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オクトスクイド(3)

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驚かせさせちゃったかしら?とサキ総隊長は言う。
「精鋭デハ隠シ事ハ無シッテルールナノ。」
「・・・・・・そうですか。」
「無イトハ思ウケド嘘ヤ隠シ事ハシテハイケナイワヨ。」
「・・・肝に銘じます。」
「コンナ事ハ言イタクハナイケレド、隊員ノ中ニイカ共ニ味方スルタコモイルラシイワ。許セナイワヨネ。アイツラガ私達ニドレダケ非人道的な事ヲシタカ解ッテナインダワ。」
肘を付き、顔の前で手を組むサキは冷静を装っているが、ひしひしとイカに対する憎しみが伝わってくる。カンナは思い出した。ヤナギが言っていたあの言葉を。

“サキは幼いころ、親をイカに殺されてああなった”
・・・・まさか・・・ばれたのか・・?
だとしたらまずい。サキ総隊長にばれてしまっては全オクタリアンに広まるも同然。追放ならまだましだが下手すれば殺される。ここには研究所もあるので実験対象にもされかねない。それだけは避けなければ。ここまでヤナギ先輩が庇ってくれたのにそれを崩すわけにはいかない。
冷静になれ、と自分に言い聞かせようとするが無理だった。
本来ならば精神だけでも平常心を保っていなければならないが無残にも体は正直で心音が自分の頭をガンガンと撃つくらいにまで上がっていた。
「・・・今の事は十分に心得ておきます。」
ここは慎重になろうと早く話題を終わらせようと思った。
「ソウ・・・。ナラ下ガッテイイワ。」
早くこの場を去りたいとカンナがドアノブに手をかけた瞬間、冷静だったサキ総隊長がカンナ!と大きな声を上げた。カンナはとてつもなく嫌な予感を感じとった。恐る恐る振りむくとサキ総隊長が自らのゴーグルに手を当て、その手を上に払う動作をした。

「・・・・一ツダケ言イ忘レテイタワ。素顔ヲ確認シタイカラ、ゴーグルヲ外シテ。」
一番カンナの恐れていた言葉がサキの口から放たれた。
行動を起こさないカンナにサキは外せないの?と冷たい視線を送る。
それは、と言いかけるカンナの言葉をミアが遮った。
「あら?カンナちゃんったらさっきわたくしが淹れたお茶、全部飲んだのね」
「え、はい。おいしかったのでつい・・・。」

なんでこんな時にそんなこと聞くんだ?
と思っているとミアはカンナが飲んだカップを見て、あら?という風に首をかしげる。
「ごめんなさいね、わたくしったらあなたのお茶に間違ってイカのインクをいれていたみたい・・。」
「なっ・・・・!」
イカのインク。これはタコにとって有害なものであり、体についただけでも足を取られたり動きが鈍くなってしまう。無論飲んだなどは論外で、口に入れたとたん激しい痛みを伴う。過剰に摂取すれば死に至る恐れのあるいわゆるオクタリアンにとっての“毒薬”だ。

ミアは何も体に異常はないみたいね。といいカンナの肩にドカッと腕を乗せ耳元でこうつぶやいた。
「・・・・飲んでも痛みすら感じないのね。まさかあなたオクタリアンじゃないのかしら?」
ミアの完璧なとどめの言葉にカンナは一瞬身震いをしたがすぐに先程の冷静な態度に戻った。

(目線の泳ぎがなくなり呼吸のリズムが平常時に戻った・・・。あの反応ってことは嘘をつくのを止めてふっきったという具合かしら?)
ここからどう動くかがポイントですわね。
もしこれで隠し事がばれたからって暴れて、サキ総隊長に手を出すようなことがあればわたくしが黙ってませんわよ。
その考えとは裏腹にカンナは長い溜息を放った。

