Red lily