「・・・あたしの身の上に気付いてて、あたしを試すような真似したんですね。お二人とも。」

カンナは、サキのほうに振り向き歩み寄った。ミアはもしもの事態に備えて構える。
カンナはサキの仕事用の机に置かれている刃物を取り上げた。
させない!とミアは刃物を取り上げる為身を乗り出した。
喉元に刃先を突き刺した。温かい鮮血が流れ、机にぽたぽたと血痕が付いていく。
「・・・・・・・!」
サキはゴーグルの中で、いつも冷静な目を開かせた。ミアも身を乗り出すのを止める。

カンナは自分自身の喉元に刃物を突き付けていたのだ。
驚き隠せない二人をものともせずカンナは言い放った。
「・・・サキ総隊長。ミア副隊長。あたしはいつかこうなることはわかってたんで、それなりの覚悟ならできてます。」
「ヤッパリアナタ・・・。」
「はい。欠けている前脚、そしてこの目・・。」
カンナは憎しみのこもった顔で決して外されないゴーグルを外す。ゴーグルは地面にゴトッとたたきつけられる。
露になったのはオクタリアンにはない、黄金の瞳。それは紛れもなくイカのもの。

「オクトスクイド・・・・」
オクトスクイド。半タコ半イカという禁忌の組み合わせで生まれた種の事である。

「・・・・イカはタコにとって地下生活を強いた張本人です。タコにとって憎いのは当たり前ですよ。今ここで死ねって言われたら死にますし、実験体になれって言うならすぐにでもなります。」

カンナは刃物を握る力をさらに強めた。

「あたしはイカの血が憎い。だからここに来た。ここでオクタリアンとして死ねれば本望です。」
その言葉には憎しみと覚悟の重さが込められていた。
自分はどうしてオクトスクイドで生まれてきたのだろう。自分が何をしたんだろう。
自分の運命を呪っても呪いきれず、ただひたすらに自分がそれであることを隠しながら生きていくという事しかできなかった。親からも暴力が振るわれ、世間からは罵声と石が投げられ、自分には味方も、生きる気力もなかった。

でも、それらから助けてくれたのはアオイであり、ヤナギであり、第3の皆だった、あの人たちが生きる幸せというものを教えてくれた。それだけで充分だった。その幸福に気付けたならここで死んでもかまわない。オクタリアンとして、自分として。
「・・・・一つだけお聞きしたいことがあります。サキ総隊長はあたしが何に視えますか?」

自分が長年悩んできたことの一つだった。自分はタコか。イカか。もしくは別のものか。
自分は何であるべきなのか。
サキ総隊長はカンナの気迫に気おされていたが、はっと我に返り刃物を下ろすように指示した。
「・・・貴女ハ、タコノ姿ヲシタイカヨ。イカニ視エルワ。」

「デモ。アナタハ、アナタヨ。」





「ハァ。ヤット金曜日ネ。」
「お茶どうぞ。一週間お疲れ様です。」
「アリガトウ。今日ハ貴女ノ淹レル御茶ガ美味シク感ジルワ。」
「何言ってますの~いつも私の淹れるお茶はおいしいですわよ?」
「フフ・・。ソウネ。」
和やかな雑談をした後、ミアがティーカップを両手に握りながら言う。
「しかしとんでもない大物が入りましたわね。」 
本当よ。とサキ。
「入ッタバカリノ後輩ニ意地悪シナイノ!!!って、わたくしにおっしゃいましたけど先輩もなかなか意地悪じゃないですの?カンナちゃんがオクトスクイドって気づいててわざと知らないふりなさってたし、脅すような言動はするし。しかも先輩はイカの血が入ってようがなかろうが別に気にしないのにいかにもそれが嫌なように演技してたでしょう?」
「・・・・彼女ノ本心ガ知リタカッタノ。ダカラアレハ演技トイウカ半分本気ダッタワ。彼女ヲ試ソウト思ッテアクションシタケド、最後ハ私ノ方ガ試サレチャッタシ。」
作品名:オクトスクイド(3) 作家名:Red lily